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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
19/30

第19話「オーディンvsフェンリル」

「グルャァァァオ!!」


「シャアアア!」


フェンリルとヨルムンガンドの咆哮がアルビオンを包み込む。

動物の言語は分からないが、表情はどこかさっぱりとしていた。

スキルという束縛から解放されように。


「おい!フェンリル!ヨルムンガンド!

俺は"ハラル・ジグルス"だぞ!

お前たちの主人様だ!言うことを聞け!」


「グルャァァァオ!!」


「シャアアア!」


その主人様を威嚇する。

まさに反抗期の子供である。


「おいおい!

とんでもなく嫌われてんだな?あんた!」


「お前、俺に何をした!」


「俺は"All Taker(オール・テイカー)"ノルディ・ウィリアムだ。

お前のスキル"|解き放たれし神獣の調律ロキ・ドミネイト"は俺がいただいた!」


ノルディの異名"All Taker(オールテイカー)"は、触れた相手のスキルを一つ盗むことができる。

しかし、ノルディが視認したスキルに限る。

ハラルのスキル"|解き放たれし神獣の調律ロキ・ドミネイト"を盗んだことにより、"フェンリル"及び"ヨルムンガンド"との契約はノルディに移った。


「"All Taker(オール・テイカー)"……

噂では聞いてはいたが厄介な異名だ……」


「まぁまぁ、さっきまで1対5だったんだ!

これで3対3だ!平等に行こうぜ!」


「ふん!

"フェンリル"も"ヨルムンガンド"も決闘の末、従属契約を結んだのだ。

一度俺に負けたやつなど、何匹いても一緒だ!」


「お前たち、あいつに一回負けたのか?」


フェンリルとヨルムンガンドはあからさまに俯く。

ノルディの笑い声が聞こえる。


「はっはっはっ!

まぁまぁ、今度は俺がいるんだ!

元主人への仕返し協力するぜ!」


ノルディの声で顔を上げる2体の幻獣。

その表情はどこか強気に満ちていた。

頬を擦り寄せるフェンリル。

身体に優しく纏わるヨルムンガンド。

明らかに懐いていることが頷ける。


「よし!行くぞっ!」


ノルディの合図で眼差しは鋭くハラルを睨みつけた。

その目は、獣の狩る本能に身を任せているようであった。

先にフェンリルが駆け出す。

前足を大きく振り、爪を鋭く立てる。

振り下ろす頃にはハラルはすでに構えており、容易く受けられてしまう。

すかさず身体を捌き、横に逸れるフェンリル。

ハラルの視界にはヨルムンガンドの姿。

口から薄汚れた液体を発射する。

ハラルは斧で地面を抉り上げガードする。

薄汚れた液体は地面につくや否や、煙を発する。

表面が溶け出していることから、

それが毒であることが分かる。


「見え見えだ!」


地面を抉り上げた慣性のまま、肘を曲げ背中まで斧を持ち上げる。


—ゴォーン!!


斧に衝撃が走る。

ハラルの後方にはノルディの姿。

スキル"影路を歩む者(シャドウ・ウォーカー)"により、影を伝い後方に回り込んでいたのだ。

後方からの奇襲として放った蹴りは、いとも簡単に受けられてしまった。


「イッテェー!!」


ノルディは足を抑え、飛び跳ねる。

その痛がり様から、まだ余裕を残していることが伺える。

再度影を伝い、幻獣の元へ合流する。


「なんでだ?ジャストタイミングだったろ?

俺の不意打ちがバレるなんていつぶりだ?

勇者以来か?」


「それで終わりか?

"All Taker(オールテイカー)"!!

もっと楽しませてくれよ!」


ハラルは意気揚々と斧を担ぎ上げる。


「カァー!カァー!」


上空には2羽のカラスが円をかくように飛んでいる。

命のやり取りに集中していたのか、初めてカラスの声を鼓膜が捉える。


「あの鳥…………」


ノルディは思考を巡らせる。

ハラルのスキル"|空を翔ける眼は未来を視る《オーディン・レイヴン》"より出現したカラスはこれといった行動はまだしていない。

ただ、上空を飛んでいるだけ。

この、戦闘を眺めているかのように。


「……なるほど。そう言うことか……」


ノルディは何かを閃いた。

それを共有する様にフェンリルに耳打ちする。

幻獣に言葉が通じるかは不明だが、頷く様子から理解したのだろう。

少しの戦闘の空白に明らかな苛立ちを見せるハラル。


「何をぶつぶつ言っているのだ!

