第32話「自由なお姫様」
「ああ、着いたぁ……!」
目の前には大きな門。
そして、その前に仁王立つ門番。
街に入るためのアポ取りは初めての為、少し緊張する。
マオの緊張を気にも留めず門番に歩み寄るカフラ。
「俺は"カフラ・デミル"!!
この街に魔法石があるって聞いてきたんだが。
通してくれるか?」
シルバーの甲冑を身に纏った門番。
背中からは大きな羽根が生えている。
兜で目は見えないが、隙間から見える嘴がシーカと同じ獣人族と理解できる。
異世界にきて、約7年。
もう、こんなことでは驚かない。
「魔法石……?
生憎、この街にそんなモノはない!
引き返すんだな!」
門番として正当な返答。
見ず知らずの人が魔法石のため、街に入れてくれと言っているんだ。
人間として警戒心が高まるのは普通だ。
「えぇ?この本が言ってんだって!
"ワルシャワ"に行けばカンパニュラジェムがあるって!」
「なんだ?その汚い本は……
"カフラマン伝説"か!?
でも、見たことのない表紙だな……」
「そうなんだよ!俺も見たことなくてさ!
これは特別な"カフラマン伝説"らしいんだよ!」
「なんだ?お前たち旅の商人か?」
「いや、そんな———」
「そ、そう!旅の商人だ!
私たちはレアなアイテムを集めているんだが、少し疲れてしまったので、街で少し休息をとらせて欲しい……」
カフラの口を抑え代わりに回答するシーカ。
確かに、旅の商人だと魔法石を探していることや特別な"カフラマン伝説"を持っていることにも説明が行く。
さすが、名探偵。
アポ取りはシーカが適任だな。
「旅の商人であったか!
どうぞ、ゆっくり休んでいくといい!!」
すんなりと通してくれる門番。
少し、警戒が薄くはないだろうか。
旅の商人ということがこの街では優遇されるのか。
無事にアポは成功。
門番に通されついに、"ワルシャワ"内へ。
中に入ると視界いっぱいに広がる赤い建物。
そのどれもが煉瓦造りだ。
屋根は緑色。
建築家のこだわりを感じる。
「すげぇー!!ここがワルシャワか!」
「なに、あのお城!!」
マオの指の先にそびえ立つ巨大なレンガの塊。
それが、この街の一番の権力者がいることを示している。
間違いなく、そこに王もしくはギルド長がいる。
「この街は"イーグルシールド"って言うギルドが運営しているんだ。
そして、ポイント制度では珍しく国として機能している場所なのだ」
「てことは、あの城に国王がいるってことか?」
「さすがカフラくん!そういうことだ!」
「それじゃあ、とりあえずあのお城に行ってみて色々と情報収集しよう!」
数々のRPGをプレイしたマオ。
街につくと1番でかい建物を目指したくなる習性は、転生しても変わらないようだ。
そして、変な習性を持っているのがもう1人。
人が目に入っては話しかけているカフラ。
情報収集を欠かさないのは立派だが、パーティー3人中2人が変人は流石にマズい。
それはさておき、煉瓦造りの家屋を縫って城を目指す。
道中、武器屋や道具屋、宿屋など様々な店を目にした。
かなり、安定した国なんだろうと伺える。
ついに、お城の前に到着する3人。
「ここが、ワルシャワの城……
近くで見るともっとデカいな……」
城の前には街の門番と同じ、シルバーの甲冑に羽根の生えた兵士。
「僕を!両翼騎士団に入れてください!!」
「ダメだと言っているだろ!!」
そして、10代ほどの少年。
リネンのシャツに革のベストを見に纏っている。
なにやら、揉めているようだ。
兵士に突き飛ばされる少年。
すかさず、側に駆け寄るカフラ。
「なんだ?喧嘩か?」
「喧嘩とかではない!
お前たち、その男の仲間か?」
「いや、しらねぇーけど突き飛ばすのはねぇんじゃねえか?
その、なんとか騎士団に入れてやったらいいじゃねぇーか」
「"両翼騎士団"だ!
そのものは入団条件を満たしていないのだ!!
そもそも、技量も見合っておらん!」
「なんだよ、入団条件って!
