第35話「寂しいダンジョン」
「ここがヴァヴェルの丘か……」
「そんで、この洞窟の奥に凶悪なドラゴンが住み着いてるって話か!」
「事件の香りがプンプンするのだ!!」
"ワルシャワ"の街の外れ。
山というには小さく盛り上がっている緑を目掛け歩いてきた。
そして、たどり着いたここ"ヴァヴェルの丘"。
その頂上へ到着したマオたち。
今まさに目の前に広がる、下へと続く螺旋階段が、凶悪なドラゴンが住み着いているとされている洞窟の入り口だろう。
「よし!行こうぜ!」
ノリノリなカフラ。
この先にドラゴンがいることを忘れているのか。
いや、伝説の鉱石からくるものか。
「行くのだ!」
ノリノリな人がもう1人。
この探偵と助手は、頭のネジが外れているというよりかは、ネジの締め方に問題がある。
「う、うん!行こう!」
マオたちは螺旋階段を下り、洞窟へ入っていく。
中は薄暗く、外の光でなんとか足元が見える。
灯りを持ってくるべきだったと後悔した。
螺旋階段を下り切ったマオたち。
ドラゴンがいるであろう、洞窟の奥へと向かう。
「な、なぁ、スカバ。
ここって、元々なにかに使われていた洞窟なの?」
マオはふと、頭に浮かんだ疑問をスカバヘ投げかける。
明らかに作られた螺旋階段。
自然生成されたとは思えない、どこかへ導くような作り。
「ここは元々……」
「マオ!危ない!!」
スカバの回答はお構いなしに突然、聞こえるシーカの声。
薄暗い雰囲気と閉鎖された洞窟により反響する声から、マオに蓄積していた恐怖が爆発。
思わず腰を抜かしてしまった。
頭上をかすめる風切り音。
「イテテテ……」
「おい!大丈夫か!マオ!!」
シーカが心配している。
急になんなんだ。
ふと、頭上を見上げると壁に突き刺さる矢。
その位置は立っている時のちょうど顔面を捉えていた。
「なんで、矢……?」
「マオ!ゆっくり立ち上がるのだ!」
マオはシーカに差し伸べられた手を握り、立ち上がる。
スカバは口元を手で抑え、震えている。
「元々、この洞窟はダンジョンだったのです……
伝説の鉱石が眠るとされていて、冒険者たちがそれを求めてここに……」
「それは早く言ってよ……!
死にかけたよ!」
「す、すみません!!
僕も初めてきたのでこんなところにトラップがあるなんて……」
「まぁまぁ、逆にここまでトラップがあるんだ!
あるぜ、伝説の鉱石!!」
どこまでもポジティブだな。
まぁ、今はそれに助けられているが。
ここは、ダンジョン。
この調子だと至る所にトラップがあるのだろう。
「みんな、気をつけて進むのだ!
トラップは私が見つけ出す!」
シーカは肩に掛けているパンパンに詰まったバッグから大きな虫眼鏡を取り出す。
マオがトラップに引っ掛かった時も、真っ先に声を上げたのはシーカだった。
獣人族は人間族より感覚が鋭いのか。
虫眼鏡を覗き込み、足元を警戒するシーカを先頭にマオたちは洞窟を進む。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ここは……」
シーカのおかげでなんとかトラップに殺されることなく、洞窟の奥へと進んだマオたち。
今、目の前に広がるのは大きく開けた空間。
「なにか、匂うな……」
「看板……?」
そして、一つの看板がポツンと立っている。
そこには、こう記されている。
——
2500の死の中に、たった一つの道がある。
それは“戻らぬ道”。
———
「どう言うことだ?さっぱり分からん」
目の前には四角の感圧板のようなものが、キレイに敷き詰められている。
「あれを踏んだら作動するトラップ的な?」
「あぁ、おそらくな……
2500の死というのは、あの感圧板の数だろう……」
「2500……!?
確実に殺しにきてるじゃん」
「す、すごいですね……シーカさん……
僕なんか何も分からないですよ……」
「シーカはな、探偵ってやつなんだ!」
「探偵……?」
「カフラくん、少し違うぞ!
"名探偵"だ!」
「どっちでも良いだろ!!」
「謎解きなら私の得意分野だ。
なんて言ったって散々、ノルディの挑戦状を受けてきたからな!」
「ノルディ……ノルディ!!?
ノルディってあの、魔王を倒した勇者パーティーの1人、"ノルディ・ウィリアム"ですか……?」
スカバは驚愕の表情を露わにする。
いや、どちらかといえば引いていると言う表現の方が近い。
乗る船を間違えたと言うべきか。
勇者パーティーと言うのは、かなりの知名度らしい。
「あぁ!そうなのだ!
私の永遠のライバルなのだ!」
「もしやと思っていましたが、あなたたちはかなり凄い人たちなのですね……」
「俺たちは凄いぞ!
マオなんて、炎の巨人を倒したんだぜ!」
「えぇ!?炎の巨人!!?」
再び驚愕の表情を突き出すスカバ。
もう、驚き疲れただろう。
やめてあげてほしい。
「それより、看板のなぞなぞを解かないとっ!」
「あぁ、そうだな……
2500はこの空間の感圧板の数……
肝心な点は"戻らぬ道"というところだな」
キレイに整頓された感圧板は全部で2500。
一つ一つが正方形の板。
上から見ると一つの大きな正方形だろう。
つまり、縦50、横50に敷き詰められている。
"戻らぬ道"がどういう意味かさっぱりだ。
一度踏めば即アウトの可能性もあるので、迂闊には進めない。
この謎解き、名探偵はクリアできるのか……




