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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
26/30

第26話「"All Taker"マオ・ノクス」

———ロルドの死から1週間


「すみませーん!

シーカ先生!すみませーん!」


探偵事務所の扉を強く叩く男の姿。


「勝手に入りますよー!いいですね?」


ゆっくりと扉に力を加える。

鍵はかかっておらず、簡単に開いた。

探偵事務所内に電気はついておらず、日光すら遮っている。

部屋の奥にはデスクチェアにもたれかかる小さな獣人。


「シーカ先生!!大丈夫ですか……?」


男の声に反応しないシーカ。

まさに、放心状態。

全く喋らない置物に話しかける男。


「相談があってきたんですけど……

私をシーカ先生の探偵助手にしてください!!」


"助手"という響きに耳が反応する。

言葉通り聞き耳を立てるシーカ。

すかさず、畳み掛ける男。


「伝説の名探偵"ロルド・ウィンソン"が亡くなってから1週間。

アルビオンでは急激に犯罪が多発しています。

この街には探偵が必要なんです!

"シーカ・ホームズ"!名探偵の意思を継ぐあなたが!」


「…………わたしが?」


男の訴えに次第に顔が上がるシーカ。

名探偵だと認めてくれる人がいること。

父、ロルドが0から築いたこの街(アルビオン)を守ること。

その2つがロルドの死を乗り越える原動力となる。

シーカが男に問う。


「君、名前は?」


「えーと、そうですね……

"ジョンソン・ジェームズ"」


男の正体はジョンソン。

またの名を"ノルディ・ウィリアム"


***


ノルディの記憶が脳内に記録される。

長く感じた記憶の旅。

現実では、ほんの一種の出来事であった。

マオを優しく包んでいた光は心臓に収束する。


「ノルディさん……」


マオは心臓に手を置き深く目を瞑る。

ノルディに誓うように。


「マオ……」


涙が溢れ、並べる言葉を見失うシーカ。

マオはそっと頭に手を置く。

「大丈夫」手の温もりがそう告げていた。

マオは、ハラルに歩み寄る。


「"ノルディ・ウィリアム"……

立派な戦士だった……!

決闘のルールに則り、この街は我が"ヴァルハラブレイド"がいただく!!」


「おい!まだ終わってないぞ!

ノルディさんはまだ生きている!

俺の"ここ"にな!」


マオは親指を心臓目掛け突き立てる。


「ほう?面白い……!

お前も意志を継ぐ者であるか……」


「お前を倒して、アルビオンは絶対に俺が守る!俺が相手だ!」


「戦士たるもの、この決闘受けぬは無礼。

いいだろう、かかってこい若き戦士よ!!」


向かい合う両者。

突如、雷が落ちる。

それが、決闘の合図かのように両者は走り出す。

マオはある身体の変化に気づく。


なんだこの感覚。

身体が軽い……

筋肉が滑らかに動く。

勇者と戦闘した時の感覚……


両者の拳が衝突する。

衝撃波が辺りに飛び散る。


「ほう……

なかなかのパワーではないか若き戦士よ。

だが……」


ハラルの腕が徐々に伸び切っていく。

全ステータス#N/A(エラー)のマオ。

なぜか、力負けしてしまう現実に要因を見出せない。


「俺は"|Last Vikingラスト・ヴァイキング"ハラル・シグルス!

今、俺の身体には800もの戦士の意思が宿っている。

だから、敗北は許されないのだ!!」


"ヴァルハラブレイド"800人ものステータスが上乗せされた一撃は徐々にマオを後退させる。


「くそっ!馬鹿力がすぎるだろ!」


ついに、マオの腕が跳ね上がる。

ガラ空きの顔面。

歴戦の戦士はその隙を見逃すわけが無かった。

溜めていた2発目の拳が放たれる。

迫る拳から溢れる殺気。

しかし、マオの表情は場違いにニヤけている。


「【"|解き放たれし神獣の調律ロキ・ドミネイト"】……!」


「ま、まさか……」


スキルを詠唱するマオ。

どこか聞き馴染みのあるスキルにハラルの表情は崩れる。

詠唱と共に動き出す二つの影。

繰り出したハラルの拳に鋼鉄の感触。

目の前には大きな蛇がマオを守るように巻き付いている。

そして、右からの強い衝撃。

ハラルの身体は吹き飛ぶ。


「ありがとう!助かったよ!

フェンリル!ヨルムンガンド!」


「グルャァァァオ!!」


「シャアアア!」


力強い咆哮がアルビオン中を包み込む。

瓦礫を押し除け起き上がるハラル。


「なぜ、お前にフェンリルとヨルムンガンドが……」


「俺は"All Takerオール・テイカー"マオ・ノクス!

今、俺にはノルディさんの意志が宿っている!」


「お前も"異名"持ち……

しかも、ノルディ・ウィリアムと同じ。

まさか……!!」


「あぁ、ノルディの異名は俺に譲渡され、お前から奪ったスキル"解き放たれし神獣の調律ロキ・ドミネイト"は、俺に引き継がれた。

アルビオンはお前には渡さない!!」


「異名の譲渡……聞いたことがない。

ふん!

面白いな!強者との連戦。

戦士としてここまで幸せなことはない……」


ハラルは地面を強く蹴り出す。

マオとの距離が一瞬で潰れる。

腕を大きく引き、慣性と腕力を上乗せしたパンチを繰り出す。

しかし、どこか力が無い。

いくら、ステータスが上がろうと元勇者パーティと戦闘した後だ。

ハラルの疲労はピークに達していた。

身体がいつも以上に軽いマオはパンチをするり躱し、腹部に一発カウンターを打ち込む。


「グハッ……!」


ハラルの身体はくの字に曲がる。

横からフェンリルは爪を立て振り下ろす。

ハラルの腕が切り裂かれ跳ね飛ぶ。

すかさず、絡みつくヨルムンガンド。

ハラルは拘束され身動き一つも取れない。

ハラルの首元に噛み付く。

傷口から中心に肌が黒く濁る。

ヨルムンガンドの猛毒が身体を侵しているのだ。

だらんと力が抜けるハラル。

勝利を確信したのかマオの元に集まる狼と蛇。

拘束が解かれると膝から崩れ落ち地面に倒れ込むハラル。


「なんとも……幸せな時間……

戦士として……ここで死ぬのはもったいない……使うか……あれを……」


ハラルは笑みをこぼしスキルを詠唱する。

たった一度しか使用できないスキルを。


「【ヴァイキングスキルSaga.4(サガ・フォー):尽きた命に再び灯を(フレイヤ・グレイス)】……!!」


詠唱後、神秘的な光がハラルを包み込む。

光の首飾りが浮かび上がる。

ハラルはゆっくり起き上がった。

周りを包み込んでいた光は消え、ハラルの姿がはっきりと視認できる。

その姿は明らかに、詠唱前と変化していた。

フェンリルによって噛み飛ばされた腕は復活。

さらに、傷も癒え汚れもない、全くの新品のような身体になっていた。


「ま、まさか!回復した……」


「あぁ、全回復だ!

戦士としてこんな幸せ、死ぬのは惜しい。

もっと楽しませてくれよ!

"All Taker(オール・テイカー)"マオ・ノクス!!」


振り出しに戻った戦い。

アルビオンを賭けた壮絶な戦闘は第二ラウンドへと移行した。

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