確かに見るからに細くてヘナチョコそうだけど気持ちは本気っぽいぜ?」
「"翼"だ。
"両翼騎士団"はここ"ワルシャワ"を治める"イーグルシールド"のギルド長、"スウォン・ロウィスク"様に仕える騎士。
国王が自由に羽ばたける翼となる者。
その名の通り、翼を持つものにしか入団は認められない!」
「翼って……
入団条件厳しくない?」
「スウォン様は自由を望まれている。
翼を持たぬものにその望みは叶えられない」
「……僕だって……!!」
「これ以上、逆らうと反逆罪としてその首を切り落とすことになるが……?」
「と、とりあえず一旦戻ろう……!ね?」
これで、首を切り落とされるのはさすがに嫌だ。
マオたちは少年を連れて、一旦城を後にする。
少年はぐったりと落ち込み、空気は最悪。
まるで、失恋した同僚を慰めるように、街の酒場へと向かった。
「なぁ、大丈夫か?お前」
「は、はい……」
カフラが珍しく慰めに入る。
余程、空気が悪いのかカフラの眉毛は片方だけ吊り上がっている。
よし、まずは空気感を変えよう。
「俺の名前は"マオ・ノクス"!
それで、この青髪の男が"カフラ・デミル"!
そして、このフサフサな探偵が"シーカ・ホームズ"だ!よろしくね!」
「名探偵なのだ!」
「ぼ、僕の名前は……"スカバ・ドラテフカ"。
よ、よろしくお願いします……」
「なぁ、スカバ。
なんで、あの……なんとか騎士団に入ろうとしてるんだ?」
「ぼ、僕は約束したんです!
両翼騎士団に入団して母を助けたいんです!」
先ほどまでのナヨナヨが嘘のようにスカバの目は、急に決意の眼差しへと変わった。
母との約束。
それは、マオも同じだ。
「でも、翼が必要なんだろ?
お前あんのか?」
「いや、ないですけど……」
入団条件である翼。
スカバの決意は本物だが、この条件が邪魔をする。
多分、このまま話しても埒が開かない。
「と、とりあえずさ!
明日また行ってみようよ!
俺たちも一緒に頼んでみるからさ!」
「ありがとうございます……
あなたたちは、ここの人では無さそうですけど、旅の商人ですか?」
「俺たちは伝説の鉱石を探して旅をしているんだ!!
それと、この本の謎を追っている!」
まぁ、伝説の鉱物を追っているのはカフラだけだが。
「伝説の鉱物……
それって、カレッジストーンのことですか?」
「お前も知っているのか!!」
「は、はい……
この街の近くの"ヴァヴェルの丘"に洞窟があるのですが、そこにあるとかないとか……」
「よし!明日行ってみようぜ!!そのなんとかの丘!」
「や、やめておいた方がいいですよ!
今は凶悪なドラゴンが住み着いているらしいので……」
初めて、カフラが追っている伝説の鉱石の情報を得たがどうやら噂程度らしい。
そんな、命を賭けてまであるか分からない鉱石を探すのはコスパが悪い。
カフラのキラキラ目線が痛い。
もう、行く気満々じゃん。
「ドラゴンがいるんじゃちょっとね……
本当にあるのかもわからないんでしょ?」
「いや!ある!絶対にある!
ドラゴンなんかぶん殴ったらたら良いんだよ!」
あまりにも脳筋すぎる発言。
勇者ルクスとの戦闘でドラゴンと対峙したことのあるマオ。
あんなのがいるのであれば勝ち目はないことは分かっている。
「カフラくん、ドラゴンは魔物とは違うのだぞ。
個体によって違うが一体で国一つを滅ぼすほどの力を持つものもいる。
我々では勝ち目がないことは明白だろう」
いいぞ、シーカ。
助手の奇行を止めてくれ。
「せめて、装備とか道具を整えないと……」
「装備だ!!おい!スカバ!
装備が売っている店はあるか?」
「装備なら僕が働いている店にあるけど……」
「そこに連れてってくれ!!」
どうやら、これはドラゴンと対峙する羽目になるかもしれない。
伝説の鉱石となると止められないカフラ。
果たして無事、伝説の鉱物を見つけられるのだろうか……




