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第31話「受け継がれるモノ」

白く光り輝くカフラの痣。

綺麗な三日月の形をしている。

カフラが本を手に持った瞬間に反応したことから、何かしらの関係性があることはわかる。

何かを伝えるように開く本。

白紙のページは光り、文字が刻まれる。


「こんなページ見たことねぇぞ!

表紙も違うし……

本当にこの本は"カフラマン伝説"なのか?」


「それは、ロルドいわく、ノルディがどこからか盗んできた本らしいのだ。

カフラくんが持っていたモノと違うのなら、これは特別な"カフラマン伝説"なのかもしれないな……」


ローズジェムをはめ込むことができる表紙。

所々にある、白紙のページ。

カフラに反応するように光り輝く現象。

それらは、シーカの推測通り、この本が"特別"なモノであることの根拠になりうる。


「そもそも、"カフラマン伝説"ってどんな物語なの?」


マオは自身だけが話についていけてないことを理解する。

名前の由来がこの"カフラマン伝説"の2人。

それに引き換え、マオは自身の名前の由来なんて、知らない。

生まれた時から"マオ・ノクス"であった。

それに疑問を感じたこともなかった。

おそらく、"狭間"で出会った紫髪の少女がステータスを決める時に適当につけたのだろう。

マオからでた初歩的な疑問に口があんぐりなカフラ。


「マオ、お前"カフラマン伝説"しらないのか!?」


「し、知らない……」


「聞いたことも無いのか?」


「な、ない……」


予想以上の驚き。

まるで、転生前の超有名昔話"桃太郎"を知らない人に対する反応だ。

横にいるシーカも同じように驚いている。


「マオはどこ出身なのだ?」


「カイの村っていうところだけど……」


マオは母、アクアに貰った地図をローテーブルに広げる。

そこには、ここ、"デーモンズクエスト"にある国や街が描かれている。

マオは堂々と地図上を指差す。


「ここ!ここが俺の育ったカイの村だ!」


指し示した先は山々に囲まれた緑。

"カイの村"と名称は無くても場所は分かる。

転生前に数々のRPGをプレイしてきたマオが唯一手に入れたスキル(特技)だ。

カフラとシーカの眉はへの字に曲がっている。


「おい、マオ……

なんも書いてねぇーぞ?

本当にそこなのか?」


「地理に関しては一通り勉強したつもりだが、"カイの村"なんて言うのは一度も聞いたことがないな……」


マオは自身の育った村の知名度の無さにショックを受ける。

地図を見渡すと村の名称も余すことなく書かれている。

いや、"カイの村"が余っているのだが。


「ま、まぁ多分村の規模が小さすぎて書かれなかったのかなぁ……あはは……」


考えうるダメージが少ない自虐を加え、気まずさを薄める。

カフラやシーカの反応からおそらく、基本的に街や村は地図に載っている。

ここは"デーモンズクエスト"。

魔法やスキルが蔓延るこの世界で、地理に特化したものがあってもおかしくはない。

そんな魔法やらスキルで、書かれた地図だろう。

なんとなく、空気が気まずい。

アルビオンを救うため共闘して、築き上げた信頼をマオの出生に対する不信感が邪魔をする。

とりあえず、話題を変えよう。


「そ、それよりその"カフラマン伝説"に追加された、新しいページにはなんて書いてあるの?」


「あぁ、そうだな……」


カフラはローテーブルに広がった地図の上に"カフラマン伝説"を置く。

3人で頭を突き合わし、新しく光刻まれた頁を読む。

そこには、探究者"シーカー・オール"が"カフラマン"と共に冒険をすること。

そして、"アルビオン"から旅立つことが記されていた。


「"アルビオン"……

"カフラマン伝説"にもあるんだね……」


「いや、そんなはずはない……

"アルビオン"はロルドがゼロから築いた街。

1000年も前の物語に出てくるはずはない……」


「俺が読んでいた"カフラマン伝説"にも"アルビオン"なんて地名は出てこなかったぞ?」


「ど、どういうことなのだ……」


さすがの名探偵でも頭を抱える難題。

そして、頁を締めるように記された最後の文。


———カンパニュラジェムが眠る新たな街、

"ワルシャワ"へ。


「ワルシャワ……」


マオはもう一度地図に目を通す。

アルビオンから東の人差し指2本分ほどに"ワルシャワ"の文字。


「ある……」


「ここに行けってことか?」


「これは、あくまで私の推測だが、この本は魔法石の場所に導くモノ。

カフラに反応したことから特定の人専用なのかもしれない。

まだまだ、判断材料が少ないが……」


「それじゃあ、その"ワルシャワ"?ってとこに行ってみようぜ!

そしたら、この本の謎が分かるかもしれないぜ!」


「そ、そうだね!それが1番早い!

シーカも行くよね?」


マオの視線は自然とシーカに向く。

それは、気遣いではなく友達としての確認であった。

なぜか、赤面するシーカ。

徐にパイプを咥え、シャボン玉をブクブクと吹かす。

まるで、隠れるように。


「わ、私もいいのか……?」


「当たり前だろ?

この本の謎ってやつ解きたくないのか?」


シーカは、まだどこか友達という概念を捉えきれていないようだ。

マオ自身もその概念を深く考えたことはないが、この感覚は間違いなく友達であることはわかる。

しかも、かなりの気が合う。


カフラに反応した本。

そして、なぜか魔法石を導くかのように光刻まれる新たな頁。

その謎を1番解きたいのは名探偵であるシーカのはず。


「ほら、探偵の助手もこう言ってるんだから!

