第37話「太陽と月」
「もう、ずっと歩き続けているよ……
こんなところに本当に伝説の鉱石なんてあるの?」
「ある!絶対にある!!」
「スウォン様も本当にいるか分からないですよね……」
「"スウォン・ロウィスク"なら必ずいる!
私の推理は外れないのだ!」
カフラとシーカを先頭に、気だるそうに歩くマオとスカバ。
明らかな温度差を感じる。
これだと、ドラゴンすら本当にいるのかと不安になる。
「な、なんだあれ?」
「扉なのだ!!」
前方が盛り上がっている。
そういうのは、伝説の鉱物かギルド長を見つけてからにしてくれ。
躊躇もなく、扉を開けるシーカ。
そこには、2つの人影。
「スウォン様!!」
スカバは驚いたように目を見開いている。
この人が探していた"イーグルシールド"
のギルド長、スウォン。
髪はくるんと癖が強く、真っ赤な毛色。
白に赤い刺繍が施されたワンピースを見に纏った10代ほどの少女。
胸元には金の装飾に大きな緑の宝石がついたネックレスを身につけている。
本当にこの子がギルド長なのか?
両翼騎士団を従えているのだ、もっと強そうな人を予想していたが。
「おぉ、あんたは確かドラテフカ商店のスカバやっけ?
こんなところでなにしとるんや?」
「スウォン様を探していたんですよ!!」
「なんでウチを?」
「スウォン様が行方不明になったって今、街中大騒ぎしていたんですよ!
両翼騎士団が街を離れられないから、代わりにこの方達とあなたを探しに来たんです!」
「ほんまか!?
ちゃんとドラゴンと話付けに行くって言ってきたんやけどな?」
どうやら、適当なギルド長のようだ。
性格は見た目通り自由奔放な年頃の少女。
肩書きであるギルド長がどうにも引っかかる。
「あなたが、"イーグルシールド"のギルド長"スウォン・ロウィスク"で間違いないのか?」
「あぁ、いかにもウチが"イーグルシールド"のギルド長"スウォン・ロウィスク"やけど?
あんたら、知らん顔やな」
「私は名探偵"シーカ・ホームズ"!
あなたが行方不明になったと聞いて証言を頼りにここまで来たが……」
「こんな奴が、ギルド長なのか?
なんか、ちっちゃくねぇーか」
「なんや、でかいのギルド長に身長は関係あらへんやろ?」
「そうだぞ、カフラくん!
ギルド長は小さい者や大きい者、強い者や弱い者それぞれいるのだ!」
「そうか、デカくて強いのがギルド長だと思ってたぜ!」
「それはそうと、隣の人は誰ですか?」
スウォンの隣には、ウールのようにフワフワのネイビーの帽子を被った男。
肌は白く透き通っており、髪はひまわりのような黄色。
片手だけ黒い手袋をはめている。
首に巻いた黄色のスカーフが印象的だ。
「私は、"ミーシャ・クリバヴィ"。
よろしくね」
淡々と語る青年。
声色はどこか柔らかく爽やかな好青年といった感じか。
よく見ると顔も整っており美青年の雰囲気が漂っている。
イケメンだ。
「ここに入る途中で会うてな、なんかこのダンジョンに用があるらしいからちょうどええわ思って」
どうやら、スウォンも詳しい素性は知らないようだ。
まぁ、悪いやつではなさそうだ。
イケメンだし。
「そうなんですね。
ミーシャさんよろしくお願いします!」
「うん、よろしくね」
突如、ズボンが揺れる。
正体はシーカ。
なにか、伝えたいように口に手をかざしている。
マオは腰を下ろし、シーカに耳を傾ける。
「……あのミーシャとかいう男、警戒しておいた方がいいぞ」
「……な、なんで?」
「……スウォンは街のオンボロ商店である、スカバのことを把握していた。
ズバリ、あの"ミーシャ・クリバヴィ"は"ワルシャワ"の者ではない。」
「……で、でも、そんなの俺たちだってそうじゃん」
「……この洞窟に来る目的は、ドラゴン討伐か伝説の鉱石。
ドラゴン討伐は"イーグルシールド"以外にメリットはない」
「……つまり、伝説の鉱石狙い……」
「……確証はないがな、念のために警戒しておいた方がいい」
「何コソコソしてんねん、あんたら」
スウォンが密会に割り込む。
「い、いやぁ!なんでもないよ!」
「ちょ、ちょっと推理をだな……」
「なんや推理か……て、今する場面ちゃうやろ!」
異世界で聞く初めてのノリツッコミ。
異世界にも関西文化があるのか?
「マオとシーカは推理ってやつが好きなんだ!」
「ふーん、あんたらおもろいやん」
この適当さ。
まるで、カフラが2人いるみたいだ。
スウォンは自由奔放を体現したような人物だ。
「それより、なんなんだこの部屋……」
マオ達が辿り着いた部屋。
左、右、正面に合計3つの扉。
左の扉には太陽のマーク。
右の扉には月のマーク。
そして、正面の扉には鍵のマークが描かれている。
おそらく、感圧版の部屋と同じように謎解きをしなければ進めないのだろう。
「月と太陽と鍵……うーむ」
シーカはポワポワとシャボン玉を吹かしている。
熟考しているのだろうと分かる。
「ウチらも、よう分からんくて悩んでてん!」
「そんなのでよく、さっきの感圧板の謎解きが分かったな?」
カフラの言う通り、この自由奔放な少女にあのトリックが分かったのか?
「あぁ、全部踏むってやつやろ?
それなら簡単やったで!ウチにはこれがあるんやもん!」
スウォンの手には一枚の紙切れ、そこにはこう記してある。
———
感圧板の試練は全て踏むのが正解や!
もし、2回踏んでもたら爆発するから気をつけるんやで!!
———
「確かに答えが書いてあるが……
なんなのだそれは?」
「これは、ウチのおとんが残してくれたダンジョンの答えや!
おとんが長年、このダンジョンに潜ってやっとの思いで感圧板の試練の答えを見つけ出したんや。
でも、その先があるやなんて……
あんたら、このダンジョン初めてなんやろ?
それで分かったやなんて、ほんますごいな!」
「私は名探偵だからなっ!
謎解きならチョチョイのチョイっなのだ!」
「スウォンが今のギルド長ってことは、もしかしてスウォンの父は……」
「あぁ、殺されたんや……勇者によってな」
「え、勇者……」
この場の空気が止まる。
それもそのはず、世間的には凶悪な魔王を倒した英雄。
しかし、マオは知っている。
勇者がどんなやつか、どんな悪行をしてきたか。
そして、なにやら勇者のことを知ってそうなスウォン。
勇者って何者なのか……




