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勇者を殺してください。  作者: コウタロス
アルビオン編
17/30

第17話「トスティの復讐」

「シーカ……ここは……」


「そう、時計台……

ズバリっ!怪盗シャドウはここにいる……!」


目の前には高く聳え立つ時計台。

この街で1番背が高く、街の中央に位置していることからシンボルであることは分かる。

シーカが先導しマオたちは時計台に入り、最上階を目指した。


「はぁ……はぁ……まだ、続くの?

これでいなかったら戻るのも一苦労だよ……」


「俺はこのくらい全然平気だけどな?

おい、そんな体力でよくローランってやつを倒せたな!」


「あれは、シーカがスキルでバフをかけてくれたんだよ!

なぁ、シーカもう一度俺にスキル使ってよぉ!」


「私のスキル"|三理合わさりて真理となる《クルード》"は、殺人事件が起こらないと発動できないのだ!

弱音吐いてないで、あと少しだから頑張るのだ!」


共通の敵を倒したことによりマオたちの絆は徐々に深まっていった。

久しぶりの友達という感覚にマオの素が少しづつ顔を出す。

約10分ほどかけて、螺旋状の階段を登り切った。


「ここは……」


「でっけぇー、鐘だな!」


最上階には、大きな鐘があり1時間に時間数分鐘がなるように設計された歯車で満たされていた。

奥には一つの扉。


「あの扉の向こうに怪盗シャドウがいる!」


「扉の先はどうなっているんだ……」


「まぁ、開けてからのお楽しみだ……!」


シーカは力強く扉を開ける。

扉が開いたそばから光が目に差し込む。

次第に目が慣れてくる。

視界には満点の星空、いつもより月が近く感じる。

マオのマントは風でなびく。


「綺麗な満月だな……」


あまりの絶景に気を取られるマオ。

ふと、視界の下に暗い影があることに気づく。


「おやおや、よくここが分かったね小さな探偵さん……」


そこには、塀に腰掛ける男性の姿。

スーツ姿に、黒のシルクハット。

膝下までかかる黒のマントを身に纏っている。


「怪盗シャドウ……!」


「この人があの、怪盗シャドウなのか?」


月の光によって作られた影で顔がよく見えない。


「ご名答……!私は怪盗シャドウ。

今宵はこのローズジェムをいただきに参上した!」


怪盗シャドウはローズジェムを月にかざす。

月の光によってローズジェムはより一層、赤色に光り輝く。


「怪盗シャドウ……あんたの目的はなんなのだ?

なぜ、"ノルディ・ウィリアム"のお宝を盗むのだ?」


シーカは問う。


「ふん……"ノルディ・ウィリアム"のお宝ね……

何か知っているような口ぶりだな、小さな探偵さん?

私はただ、自分の責任を全うしているだけ……

この、ローズジェムは誰にも渡してはならない」


「自分の責任……それってどういう……」


———ドーーン!!!


突如、街の方から爆発音が聞こえる。


「おい!なんなんだ?」


「爆発!?」


マオとカフラは塀から身体を乗り出し、街を確認する。

真っ赤に燃える火。

そこから、湧き上がる煙。

間違いなくアルビオンに危機が迫っていることは分かった。


「おい!嘘だろ!」


怪盗シャドウは塀を乗り越え爆発音がする現場まで飛び降りる。

流石に、この高さからは飛び降りたらタダでは済まない。

しかし、怪盗シャドウは重力を感じさせないほどゆっくりと着地した。


「一体何が起こったのだ!?」


「事故ってわけでもなさそうだな……」


「俺らも行くぞ!」


マオたちは飛び降りる事はなく、時計台の階段を駆け下り現場へ急いだ。


———

塩っ気を含んだ空気が漂う。

ここは、アルビオンの港。

火が家屋を容赦なく奪っていく。

辺りの惨状から爆発箇所はここであるとすぐ分かった。

そこには、怪盗シャドウの姿。


「おい、盛大なお出ましじゃねぇーか。

他所のギルドにお邪魔する時はもっと謙虚に来たらどうだ?」


怪盗シャドウの目線の先には2mはある巨漢の姿。

ツノ付きヘルメットに獣の皮で作られた上着。

背中には大きな斧を携えている。

その姿はまさしくヴァイキング。


「あん?お前は誰だ?

