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第33話「革装備専門店」

「こ、ここが僕のお店です……」


「おいおい、ボロボロだな!」


「カフラくん、思ったことをそのまま口にするものではないぞ!」


シーカは緩いカフラの口を手で塞ぐ。

目の前にはボロボロのお店。

看板は傾き、灯りも乏しい。

カフラの言う通り、第一印象はボロボロで間違いない。

入りたいと言われれば入りたくない。


「ど、どうぞ……」


恥ずかしげに店内へ招くスカバ。

本当に、装備なんて売っているのか。

ボロボロの扉を開けて店内へ入る。

店内は思っていたより綺麗で、トルソーやマネキンを使い商品を展開している。

しかし、一つだけ気掛かりなことが、


「なんか茶色い……」


「ちょ、ちょっと今は革装備しか取り扱ってなくて……」


恥ずかしげにしていた理由が分かった気がした。

ましてや、革専門の装備屋なんてRPGならコントローラーを投げ飛ばしている。

カフラは手当たり次第に革商品に触れていく。


「革ばっかりだが、質はかなりいいぞ?

これは何の革なんだ?」


「ここに置いてある装備は、全て羊の革で作ってます」


「作ってる?

これ全部お前が作ってるのか!?」


「そ、そうですけど……」


全てスカバの手作り。

それだけで一気にスカバの見る目が変わる。

いや、変わったのはマオの色眼鏡だけだ。


「スカバは何か、装備製作に特化したスキルを持っているのか?」


シーカらしい質問だ。

確かに、これだけ精巧に作られているのだ、手先が器用ってだけでは説明がつかない。


「そ、そうです!

僕のスキルは、操糸師(そうしし)

糸に魔力を流し込み自在に操るスキルです!

だから、こんなことも……」


スカバは持っていたカバンから麻糸と針を取り出す。

そして、いつでも制作できるようにと店内に無造作に置かれた革切れを一枚手に取った。


「【操糸師スキルThread.5(スレッド・ファイブ):|糸を通すは、意志を通すに等し《ウィル・トランスミッション》】……」


スキル詠唱と共にひとりでに動き出す麻糸。

慣れた手つきというべきか、革を縫っていく。

そして、数十秒も経たないうちに革に描かれる麻糸の花。

まるで、お家芸と言わんばかりのスムーズさ。


「スゲェー!」


「だから、こんなに綺麗に革装備が作れるんだね!」


「い、いやぁ……それほどでも……

僕はまだ見習いだから……」


照れているスカバ。

あまり褒められたことがないのだろう。


「なぁ、マオ!

この店でポイント使っていこうぜ!」


「そうだね!

ヴァヴェルの丘にいるドラゴンに有利な装備がいいけど……」


「それならこれがいいんじゃないですか?」


スカバが勧めたのは革のグローブ。

まるで、転生前の服屋を思い出す。


「ドラゴンの1番厄介な点は火を吹くことと言われています。

それで、数々の両翼騎士団の方々が討伐に行っては敗れているそうです……」


「確かにな、あの甲冑だと耐熱効果は薄いだろうな……」


さすが、鍛治職人。

装備となるとかなり真剣な眼差しだ。

スカバとカフラ、職人気質な2人はどこか雰囲気が似ている。


「よし!

この革グローブを貰おう!それと……」


カフラは店内を舐めるように見る。

店員とお客というよりは職人同士の会話だ。


「なぁ、シーカ。

俺たちいるかな?」


「はあぁ……

なんか眠くなってきたのだ……

装備云々はカフラくんに任せよう……」


店の端で邪魔にならないように待機する2人。

RPGで主人公が装備を選んでいる時のパーティーは、こんな気持ちなのかと思うと申し訳なささえ感じる。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「おい!マオ!シーカ!起きろって!」


「……ん?決まった……?」


「長いぞ……カフラくん……」


どうやら、寝てしまったようだ。

長すぎる装備選びは実に2時間は経っただろう。

まぁ、職人同士の雑談もあっただろうが。


「これで装備は決まりだ!

マオとシーカの分も選んでおいたぞ!!」


カフラの手には大量の革。

そのどれもが店内には置いてなかったような。


「これがマオの分!

そんで、これがシーカの分だ!!」


カフラから手渡されたのは革の胴防具。

そして、シーカには革の盾。

カフラはスカバに勧められた革の手袋を持っている。


「全部で5000ポイントになります!」


意気揚々と値段を発表するスカバ。

その額には汗をかいている。


「全てオーダーメイドで作ってもらった!

ちょっとポイントは張るがドラゴン討伐にはベストな装備だ!」


「オーダーメイド!?」


それが、汗の正体か。

マオは職人の繊細な取引が行われていたことを察する。


「5000ポイントだね?

どうやって渡すの?」


「"ポイントオープン"って唱えて相手の手を握るんだ!」


「お、おっけい!

"ポイントオープン"……」


マオが唱えると左手に浮かび上がる35,000ポイント。

そして、差し出されたスカバの左手を握る。

まるで、契約成立の握手だ。

すると、たちまち、35,000のポイントが30,000へと変化する。

スカバの左手には、5,500。


「ありがとうございます!!

しっかりとポイントはいただきました!」


「よし!

じゃあ、さっそく明日の朝ヴァヴェルの丘に向かうぞ!!」


本当にドラゴンを討伐する気だ。

まぁ、多分止めても無駄だろうな。


「あ、あのぉ……

僕もそのヴァヴェルの丘に連れて行ってくれませんか?」


「あぁ!いいぜ!!

ドラゴン討伐に人数は多い方がいいからな!」


「ありがとうございます!」


ドラゴン討伐に異名コレクター、錬成術、探偵、操糸師。

いや、パーティーバランスが悪すぎるだろ。

本当に討伐できるのだろうか。


「それじゃあ、もう遅いし泊まる宿を探そう!」


「あぁ、そうだな!」


せめて、明日のために体力は万全にしたい。


「なぁ、スカバ!

近くの宿屋ってどこだ?」


「それなら……」


スカバはここから歩いて5分ほどにある宿屋を紹介してくれた。

ドラゴン討伐は明日の朝。

カフラはどこかワクワクしている。

この男の好奇心に振り回されているがどこか悪い気はしない。

主人公ってこう言う人のことを言うのだろう。

それはともあれ、無事ドラゴンは討伐できるのか…。

そもそも、伝説の鉱物とやらはヴァヴェルの丘にあるのか……。

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