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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
18/31

第18話「All Taker」

———ノルディvsハラル


「おっと!あっぶねぇー!馬鹿力だなあんた!」


「ふん!当たり前だ!

俺は"|Last Vikingラストヴァイキングハラル・シグルス"だからな!」


ハラルはノルディ目掛けて斧を振り下ろす。

躊躇のない斧捌きから歴戦の戦士であることはわかる。

ノルディは様子を見るように、華麗にかわす。

共に強者が故、力量は初動で感じ取れてしまう。

両者、油断できないと判断したのか表情が固くなる。


「さすが、かの有名な"ヴァルハラブレイド"のギルド長……

しかも、"異名"まで……

なかなか、盗み甲斐がありそうじゃねぇーか!」


「お前こそ、なかなかの体捌きだ……

さすが、元勇者パーティといったところか!

"All Taker(オール・テイカー)ノルディ・ウィリアム"!

あの、魔王を倒した者と一戦交えれるんだ。

ヴァイキングの戦士として、これ以上の幸福はない……!」


「チッ……!

そんな昔のことはいいんだ!

いいから、さっさと降参して海にでも帰るんだな!」


「ヴァイキングの戦士に降参という言葉は存在しない!

【ヴァイキングスキルSaga.5(サガ・ファイブ):|解き放たれし神獣の調律ロキ・ドミネイト】」


ハラルはスキルを詠唱する。

すると、ハラルの横から二つの五芒星が浮かび上がる。


「おいおい!こんなのありかよ……」


五芒星が光り輝き、2つの大きな影が姿を現す。

一つは、四足歩行で狼を彷彿とさせる姿形。

毛は風のようにしなやかに流れ、透き通るような白は幻獣のような神々しささえ感じる。

畏怖をも恐れぬその出立ちは、どこか儚ささえ感じる。

二つは、蛇のように長く波のように流れる胴体。

皮膚は岩の表面のように固く、きめ細やかな鱗を纏っている。

漆黒に彩られた身体には憎しみの文字が似合う。


「どうだ、これが歴戦の戦士にしか扱えない幻獣。

その名も"フェンリル"と"ヨルムンガンド"!!」


「はんっ!

3対1は少しばかり俺が可哀想じゃないか?

まぁ、それでも俺には到底敵わんがな!」


「それはどうかな!!

行け!"フェンリル"!!

"ヨルムンガンド"!!」


ハラルの合図でノルディに迫る。

はじめに仕掛けたのはフェンリル。

口を大きく開け、鋭い牙を突き立てる。

牙は一本一本が鋭利な刃物のよう。

一度噛まれれば致命傷になりうる。

ノルディは上体を大きく逸らし、躱わす。


「ふぅー、あっぶねぇ!!」


続けてヨルムンガンドが身体を巻き付ける。

見事なコンビネーションにまんまと拘束されるノルディ。

そこに、ハラルが斧を大きく振る。

当たれば即死。

ハラルの斧がノルディの首元まで迫ったその瞬間、ノルディはスキルを詠唱する。


「【ファントムスタースキルHeist.3(ハイスト・スリー):影路を歩む者(シャドウ・ウォーカー)】」


その瞬間、ノルディの身体は液体のように地面に溢れ落ち影に吸収される。

ハラルの斧は空を切った。


「消えた……?」


辺りを見渡しノルディを捜索する。

突如、後方から声が聞こえる。


「やっぱり、3対1は少し疲れるな……

俺は出来るだけ楽に仕事をこなしたいんだが!」


振り向くとそこにはノルディの姿。

先ほどまでヨルムンガンドに拘束されていたはず。

あまりの一瞬の出来事にとりあえず距離を取るハラル。


「お前、どうやって……」


「俺は盗賊だぜ?

捕まえられるのはめっぽう嫌いなんだ。

拘束から抜け出す術なら誰よりも知っている」


「さすがだ……

ならば、これで!

【ヴァイキングスキルSaga.3(サガ・スリー):|空を翔ける眼は未来を視る《オーディン・レイヴン》】!!」


ハラルはスキルを唱えると再度2つの五芒星が浮かび上がる。

そこから二羽のカラスが放出された。

カラスは空に飛び立ち上空をぐるぐると回っている。


「おいおい、動物だらけじゃねぇーか!

これじゃ5対1だぜ……

あんまり、時間はかけれなそうだな……」


ノルディは再び影に入る。

静かにハラルの影から飛び出る。

身体を大きく捻り、蹴りを放つ。

しかし、いとも簡単に受け止められる。

再度、影に入り次は家屋の影から姿を出す。

壁を蹴り、パンチを繰り出すが不発。

今度こそはとハラルの後方から蹴りを放つが受け止められ、渾身のカウンターを喰らってしまう。

ノルディの身体は吹き飛び、地面を擦りながら衝撃を殺す。


「……ってぇ!なんで、俺の場所がわかんだよ!」


「ふん!攻撃が単調だからじゃないか?」


「ウルセェー!何かのスキルの効果だろ!」


「さぁ、どうかなっ!」


ハラルは斧を振り上げノルディに迫る。

後方からはフェンリルが牙を向く。

ノルディは地面を強く蹴り高くジャンプして躱わす。

それを見越したかのようにハラルが斧を振りかざす。

空中では身動きが取れない。

しかし、ノルディは違う。

影さえあれば、どのような動きでも可能である。

斧が作り出した影に瞬時に入り込んだ。


「危ねぇー!久しぶりに死んだかと思ったぜ!

こんなに俺の動きが読まれるのも初めてだ……」


ノルディは家屋の屋根の上に立っていた。

影を伝って移動したのだ。


「逃げてばっかりじゃないか、"ノルディ・ウィリアム"!

正々堂々と勝負しようじゃないか!」


「ウルセェ!

俺は念入りに下準備をする派なんだ!

まぁ、おかげで大体お前のスキルは分かった……

ここからが俺のショータイムだ……」


「ああ?なんだって……?」


ノルディは影を伝いハラルの後方に出現する。

あまりの速さに視線が追いつかない。

ノルディの声だけは耳で捉えることができた。


「頂くぞ!!」


ノルディはハラルの身体に触れていた。

急激な脱力感がハラルを襲う。


「おい、お前何をし……」


振り返るとそこにはノルディの姿はない。

あるのは、今まさに噛みつこうとするフェンリルの姿。

そして、身体を一周するヨルムンガンド。


「お前たち!なぜ、俺を!!くそっ!」


ハラルは斧を地面に突き立て、ヨルムンガンドを躱わす。

その慣性を使いフェンリルを飛び越える。

地面に着地し、距離を取るハラル。

視線の先にはフェンリルとヨルムンガンドの間に立つノルディの姿。


「お前、俺に何をした……!」


「簡単なことさ……

たった今お前は盗まれたんだよ!

この"All Taker(オール・テイカー)ノルディ・ウィリアム"によってな!」

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