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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
28/30

第28話「"Last Bastion"×"All Taker"」

「ウオォォォォォォ!!」


「こ、これは……」


地震と間違うほどの咆哮。

ハラルはスキル"|神すら焼き払う終焉の灯火スルト・インフェルノヴァ"により姿を変える。

マオが天高く見上げるほどの巨体。

身体は炎を纏っている。

いや、炎そのものと言っていい。

もはや、ハラルの原型はなく別の生命体へと変化していた。


「おい!なんなんだ!こいつ!!」


「炎の巨人……

こんなのどうやったら……」


突如現れた炎の巨人に状況が掴めないカフラ。

そして、肩車のように乗るシーカ。


「それと、マオ……

なんなんだ?その姿?ツノも生えてるし……」


「あ、これ?

父ちゃんから貰った"異名"が発動してるんだ!」


「おいおい、"異名"を貰ったってそんなのありかよ?

"異名"ってのは選ばれたヤツにしか付かない第2のスキルだろ?」


「マオのスキルが関係してるんじゃないか?

確か"異名コレクター"だったな?」


「うん……俺もまだよく分かってないんだけど。

異名を集めてそれを使えることができるスキルっぽいけど……」


「ウオォォォォォォ!!」


雑談を遮るように雄叫びを上げる炎の巨人。

腕を豪快に振り下ろす。

家屋は崩壊し、灼熱の炎に包まれる。

自分達の末路を悟るように、唖然とするマオたち。

カフラは作戦会議を開く。


「おいおい!どうすんだ!?

これじゃアルビオンは一瞬で炎の街になっちまうぜ!?

名探偵なんか作戦立ててくれよ!」


「そうだな……

あの巨人に対抗できる術を持っている者は?

ちなみに私のスキルはディテクティブスキル……

事件が起きないと発動できない。」


「俺のスキルは"錬成術"!

物と物をくっつけるか、変形させられる……

あんな巨人にはダメージは与えられそうにない」


2人の眼差しはマオに向いた。

期待の感情が剥き出している。


「俺のスキルは"異名コレクター"……

今使用している異名は"|Last Bastionラスト・バスティオン"。

瀕死の状態で、10分間の無敵時間が付与される……

って、俺しかいないじゃん!」


「あぁ!!任せたぜ!マオ」


「その"無敵時間"って、あと何分とか分かるのか?」


マオの脳裏によぎるカウントダウン。


「あと、6分……」


「6分!?」


マオのスキル"|Last Bastionラスト・バスティオン"に設けられた無敵の制限時間。

この時間を過ぎるとマオはたちまち瀕死状態に陥る。


6分。


それが、アルビオンを救える猶予となった。


「ウオォォォォォォ!!」


"ヴァルハラブレイド"総勢800人の意思が作り出した炎の巨人は今も尚、意志を全うしていた。

アルビオンの港地域はもうすでに火の海と化している。


「早くしねぇーと!時間がないぜ!!」


「そ、そうだな……

足を狙おう!!なんとか歩みを食い止めなければ!」


「分かった!」


頷き、走り出すマオ。

なぜか身体は軽く、俊敏に動く。


身体が軽い……

全ステータス"#N/A(エラー)ってなんなんだ……?


疑問を抱えつつもすぐそこには、炎に纏われた巨人。

巨大な身体を支える強靭な筋肉でできた脚。

普段なら不可能だと感じる場面でもなぜか心は踊る。

それぐらいにマオのコンディションは良い。

地面を強く蹴り飛ばし、大きく身体を引く。

渾身の一撃をお見舞いする構えだ。

目の前に迫る巨人の脚。

マオのパンチはふくらはぎの側面に直撃。

巨人は脚を抑え、うずくまる。


「よっしゃ!どうだ!!」


確かな感触。

炎の身体は無敵時間のマオには痛くも痒くもない。

巨人の動きは静止する。

駆け寄るカフラとシーカ。


「やったか?」


「かなり痛がってるみたいだけど……」


脚を抑える巨人。

動きは止まったが、


「倒してはないよな……」


思っていた展開とは違うマオは少しの不安に襲われる。

さらに追い打ちをかけるようにアルビオンの象徴が声を出す。


———ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン…ゴォン


計12回の鐘の音。

時計台はいつも通り12時を街に知らせる。

巨人が起き上がる。

アルビオン壊滅のために作り出された巨人に

理性などない。

アルビオンの中心、時計台の方角に歩き出す。

ターゲットを見つけたかのように。

それに気づくシーカ。


「やばいぞ!あの巨人、時計台に向かってる!」


さらに重大な事に気づくマオとカフラ。


「あそこにはこの街(アルビオン)の人たちが……」


「おいおい!俺らで避難させた人たちだぞ!」


それを聞きシーカの顔は分かりやすく青ざめた。


「それはやばいぞ……

一気にみんなが殺されてしまう!!

マオ!無敵時間はあと何分だ!?」


「あと……4分……」


4分。


制限時間の少なさから明らかに苛立つカフラ。


「4分!?やばいぞ!

おい、マオ!!

もっと、一発で倒せるようなスキルは持って無いのか?」


「無いよ!!

俺のスキルは"異名コレクター"なんだ!

異名を集めるしか出来ないんだよ!!」


「まぁまぁ、2人とも落ち着くんだ!

喧嘩してる暇なんてないぞ!」


焦りからか喧嘩が勃発。


「もっとさ、合成したり強化したり出来ねぇーのか?」


「出来ないよ!

カフラじゃ無いんだから……

いや、待てよ……」


カフラの一言である可能性に気づくマオ。

スキル"異名コレクター"はその名の通り異名を集め一時的に行使できるスキル。

しかし、それはあくまで副次的な作用に過ぎない。

本来のスキルの効果は別にあった。

突如、脳裏によぎるスキル。

マオはそれを読み上げるように口ずさむ。


「【異名コレクターその(いち):

|集めし名、形を変えて顕現す《エピテット・フュージョン》】……」


突如、目の前に光輝く物体が出現する。

光の正体は分厚い本。

宙に浮き、マオの動きに合わせ一定の距離を保っている。


「おい!なんなんだ?その本」


突如現れた本に目が奪われるカフラ。

マオは導かれるように本を開くと左頁に2枚のカードが差し込まれている。

そのカードにはそれぞれタロットカードのようなイラストが施されていた。

1枚は盾を構え砦を守る守護者(ガーディアン)のイラスト。

1枚はシルクハットを被り、月に照らされる盗賊のイラスト。


「"|Last Bastionラスト・バスティオン"、"All Taker(オール・テイカー)"……」


それぞれに書かれている文字を見て気がつくマオ。


「これは父ちゃんとノルディさんの……

俺が持っている異名だ……」


そして、右頁には"命名権域ネーミング・ドミニオン"の領域。

左が“収集”ならば、右は“創造”であろう。

マオは今持っている2つのカードを"命名権域ネーミング・ドミニオン"へ写す。

すると、2つのカードは重なり光輝いた。


「な、なんなんだ!!」


そこには一枚のカード。

盗賊のシルクハットに守護者(ガーディアン)の盾を持ったイラスト。

新たに創造されたカードを手に取るマオ。

そこに書かれた新たな異名を読み上げる。


「"|Eternal Stealerエターナル・スティーラー"……」


スキル"異名コレクター"の真の力。

これが、アルビオンを救う最後の希望となる。

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