一緒に行こ!」


「確かに……

助手だけで事件は任せられないな……

よし、この名探偵"シーカ・ホームズ"も同行するぞ!」


余程嬉しかったのか、さっそく旅の準備を始めるシーカ。

最初に握り締めたのは、ジョンソンが肩にかけていたバック。

そこに、大きな虫眼鏡、パイプ、本などのありとあらゆる探偵道具をパンパンに入れ込む。


「よし!行こうではないか!」


「おいおい、カバンがパンパンだぞ?

歩けるか?」


「名探偵のバックはパンパンと相場は決まっているんだ!」


「聞いたことないよ!」


いつもの3人組のような会話を繰り広げると、シーカはカバンを持つ。

しかし、何かを見つけたのか動きが固まる。


「ロルド……」


なぜ今、シーカの父の名が出るのか。

何を見たのか気になったマオはシーカの視線の先を見つめる。

見つめていたのはカバンのショルダーベルト。

そこには小さな文字。

目を凝らすとこう刻まれていた。


———|Rolde Winsonロルド・ウィンソン


シーカの父の名だ。

ジョンソンの持っていたカバンにロルドの名前。

この謎はマオには理解し得ないがシーカは笑みを浮かべている。

悪いことでは無さそうだ。

無理に詮索はしない。

なんて言ったって友達なのだから。


「よし!行くぞ!」


「おっけい!」


「おせぇーよ!」


3人は探偵事務所の扉を開けて、新たな旅へと一歩踏み出す。

シーカは振り返ることなくカバンのショルダーベルトを握りしめている。

まるで、お別れではなく共に冒険に旅立つように。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


"アルビオン"を旅立ってから1日が経過した。

まだ、次なる街"ワルシャワ"には到着していない。

なぜなら、徒歩なのだから。

何もない山道を歩いていく。

ここは、魔王討伐後の"デーモンズクエスト"の世界。

当然、魔物(モンスター)も出てきやしない。


「あぁ……疲れたぁ……」


「そうか?俺はまだまだ歩けるぞ?」


「化け物か!シーカも背負ってるのにすごいな……」


カフラの背中にはシーカ。

微かに聞こえる寝息。

山に入り、2時間ほどで疲労に襲われたらしい。

パンパンに詰め込んだカバンもカフラが持っている。

どうやら、名探偵の助手というものは大変なようだ。

変わらない景色の連続。

マオは"ワルシャワ"に着いた時のことを考える。


"ワルシャワ"に到着し、魔法石についての情報収集。

あわよくば、勇者の居場所も知りたい。

そして、宿を取って……

宿……!?

ポイント!!


「俺、ポイント持ってないじゃん!」


肝心な事を思い出した衝撃で思考が声に出てしまった。

カフラの表情から驚きと少しの苛立ちを感じる。


「なんだよ、いきなり!

今ポイントを使う場面じゃねぇーだろ?」


「宿だよ!宿!

"ワルシャワ"に着いた後のこと!

"アルビオン"の時はシーカの探偵事務所に泊めさせてもらったから良かったけど……」


「確かに……

俺ももう、"アルビオン"の高級飯屋でポイント使っちまった……」


まさに一文無しのマオたち。

カフラは何か思いついたように目を見開く。


「マオ!

アルビオンで、あの炎の巨人をぶん殴っただろ?

そいつのポイントは入ってないのか?」


「確かに!!

……って、どうやって持ってるポイントが分かるの?」


「本当にポイントを使わず生きてきたんだな……

"ポイントオープン"って唱えてみな?」


「"ポ、ポイントオープン"……?

……うわぁ!?」


マオが唱えた途端、手の甲が小さく光り輝く。

そこには数字が記されている。


———35000。


それが、マオが持つポイントのようだ。

これが高いのか低いのかもわからない。

カフラの目は2倍ぐらいに広がっている。

とんだ変顔だ。


「35000ってお前……

とんでもないポイントだぞ……」


「そ、そうなの!?」


「ギルド一つ分のポイントだ……

まぁ、ギルド長を倒したんだ、それだけのポイントが入って当然だが……」


カフラは少しの沈黙を作る。

巨額のポイントを獲得したことと、それ以上の何かがあるような。

とうとう沈黙を破るカフラ。


「前に話したと思うけど、ポイントをある一定以上獲得するとなんでも願いが叶うていう噂があるんだが、それを信じている連中がこの世界にはたくさんいる。

ポイントが高ければ高いほどその連中に狙われるんだ!」


「つまり、俺はその連中に狙われるかもしれないって事?」


「あぁ、"アルビオン"にいた"グルー"てギルドがまさにそうだ。

それ以外にもたくさんのポイント所持者を狙うギルドがあるらしい……。」


「やばいじゃん……」


「あぁ、背後は常に気を付けておいた方がいいかもな……」


「……よし、使おう……ワルシャワで使いまくろう!」


「あぁ、それがいいかもな……」


目的地の"ワルシャワ"まで、あと半分。

ポイント=強さの証明な、この世界で高額のポイントを獲得したマオ。

そんな、ポイントを狙う"ギルド"。

マオたちは無事に本の謎に辿り着くことはできるのか……

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