第24話「連続女性殺人事件」
「なんで……」
トスティは命の恩人に擦り寄る。
「無事……だったか……?
トスティ……」
「ノルディ……!!なんで?」
兄の宿敵だと思っていた。
証拠も揃っていない捏造した宿敵。
自身を守る理由が思いつかない。
こちらに向かってくるシーカ。
その表情は見たこともない焦りを含んだ、
子供のような形相であった。
「ノルディ……!!」
シーカが到着。
ノルディを抱きしめ泣きじゃくる。
微かに聞こえる声。
シーカはノルディの口元に耳を近づけた。
「シー……カ……
無事……だったか……?……」
「ノルディ……!まだ、死ぬな!!
お前がいないと私は……!!」
雷神の怒りを真っ向から受け止めたノルディの服は所々焼き切れ、普段はシルクハットの影で隠された素顔が露わになる。
名探偵には必ず怪盗が付きもの。
シーカがノルディを必要としている意味はそれだけでは無かった。
「おい、シーカ!!大丈夫か!?」
声の正体はマオ。
街に放たれた"ヴァルハラブレイド"のヴァイキングたちを制圧し、アルビオンの住人の避難は完了。
見事アルビオン防衛のミッションをやり遂げたマオとカフラがそこにはいた。
「……こ、これは……!」
マオの視界には横たわるノルディ。
しかし、口から出る人物の名前は少し違っていた。
「ジョンソン……さん?
亡くなったはずじゃ……」
そこには、ジョンソンの姿。
しかし、ノルディで間違いない。
マオは状況確認のために辺りを見渡す。
グチャグチャに倒壊している家屋。
巨漢の男に大きな狼と蛇の姿。
そして、ひしゃげたピアノ。
「あのピアノって……」
「そう、我々が初めてあった場所、高級レストランで起きた"シャンデリア落下殺人"の凶器。
犯人、"リテル・スラフ"が弾いていたピアノだ。」
「だ、だよね!
ジョンソンさんが取り込んだ……
まさか、ジョンソンさんってノルディさん!?」
マオとシーカの推理を聞き、ぎこちなく微笑むノルディ。
その表情はトリックがバレたマジシャンのようであった。
声を振り絞る。
「騙していて……ごめんな……
色々と……話すべき……ことがあるが……
ちと……時間がねぇ……これを……」
ノルディは手をなんとかマオの前まで伸ばす。
その、手の中は光り輝いていた。
どこかで見たことある光景。
「マオ……お前が……守ってくれ……
俺の"宝"を……」
マオはその光に触れる。
光はマオを優しく包み込み次第に心臓に収束する。
覚えのない記憶。
そう、ノルディの記憶だ———
***
「この名探偵"シーカ・ホームズ"この挑戦状受けてたとう!!」
「まだ、助手だがな……」
意気揚々と探偵事務所を出ていくシーカ。
その手には挑戦状。
シーカ、初単独捜査の日。
探偵事務所内のデスクチェアには両手の指先を軽く合わせ、やや前傾姿勢に構えるロルド。
思考に没頭する時の決まったポーズである。
「なんだ?また、大が出ないのか?」
後方から聞こえる声。
ロルドはチェアを回転し確認する。
壁にもたれかかった、真っ暗のマントに深くフードを被った男。
「大ではない!私は今忙しいのだ、ノルディ!」
男の正体はノルディ。
「俺の挑戦状届いたか?
さっきポストに入れておいたんだけど」
「あぁ、それならさっきシーカが探しに行ったぞ?」
「はぁ?なんで、シーカ1人なんだよ!
お前宛の挑戦状だぞ?
探偵助手のお子ちゃまに分かるわけないだろ?」
「答えは"時計台"だろ?
それと、シーカはああ見えて鋭い。
1人でなんとかするだろう」
「チッ……
舐められたもんだぜ!」
「それより俺は、この事件で手が離せないのだ!」
「あぁ?なんだそれ」
デスクいっぱいに広がったアルビオンの地図と5枚の写真。
写真には、血だらけの女性の遺体が写っていた。
「最近、アルビオンで多発している"連続女性殺人事件"だ!
すでに5人をも女性が殺害されている。
犯人は未だ不明……」
「よくある殺人事件じゃねぇのか?
ロルドでも犯人が分からないってどういうことだ?」
「凶器は不明。
辺りに目撃者もいない……
これだけの殺人事件なのに、手がかりが一つもないのだ」
「それは確かに謎だな……」
ノルディはデスクに広がった地図を覗き込む。
それぞれ、殺害場所はバラバラ。
続いて、5枚の写真を一枚一枚眺める。
「なぁ、これって死因はなんなんだ?」
「全員刃物のようなもので刺されている。
しかし、切り傷からかなり刃渡りが長いものの可能性が高い」
「ふーん、てことはアルビオンの人ではなさそうだな……」
「あぁ、俺もその線を追っている。
アルビオンはギルドルールで街中での刃物の所持は禁止している。
外部から来る冒険者であっても刃渡が長い刃物を持っていれば、すぐに私に情報が入るはずだ。」
「アルビオン外のやつか……
多すぎて検討もつかないな」
ふと、5枚写真に写る女性の違和感に気づくノルディ。
盗賊特有の視点なのかもしれない。
「なぁ、アクセサリー盗まれてないか?
この女性たち、一人も付けてないぜ?
5人もいたら指輪とかペンダントとか1人はつけてるだろ?」
ロルドはハッと気付いたように写真をノルディから奪う。
「た、確かに……
事件現場にもアクセサリーの残骸が……
あった……!!」
「アクセサリーを盗む理由は金かよっぽど貴重なモノのどちらかだ。
前者はポイント制度になってから全くの無価値だがな!」
「つまり……その貴重なモノを盗むために殺害。
今、貴重なモノといえば……魔法石!!
5つ集めればなんでも願いが叶うと言われている魔法石はギルド間でも奪い合うほどの代物……」
「ポイント制度になったのも、あのバカ勇者が魔法石を使ったからだ!
あの、暗殺ギルド"グルー"も魔法石を集めているって情報もあるしな!
お前が見つけないから先に教えておくと今回、俺が隠したお宝はその魔法石だ!!」
ロルドは目を見開きノルディを見る。
どこか、恐怖と怒りを感じる眼差し。
「おい、今なんて言った?」
「だから、"グルー"も魔法石を……」
「じゃなくて、その後だ!」
「今回、俺が隠したお宝は魔法石って言ったんだ!
"ヒガンバナジェム"!!
今回はお宝の中身をちゃんと確認したんだぜ?
お前が耳にタコができるくらい言うから……」
「おい!まずいぞ!!シーカが危ない!!」
ロルドはコートハンガーからコートを取る。
バックを肩にかけ探偵事務所を勢いよく飛び出した。
追いかけるノルディ。
ロルドの目的地はアルビオンの中心"時計台"。
今回、ノルディがお宝を隠した場所だ!
ロルドとノルディは時計台に到着する。
螺旋状の階段を駆け上がり頂上を目指す。
「おい!ロルド!
いい加減説明しろよ!」
「"連続女性殺人事件"の犯人は、刃渡の長い武器を持ち、アルビオンの誰からも気づかれずに犯行をできる術を持っている。
さらに、魔法石を集めている人物」
「そんなの探せばいくらでも……」
最上階に到着した2人。
そこには、宝箱の前で倒れ込むシーカ。
そして、黒く輝く魔法石を眺める男の姿。
「ま、まじか……」
「ズバリ!"連続女性殺人事件"の犯人はあなただ……勇者ルクス!!」




