第29話「ラグナロク」
———|Eternal Stealer
マオの手には一枚のカード。
手に持った瞬間、光り輝きマオを包み込む。
暖かい光、どこか懐かしい感じもする。
光はゆっくりと消え、マオの姿が露になる。
頭にはシルクハット、片手には大きな盾。
まるで、カードのイラストにそっくり。
あまりの早着替えにカフラは驚きを隠せない。
「マ、マオ……
その姿……どうしたんだ?」
「カフラ……俺分かったんだ。
スキル"異名コレクター"の真の力……
それは、異名同士の合成……」
「異名同士の合成!?
おいおい!そんなのありかよ!!
ただでさえ異名を持つことさえ、珍しいのにそれを合成だなんて……
とんでもないスキルだな!」
"異名"は選ばれし者のみ与えられる第2のスキル。
獲得条件は不明。
ステータスやスキルの良し悪しは関係なく、強者にも弱者にも"異名"は付与される。
それを集め合成するスキル"異名コレクター"。
なんとも豪華なスキルである。
珍しいスキルにシーカも興味津々。
「それで、新しくできた異名はなんなのだ?」
「父ちゃんの"|Last Bastion"とノルディさんの"All Taker"を合成した異名の名前は、
"|Eternal Stealer"……」
「|Eternal Stealer……
どんな効果なのだ?」
ふと、本をめくると光で刻まれた文字。
そこには、カードのイラストと効果が記されていた。
———
|Eternal Stealer
いかなる攻撃も通さぬ不滅の身。
触れた力はすべて奪い、己へと変える。
さらにその盾は、受けし力を拒むだけでなく、
最も優れし才を選び取り、我がものとする。
ゆえに敵は知る。
抗うほどに、自らを奪われる運命を。
永遠に奪い、積み上げる者。
———
「つまり、どう言うこと?」
「そうだな、それが異名の効果だとすると……
ズバリっ!その盾で攻撃を防ぐと相手の最も高いステータスを自信に上乗せできる!」
「おいおい!強すぎんだろそれ?」
「その力ならあの、巨人を倒せるかもしれない……。
マオ、無敵時間はまだ残っているか?」
「あと……3分!!」
「3分!!?
やべぇじゃねぇーか!
作戦はどうするよ?名探偵……!」
「作戦はこうだ!
巨人は今、時計台に向かっている。
鐘の音に釣られてな。
おそらく、時計台を破壊しようとしている。
ズバリっ!時計台への攻撃を盾で受け止め、巨人の最も高いステータス、筋力を上乗せした渾身の一撃を叩き込む!!
しかし、おそらくチャンスは一度きりだ……」
「一度きり……
俺、やるよ!この街を守る!!」
「一撃で仕留められなければこの街は終わる……巨人の弱点……」
「相手は巨人なんだろ?でっけぇー、人。
弱点は俺たちと一緒じゃねぇーのか?」
「なるほど、カフラくん……
……よし!顔面だ!マオ、渾身の一撃を顔面に放ってくれ!!」
「分かった!やってみるよ!!」
「よし、そんじゃあ俺が巨人の前まで運んでやるよ!!」
「ありがとう!カフラ!!」
マオは拳を強く握り締める。
皮膚に食い込む指、石のように硬くなる拳。
その拳は勇者と対峙した時の感覚に似ていた。
制限時間は3分。
巨人を倒しうる術を持っているのはマオだけ。
しかし、プレッシャーは感じない。
マオはそっと、心臓に手を当てる。
ノルディさん……
俺、やるよ。
アルビオンは俺が守る!!
アルビオンの存続を賭けた最後の巨人討伐が始まった。
「作戦開始なのだ!!」
シーカの合図でスキルを詠唱するカフラ。
「よっしゃいくぞ!!
【錬成術Formula.5:|姿は変われど、理は変わらず《メタモルフォーゼ》】!!」
両手を勢いよく地面に置くと五芒星が手に浮かび上がる。
地面は大きく波打ちたちまち階段が形成される。
巨人の前へと続く螺旋の階段。
「いいぞ!カフラくん!
さすが私の探偵助手第2号なのだ!!
マオ!頼んだぞ!」
頷き、階段を駆け上がるマオ。
巨人の顔面が徐々に迫ってくる。
再度、拳を強く握りしめた。
大丈夫、俺ならいける。
今はすこぶる身体の調子がいい。
今まさに時計台を壊そうと、腕を引く巨人。
パンチを繰り出す構えだ。
これを盾で防ぐことができなければ作戦は失敗。
さらには、時計台は壊れ避難したアルビオンの民はただでは済まない。
ついに放たれたパンチ。
タイミングよく地面を蹴り飛ばし巨人のパンチの前に飛び出すマオ。
炎に包まれた巨人の手が迫り来る。
盾を構えるマオ。
「……ッグ!!」
巨人のパンチは見事盾に命中する。
身体は吹き飛び時計台へ飛んでいく。
「やっぱりな……
シーカの言ってた通り、アイツの最も高いステータスは筋力……」
異名"|Eternal Stealer"で出現した盾は相手の攻撃を防ぐとともに最も高いステータスをも奪う。
巨人の最も高いステータスは筋力。
マオの筋力に巨人の筋力が上乗せされる。
後方に迫る時計台。
マオはすかさず体制を変え、時計台の壁を蹴り飛ばす。
目標は巨人の顔面。
拳を強く握り締め、腕を大きく引く。
ソイルに叩き込まれたパンチの構えだ。
父ちゃんありがとう……
ノルディさん、アルビオンは俺が守るよ……
目の前には巨人の顔面。
とうとう、大きく溜めた拳を放出する。
巨人の皮膚にのめり込む。
「ぶっ倒れろぉおぉぉ!!」
炎を纏し巨人。
その炎が熱く感じ始める。
無敵時間の終わり。
マオの渾身のパンチにより巨人の顔面は大きく後退する。
大きな地鳴り、巨人はアルビオンに倒れ込んだ。
地面に落下するマオ。
力が入らない。
視界いっぱいに広がるアルビオン。
ノルディさん……俺やったよ……




