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第38話「ダイイングメッセージ」

「勇者に殺されたって……

それは本当なのか?」


「そうやで、ウチこの目で見たもん……」


 自身の父親を殺した犯人は勇者。

 そう主張するスウォンに、皆は疑いの眼差しを向けている。


 それもそのはず、勇者ルクスは魔王を倒した英雄。

 世界から魔族(モンスター)はいなくなり平和をもたらした救世主だ。


 でも、マオならスウォンの言うことを信じることができる。


 マオの父親であるソイルを石化させ殺害したのも、シーカの父親ロルド殺害の犯人も勇者ルクス。

 ロルド殺害に関しては、ノルディの異名を受け継いだ際に流れ込んだ記憶でその真実を知った。


 まだ、シーカにはこのことを言えていない。 

 マオには言える勇気がまだないのだ。


「勇者って世界を救った英雄ですよね!

なんで、そんなことを……」


「私も殺害の動機が気がかりなのだ……」


 困惑するシーカとスカバ。


 今、真実を話しても余計ややこしくなる。


 重苦しい空気。

 息が吸いずらい。


 誰かこの空気を変えてくれと言わんばかりに辺りを見渡すマオ。


 適任がいるじゃないか。

 あの、イケメン好青年の"ミーシャ"。


 この話に一番縁がないだろう。

 空気を変えるのはお前しかいない。


「ど、どうしたんですか……?」


 ミーシャがマオに問いかける。


 どうやら、表情にまで出てしまっていたようだ。


「い、いやなんでもない!」


 少し恥ずかしい。


 マオは顔を赤面させながら、この空気を変えてくれる救世主を探す。


「とりあえず、この部屋の謎を解こうぜ?」


 近くにいたじゃないか。

 いい意味で空気が読めないやつ。


 マオはカフラ目掛けてグッジョブを出す。

 カフラも釣られるようにグッジョブを返す。


 これが、相棒ってやつか。


「そうだな……カフラくんの言う通り、勇者のことは後で詳しく聞こう!

とりあえず、この名探偵シーカがズバリ部屋の謎を解いてみせよう!」


「おぉ、任せたで!名探偵!」


 カフラのおかげで話は、この部屋の謎にシフトチェンジした。


 もう一度、状況を把握しよう。

 この部屋には左右、正面に計3つの扉がある。


 左の扉には太陽のマーク。

 右の扉には月のマーク。

 そして、正面には鍵穴のマークが描かれている。


 シーカはパイプでシャボン玉を吹かしながら、舐めるように部屋を見渡す。


「うわぁぁぁぁ!」


 突然の悲鳴、声の正体はスカバだ。


 スカバの方向に目をやる。

 太陽の扉がある壁の隅で、尻餅をついていた。


「おい!どうしたんだ?」


「こ、これ……これって……」


 スカバは震える指で地面を指す。


 そこには、白い球体のモノ。


 近づいて見てみると、大きな丸が二つ空いている。


「骸骨……形から人間のだな」


「が、ガイコツ!?」


「そ、そうですよね!!?」


 白い球体のモノは骸骨。

 しかも、人間のモノであるらしい。


 シーカがいうのなら間違いないのだろう。


「な、なんで?ここに?」


「おそらく、謎解きに失敗した人のかもしれん」


「ひぇぇぇ!」


「なんや?そんな驚いて。

ダンジョンに骨の一つや二つあるやろ?」


 至って冷静な小娘だ。

 この度胸がギルド長たらしめる所以なのか。


「ヒントも問題もなんもないんや。

どっちかが正解でどっちが不正解なんやろ?」


「運次第ってことか?

それだったら俺得意だぜ?」


「ちょ、ちょっと、スウォン様!カフラさん!シーカさんの推理を待ちましょうよ!」


 2人を止めるスカバ。


 自由人が2人もいると大変だ。


 シーカは構わず、骸骨を眺めている。


「シーカ、何か分かる?」


「もし、この骸骨がこの謎解きに失敗した先人のモノだとすると、

なにかヒントがあるのかもしれん」


 シーカはパンパンに膨らんだバッグから、虫眼鏡を取り出す。


「ちょ、ちょっと!お2人さん!」


「ウチは太陽が好きやから、左の扉やと思う!」


「いや、俺は右側だと思うぞ?月の方がなんかしっくりくる!」


 後ろが騒がしい。

 どっちの扉かで揉めているのだろう。


「いや!太陽や!!」


「いや、月だ!」


「太陽!太陽!太陽ぅー!!」


「いーや、月だ!」


「ちょ、ちょっと2人とも落ち着いて」


「そこまで言うんなら開けてみよや!」


「あぁ、いいぜ!どっちの運が良いか勝負だ!」


「ちょっと、ダメですよ!

ちょっと、待って……あ!」


 扉の開く音、まさか開けたのか?


 マオは咄嗟に振り返る。

 視界には、今まさに扉を開けたカフラとスウォン。


「太陽はダメなのだ!!!

正解は月なのだ!!」


 シーカの雄叫び。


 どうやら、謎が解けたようだ。


 しかし、もう遅い。

 2人は扉を開けて入り込もうとしている。


 シーカの推理が当たっていれば、太陽の扉を選んだスウォンは死ぬ。


———カチッ……ボォォウ!!


 左から聞こえるスイッチ音と点火音。


 左半身が熱い。

 部屋が燃えているのか。

 

 音と同時に動く黒い影。

 その影は一瞬で扉を開けて、中にいたスウォンを連れ戻す。

 

 影の正体はミーシャ。

 スウォンに覆い被さるように、扉から飛び出したのだ。


「な、なんやこれ!」


 どうやら、シーカの言う通り太陽の扉は不正解。

 選んだ者には逃げ場のない、業火が襲うのだろう。


「大丈夫ですか!?」


 スウォンの無事を確認するべく集まる。


 咄嗟の行動でスウォンを守ったミーシャ。

 救出できたことはなによりだが、その判断力とスピードに驚く。


 "ミーシャ・クリバヴィ"一体何者なんだ……

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