この街は今日から俺たち"ヴァルハラブレイド"の物となるのだ!」


マオたちは突然の出来事に理解が追いつかない。


「"ヴァルハラブレイド"てなに?」


「"ヴァルハラブレイド"は船で世界中のお宝を探している海賊ギルドだ!」


「なんで、今アルビオンに……」


カフラはギルドに詳しい。

それは何故だかわからないが今は問い詰める時間はない。

怪盗シャドウの口論は続いていた。


「はぁ?何を言ってるんだ?

"アルビオン"は"ゴールデンゴースト"が運営している!

お前たちにあげた覚えはねぇーよ!」


すると、巨漢の後ろから見慣れた姿が登場する。


「ここは、"シルバーストリート"の街だ!

兄貴を殺して奪ったやつが何を言っている!」


男の正体は頭がブロッコリーのように爆発したトスティである。

突然のトスティの登場に驚きを隠せないシーカ。


「トスティ……さん……?なんで……」


対象的に、さも当然のように理解をする怪盗シャドウ。


「おい、トスティ……お前の仕業か。

これがどういうことか分かってるのか?」


怪盗シャドウは拳を握り締める。

表情は見えないが怒りを含んだオーラを感じ取る。

トスティはニヤリと笑う。


「あぁ、これは復讐だ!

兄貴を殺したお前から何もかも奪うためのな!」


その言葉が合図だったのか"ヴァルハラブレイド"の下っ端共が声を荒げ街に駆ける。

その数は数百、数千人。

街のあちこちで爆発音が響き渡る。

人々のざわめき、赤子の泣き声が街全体を包み込む。

下っ端共が好き勝手に暴れているのだろう。


「ここは、お前の兄"ロルド"がイチから築いた街なんだぞ!!

分かってんのか!?」


「うるさい!!

お前が兄貴を語るな!!」


トスティの叫び声が街に響き渡った。

その声色から、いかに憎しみを抱いているかが窺える。

巨漢は愛想を尽かし問う。


「喧嘩の途中で悪いが……

変な格好をしているお前がこの街を仕切っている"ゴールデンゴースト"のギルド長で間違いないのか?」


巨漢は怪盗シャドウを指差す。

"怪盗シャドウ"と"ノルディ・ウィリアム"が同一人物であることを巨漢の質問によって判明する。


「あぁ、俺が"ゴールデンゴースト"のギルド長"ノルディ・ウィリアム"だ。

俺の街で好き勝手暴れるのはやめていただきたい。」


やはり、シーカの推理通り。

ロルド殺害事件の真相を聞きたいが今はそれどころでは無い。

続けて口を開く、ノルディ。


「【ファントムスタースキルHeist.5(ハイスト・ファイブ):影法師乱舞(シャドウ・ダンサー)】!!」


ノルディは指をパチンっと鳴らす。

すると、影からもう1人、また1人とノルディが現れる。

合計4人のノルディが影から誕生する。

それぞれ街へ駆けていく。

影の1人がマオたちに迫る。


「君たち、このままだと街は跡形もなくやつらに壊される。

ここは、俺の大事な街なんだ……協力してくれないか?」


「当たり前だ!

この街には美味い飯を食わせてもらったしな!

絶対に壊させない!」


カフラは容易く引き受ける。

まぁ、そうなるだろうなとマオは意思を決める。


「あぁ、いこう!この街を守ろう!」


「ありがとう君たち!!」


マオたちはノルディの影と共に街を駆けていく。

巨漢が斧を手に持つ。


「俺たち"ヴァルハラブレイド"に盾つくってんならそれなりの覚悟はできているんだろうな?」


「あぁ、お前らこそ盗賊から盗むってんなら

それなりの覚悟あるんだろうな?」


「ふん!俺を誰だと思っている?

"|Last Vikingラストヴァイキングのハラル・シグルス"だぞ!

俺に奪えなかったものはねぇ!

力づくで奪ってやるよ、そのお高い自信もな!!」


ハラルは斧を振り上げノルディに迫る。

アルビオンの命運を分けた戦闘がついに開幕した。

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