まだ、俺との勝負は終わってないぞ!」


迫り来るハラル。

作戦会議を終え、ノルディはスキルを詠唱する。


「ったく……せっかちな野郎だな……

【ファントムスタースキルHeist.1(ハイスト・ワン):|影に堕ちて、すべてを穿つ《ダークシェイド》】!!」


突如、地面に寝ていたはずのノルディの影が立ち上がる。

その影は身体を飲み込み、鎧と化す。

主に影を操るノルディの奥義だ。

自身すらも影になることでありとあらゆる影の操作が可能になる。

その一つとして、ノルディが人差し指を天に向ける。

すると、ハラルの影が空目掛けて突き上がる。


「な、なんだこれは!」


影は螺旋に広がり天高く、聳え立つ。

ハラルは歩みを止め、得体の知れない物体に距離を取る。

さらに、ノルディは腕を大きく広げ、胸の中心で腕を交差するように絞める。

すると、ハラルの左右を位置取る建物の影が迫ってくる。

まるで影に圧殺される勢いであった。

ハラルはローリングで躱わす。


「影を操作しているのか?」


ハラルはスキル内容を理解する。

単純にして厄介。

ノルディは攻撃の手を止めない。

腕を大きく後ろに引き、力強く前へ突き出す。

すると、ノルディ後方の影がハラルに迫る。

無数の針の様に鋭利な影。

当たれば串刺しは免れない。

ハラルは華麗な斧捌きでその場を凌ぐ。

突如、背中からの衝撃。

腹部から鋭利な影が突き出ており、そこから鮮血の赤が流れ出る。


「なぜだ……見えなかった……グッ……」


影が突き刺さっていたのだ。

その影はハラル後方から伸びている。


「やっぱりな!俺の推理通り!

なぜ見えなくなったか分かるか?」


ノルディは上を指差す。 

状況を理解したのか、ハラルは空を見上げる。


「いない……お前まさか……!」


「あぁ、そのまさかだよ!」


ノルディの隣のフェンリルに視線を向ける。

口からは血が垂れている。

ダメージを受けているような様子ではない。


「あの鳥が俺の数々の不意打ちを読めた理由だよな!」


いなくなったカラスはフェンリルによって駆除されていた。


「でも、どうやって……

あんな上空……フェンリルでも届かないはず……」


「あぁ、だから足場が必要だった……

天まで届くな!」


ハラルはノルディの攻撃の意図を理解した。

ハラルの影から生えでた螺旋に広がり天高く、聳え立つ影はカラス駆除のための足場。

左右と正面からの影攻撃はブラフ。

フェンリルのカラス駆除がバレないための。

腹部を貫いていた影は消え、ハラルは力無く膝から崩れ落ちる。

腹部には大きな穴が空いていた。


「これで勝負ついたろ?

さっさと降参して海に引き返せ。

俺は盗賊だが、命までは盗ったひはしねぇーよ」


「ふん!

ヴァイキングの世界じゃ情けは無用。

命の炎が燃え尽きるまでが勝負!

最後まで戦い抜く……」


ハラルは斧を使い立ち上がる。

そして、静かに詠唱を始める。


「【ヴァイキングスキルSaga.2(サガ・ツー):|雷神の怒り、その身に宿す《トール・ボルト》】」


満月を暗く濁った雲が覆い尽くす。

次第に雨が降り注ぎ、雷が鳴り響く。


「天候が変わった……」


ハラルに巨大な雷が落ちる。

バチバチと雷が地面を伝う。

あまりの眩しさに目を細めた。

大きく振りかぶった斧が高速に迫りくる。

まさに疾風迅雷の如く。

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