第30話「"カフラマン伝説"と五つの魔法石」
「マオ!!」
着地する素振りを見せないマオに焦るカフラ。
頭を先頭に落下している。
異名"|Last Bastion"により付与された無敵時間はタイムオーバー。
よって、マオは瀕死状態に陥っており、身体が動かない。
「ま、まずいのだ!!
このままだとマオが死んでしまう!
巨人を殴り飛ばした後のことを考えてなかったのだ!!」
「くっそ……」
辺りを見渡し、何か思いついたカフラ。
自身の服を脱ぎ上裸になる。
鍛治で鍛えられた筋骨隆々な身体。
そして、左胸に浮かび上がる月型の痣が露になった。
あまりの奇行に固まるシーカ。
気にすることなく服を持ちスキルを詠唱。
「やってみるか……
【錬成術Formula.5:|姿は変われど、理は変わらず《メタモルフォーゼ》】!!」
手には五芒星が浮かび上がる。
光に包まれ次第に変形を始める服。
たちまち、大きな三角形の布に変形した。
「おい!名探偵!
そっちを持ってくれ!!」
「な、なるほどカフラくん……
さすが名探偵助手第2号だ!
だ、だけどこれだと後1人必要だぞ!?」
大きな三角形の布。
2人だけでは、引っ張っても意味がない。
カフラは、シーカの方向を指差す。
「もう1人はあそこにいる!!
おーーい!!ブロッコリーのおっさん!!
手伝ってくれ!!」
指の先にはトスティの姿。
物陰に隠れて、なんとかやり過ごしていたようだ。
突然の指名に自身を指差し確認する。
「そうだよ!あんただよ!!
マオが死んじまう!はやく!」
トスティは慌てて三角形の頂点へ向かう。
「こ、ここでいいのか?」
「あぁ!じゃあ、引っ張るぞ!」
「カフラくん!名案だ!
思いっきり引っ張るんだぞ!」
「いくぞ、せーのっ!!」
3つの頂点が伸ばされピンっと張る布。
落下するマオを救うのは、
そう、セーフティネットだ。
マオが布に着地。
布は大きく沈み込む。
エネルギーは非力なシーカに集中し身体が飛ばされるもマオはなんとか無事の様子。
「おい!大丈夫か?マオ!」
「あぁ……なんとか……
やったよ、俺……」
脱力したように目を瞑るマオ。
どうやら、気絶してしまったようだ。
———
「こ、ここは……」
ふと、マオが目を開けるとコンクリートの天井。
壁一面に本棚が並び、下には革の感触。
「あ、マオ!!
マオが起きたのだ!!」
デスクからはシーカの声。
どうやら、ここは探偵事務所のようだ。
「おお!!起きたのか!!
全然起きねぇーから心配したぞ!!」
覗き込むように見つめるカフラ。
目は覚めたが身体が思うように動かない。
ゆっくりと起き上がるマオ。
腹部には雑に巻かれた包帯。
カフラが巻いたのだろう。
「っ!?……イテテ……」
腹部に激痛が走る。
「お、おい!まだ傷が癒えてねぇーだから動くんじゃねぇよ!」
「あ、ありがとうカフラ……
巨人は……?」
「あぁ、巨人なら消えていたぞ!
ハラルってやつの姿もないから逃げたんじゃねぇーか?」
「よ、よかったぁ……」
「それより心配したんだぞ?
もう、5日間も目を覚まさねぇから!」
「5日間!?
俺そんなに眠っていたの?」
マオが眠っている間に半壊したアルビオンは徐々に復旧が始まっていた。
ノルディの死により"ゴールデンゴースト"は解散。
アルビオンの運営権は再び"シルバーストリート"に戻った。
ギルド長はトスティ。
アルビオン壊滅の張本人ではあるが、本意ではなかったことやシーカの説得により、アルビオンの民と和解。
償いの意味を込めてアルビオンの健やかな運営を任されたのである。
アルビオンの人たちは心が広いな……
シーカは頭を下げる。
「怪盗シャドウを捕らえる事からこんなに大事に巻き込んですまなかった。」
「いやいや、全然大丈夫だよ!
シーカはもう友達だもん!アルビオンのことは他人事じゃないよ」
「友達……」
分かりやすく赤面するシーカ。
初の友達という言葉に耐性が無いのだ。
話題を変えるように問う。
「……ゴホンッ!
それより、これからどうするんだ?」
シーカの問いにカフラは自信満々に宣言する。
「俺は、引き続き旅を続けるぞ!
伝説の鉱石を見つけるためにな!」
「伝説の鉱石?」
「あぁ!"カレッジストーン"と"ラブストーン"ていう伝説の鉱石があるんだ!
俺はそれを探す旅をしている」
「へぇー……
どこかで聞いたことある名前だな……
もしかして……」
シーカはデスクチェアを降り本棚へと向かう。
ある一冊の分厚い本を手に取る。
「この本に出てくる鉱石か?」
「あぁ!そうだ!!
その本!"カフラマン伝説"!!」
「この鉱石がこの世界にもあるのか?」
「あぁ、絶対にある!
俺が絶対に見つけ出すんだ!」
カフラとカフラマン伝説にある共通点を見つけるマオ。
「な、なぁカフラって名前ってもしかして……」
「あぁ!この"カフラマン伝説"の主人公カフラマンからだ!
親父が俺につけてくれたんだ!!」
「そ、そうなのか!?」
予想以上に驚くシーカ。
カフラの由来がカフラマンと言うだけの驚きではなかった。
「わ、私の名前も"カフラマン伝説"に出てくる
探究者"シーカー・オール"から名付けられた……」
「有名な本だからな!
勇敢なカフラマンの冒険だ。
憧れる人も多いだろ!」
カフラが本に触れる。
すると、本は宙に浮きひとりでに閉じる。
そこには、丸い窪みが5つある表紙。
ある一つの窪みが光を放っている。
そこから一筋の光が伸びる。
光の先にはデスク。
まるで、導くように示している光に従うシーカ。
デスクの1番下の引き出しを開ける。
そこには見覚えのある物。
「ジョンソンくんのカバン……」
そのカバンをデスクの上に置く。
光はその動作に合わせ動いている。
カバンを開けるとそこには一枚のカード。
そして、光り輝く石。
手始めに紙を広げるシーカ。
「これは……」
怪盗シャドウからの予告状と同じカード。
そこには、こう記載されていた。
———
名探偵シーカへ
俺に勝ったご褒美だ!
楽しかったぜ。
———
差出人には塗りつぶした跡。
その上に小さく助手ノルディと書いていた。
シーカの目には涙が浮かぶ。
ノルディ、ジョンソン、怪盗シャドウ全て同一人物だが、シーカは3人分の悲しみが押し寄せる。
「怪盗が助手だなんてな……」
涙を拭いシーカは光り輝く石を手に取る。
光り輝く石はローズジェム。
本から伸びる光の終着点。
シーカは本の表紙にローズジェムを嵌め込む。
「ぴったりだ……」
ローズジェム専用と言わんばかりのジャストフィット。
再度、本は宙に浮きひとりでに開く。
そこには白紙のページ。
徐々に光で書き刻まれていく。
「……っ!?」
カフラはそれを見てある身体の異変に気がつく。
突如、シャツのボタンを外し左胸の月の痣が露になる。
「カフラ……その痣……!」
本に答えるように白く光る月。
"カフラマン伝説"の主人公、カフラマンから名付けられたカフラ。
彼に秘められた使命とは……




