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第36話「戻らぬ道」

———


2500の死の中に、たった一つの道がある。


それは“戻らぬ道”。


———


「ふむふむ、"戻らぬ道"……

ここが肝であるな……」


シーカはパイプを加え、ポワポワとシャボン玉を吹かす。

2500の死。

シーカ曰くそれは、ここの感圧板の数を表しているらしい。


「なぁ、とりあえず一つ踏んでみようぜ!」


「だ、ダメですよ!カフラさん!」


羽交締めしカフラの奇行を止めるスカバ。

それはまるで、昼休みにはしゃぐ中学生。

いつから、そんなに仲良くなったんだ。


「カフラくん、どこでもいいから一つ踏んでみてくれ!」


「いいんですか!?シーカさん!!?」


「あぁ、さすがに一発目でドボンはないだろう」


「よっしゃ!そんじゃあ……よっと!」


———


現在位置周辺(5×5)


⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬛︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎


⬛︎:踏んだ場所


———


———カチッ


軽い音が鳴り響く。

一瞬の虚無時間が流れたが、カフラは死んでいない。

セーフ……ということか。


「おーい!名探偵!次はどこ踏んだらいいんだ?」


「そうだな……カフラくん!どこでもいい!もう一度適当に踏んでくれ!」


「だ、大丈夫なの!?シーカ!!」


「あぁ、次何も起こらなければ、

この謎解き、私の勝ちなのだ……」


「よっしゃ!じゃあ、いくぞっ!よっ!」


———


現在位置周辺(5×5)


⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬛︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬛︎⬜︎


———


———カチッ


再び鳴り響く軽い音。

しかし何も起こらない。

という事は、どういう事だ。


「"戻らぬ道"……分かったぞ!!

同じところを2回踏むとゲームオーバー……

ズバリッ!全ての感圧板を踏めば良いのだ!!」


「どういうことですか?」


スカバの表情がグシャッとひしゃげる。

まだ、シーカの脳に追いついていないようだ。

しかし、それはマオも同じであった。


「"2500の死"というのは感圧板の数ともう一つ意味を持っている。

それは、2500全ての感圧板に死のリスクが孕んでいると言うこと」


「でも、カフラが適当に踏んでも死ななかったよ?」


「あぁ、そこで私は確信したのだ。

どの感圧板でも死のリスクがあるがそれは条件付き」


「条件……?」


「それは、感圧板の2度踏み。

戻った時のみ起こる現象だ」


「なるほど!だから"戻らぬ道"ってことなんだね!」


「あぁ、つまり、臆さず全ての感圧板を踏むことがこの謎解きの正解だ!!」


「さすが名探偵!!」


「2500個もあるんだろ?

どこ踏んだか覚えられねぇーよ!」


「安心しろカフラくん!

私は名探偵だ!記憶力には自信がある!

私の指示通りに動いてくれ!」


「おぉ!さすがだぜ!」


「次は、私から見て右に1マス!!

そして、上に2マス!!

次は……」


———


現在位置周辺(5×5)


⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎


———


———カチッカチッカチッ……

連続して軽い音が無我夢中に鳴り響く。

まるで、ゲームコントローラーの連打音のように。

一度でも踏み間違えると死ぬ。

そんな緊張感がないまま、カフラはシーカの指示通りに走り回る。

やはり、この探偵と助手は頭がおかしい。

従順では無い、信頼なのだろうか。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


———


現在位置周辺(5×5)


⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎


———


「よし!カフラくん!あと1マスなのだ!」


「おぉ!もうそんなに踏んだか?」


「じゃあ、最後だな!

私から見て前方に1マスなのだ!!」


「おっしゃあ!いくぜ!!よっと!」


———


現在位置周辺(5×5)


⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎


———


———カチッ……


最後の感圧板の後が鳴り響く。

すると、


———ゴゴゴゴゴ……!


奥の壁が扉のように開く。

謎解きクリアって事だよな。

異世界のダンジョンというのに割と現実的な仕掛けだ。

それにしても、本当にクリアしてしまった。


「すごい……」


声の正体はスカバ。

その表情は、「本当にやりやがった……」という吹き出しがとても似合う。


「すごいよね、あの2人……」


「は、はい!

僕もあなた方みたいに勇敢な騎士になりたいです……」


スカバの曇った表情。

夢と現実のギャップに襲われているのだろう。

マオには痛いほど分かる。

カフラのような度胸やシーカの頭脳。

そう感じるたびに、襲ってくる不安。

自分に父ちゃんの仇は取れるのか。

連れ去られたスイルを救出できるのか。

母ちゃんとの約束は守れるのか。

ふと、勇者ルクスの顔が頭をよぎる。

あの時の恐怖が身体を襲う。


「マオさん……大丈夫ですか……」


「あ、あぁ……!大丈夫!なれるよ!勇敢な騎士に!」


自身への暗示かのように口から出た励ましは、

スカバの表情を綻ぶ。


「おーい!何やってんだぁ?」


「何ボーとしているのだ?

いくぞっ!マオ!スカバ!」


「う、うん!行こう!」


カフラとシーカの活躍により、謎解きは無事クリア。

洞窟の奥に進むたびに感じる嫌な気配。

確実にドラゴンに近づいているのが分かる。

このまま、2人と旅を続けていいのか……

そんな問いを抱えつつ、洞窟の奥へと進む。

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