第16話「冤罪からの憎しみ」
———カフラvsアレク
「少し大人気ないが……
生憎、俺は殺すのが仕事なのでな……!!
俺に喧嘩を売ったこと死んで後悔しろよ!
若造!!」
壁を背に逃げ場がないカフラを、十字の真空の刃が迫る。
しかし、状況にそぐわずカフラはニヤリと口角をあげ床に手を置く。
その手には五芒星が浮かび上がる。
「【錬成術formula5:|姿は変われど、理は変わらず《メタモルフォーゼ》】……!!」
カフラはスキルを詠唱すると床から壁が何重にも生成される。
「悪あがきはよせ!
大人しく俺の"真空の刃"に切り刻まれろ!
一瞬で楽にしてやるからな!はっはっは!」
アレクの高笑いが部屋中に響く。
十字に放たれた真空の刃が生成した壁を切り裂く。
何層にも連なる壁は一層ずつ4分割に崩れ落ちる。
とうとう最後の一枚が崩れ落ち、カフラの姿が露になる。
手には金属で作られた見窄らしい剣を持っている。
「とうとう諦めたか小僧!!
切り裂かれて死ねぇ!!」
カフラは剣を真空の刃に振り下ろす。
—カキンッ!!
金属音が鳴り響くと真空の刃は消え去り無害な空気と化す。
カフラはそのまま前進し剣を横に大きく振る。
「俺の真空……グハッ!!」
カフラの剣がアレクの横腹に炸裂する。
アレクの身体は、くの字に曲がり吹き飛んだ。
カフラは剣を眺める。
「ふぅー……危なかった……
さすが俺の打った剣だ!
超頑丈だぜ!!」
アレクは横腹を抑え起き上がる。
「イッテェー!!
なんだその剣!!よく見りゃ、形もボコボコで切れ味もねぇじゃねぇか!」
「あぁ、この剣はな、俺が打った剣なんだ!
打ちすぎて硬くなっちまった!」
「ただの金属の塊じゃねぇーか!!」
「ただの金属じゃねぇよ!!
これはな、俺が初めて打った剣なんだ!
初めて親父に教わった時の大事な一本なんだよ!」
「うるせぇ!そんなことどうでもいいんだよ!
肋が何本がいかれちまったぜ……
くそっ!絶対に殺してやる……」
アレクは再び空中に浮かぶ。
「もう手加減は無しだ小僧……
今度は完璧に殺してやる……!」
腕をムチのように弾く。
何度も見慣れた真空の刃を放つ構えである。
しかし、以前ほど腕にスピードは無く、不発に終わる。
「くそっ!
ローランのスキルが切れちまった!」
アレクの放つ真空の刃は、ローランのスキル"軽きは重きを制す"が無くては不可能。
アレクはローランの方へ目をやる。
「おい、ローラン!もう一度……」
そこには、四方八方からマオの攻撃を受けるローランの姿。
「ローラン!?」
「おい!よそ見してんじゃねぇーよっ……!!」
カフラは剣を投げる。
その剣はアレクの足元に向かっていた。
「どこに投げてんだよ!
若造が……っ!?」
アレクはスキル"空を掴めば地は要らぬ"によって足元に超高圧の空気層を作り出す。
それにより身体を空中に浮かしている。
カフラの投げた剣は足元の超高圧の空気層に突っ込むと剣先は上を向いた。
そして、圧力の流れに乗りアレクを下から突き刺すように発射される。
「あっぶねぇ……」
剣はアレクの頬を切り裂き、そこから一筋の血が流れる。
剣は天井に突き刺さる。
すかさず、カフラはローズジェムが展示されていたガラスケースに触れる。
「こいつでどうだ!!」
カフラは飛び上がりアレク目掛けてパンチを繰り出す。
手には、ガラスのグローブ。
ローズジェムが展示されていたショーケースから生成したのだ。
咄嗟に手で受けるアレク。
衝撃でガラスのグローブは砕ける。
「……クッ!……イテェー!!!」
アレクの手は真空を纏っている。
真空に流れ込む空気に乗って砕けたガラス片が
手をズタズタに切り裂く。
手からは血が流れ出る。
あまりの痛さに手を抑え前屈みになるアレク。
カフラは飛び上がった勢いで天井に突き刺さった剣を握りしめる。
「そんなに痛いか?頭がガラ空きだぞ!」
カフラは剣を握り締めた手を中心に身体を捻りアレクの顔面を蹴り飛ばす。
「グフッ……!!」
アレクは壁に激突し、気を失う。
カフラは地面に着地して剣を背中の鞘にしまった。
「カフラ……!!
大丈夫!?その手!?」
マオとシーカは戦闘が終わりカフラに駆け寄る。
ガラスのグローブで殴ったため、カフラの手は血だらけになっていた。
「あぁ、大丈夫だ!
こんくらいなんともない!
マオとシーカは終わったのか?」
「こっちもバッチリ終わったのだ!」
シーカは自信満々に答える。
激しい戦闘により部屋は廃墟のようにボロボロになっていた。
比較的綺麗な部屋の隅にはうずくまり頭を守るトスティの姿。
シーカはそれを見つけると近寄る。
「トスティさん……」
「あぁ、シーカちゃん……
戦いは終わったかな?」
「トスティさん……
アレクとローランが言ってたことは本当?
ジョンソンくんを殺す代わりに宝石を渡すって……」
トスティは俯く。
数秒の空白を開け、口を開いた。
「君に嘘はつけないよな……
そうだ、私が"グルー"と交渉した。
間違いない……」
「な、なんで!!
なんでジョンソンくんを……」
トスティは顔をあげた。
その目は水を含み潤っている。
「"ジョンソン・ジェームス"は、
俺の兄貴を殺した"ノルディ・ウィリアム"だからだよ!」
「え……」
シーカは硬直する。
「私は見たんだ……
探偵事務所から出てくる"ジョンソン・ジェームス"が"ノルディ・ウィリアム"に変わる瞬間を……」
「ジョンソンくんは私の助手だ!
そんなことはあり得ない……!」
「ノルディは私たちを監視していたんだよ!
兄貴を殺してアルビオンを支配したことに、
私たち"シルバーストリート"の意思を持った者が反逆を起こさないために!」
「違う!ノルディはロルドを殺していない!!」
「その証拠はあるのか?
シーカちゃんも見ただろ!血だらけのロルドとノルディの姿を!!」
食い違う意見に話が進まない。
そこで新たな角度で話を進める男が口を開く。
「じゃあ、直接そのノルディって奴に聞けばいいじゃないか」
もちろん、男の正体は純粋な男カフラである。
「ノルディは神出鬼没……
私も数回しか見たことが無いんだ……」
シーカはそうしたい気持ちは山々だが、ノルディの居場所が分からず俯く。
マオは何か閃いたようにシーカに問う。
「それなら、怪盗シャドウに聞けばいいんじゃない?
怪盗シャドウとノルディが同一人物かもしれないんでしょ?」
「怪盗シャドウ……っ!?」
シーカは思い出したかのように突然走り出す。
追いかけるマオたち。
「おい!どこ行くんだ!シーカ!」
「分かるかもしれない!
怪盗シャドウ……いや、ノルディの居場所!!」
シーカはある場所へ目掛けて走り出した。
思い出深いあの場所に……




