第11話「同一人物」
ロルドとシーカが出会ってから約5年。
シーカはロルドに憧れ探偵を目指していた。
「ロルド見てこれ!」
「なんだ、シーカ……
私は今"連続殺人事件"の調査で手が離せないのだが……」
「これ!
"ノルディ・ウィリアム"からの挑戦状!」
「あいつ、こんな時に……
なんて書いてあった?」
「えーと……
"語らぬ番人は、時と共に饒舌になる。
一度、また一度と声を重ね、
頂に至る頃には最も賑やかだ。
——その頂に、我が宝は眠る。
ノルディ・ウィリアム"
だって……」
「ふーん、なるほどな…………
その挑戦状、シーカに任せてもいいか?」
「え、いいのか!!やった!
"ノルディ・ウィリアム"、この名探偵"シーカ・ホームズ"この挑戦状受けてたとう」
「まだ、助手だがな……」
シーカは意気揚々と探偵事務所を出る。
「初の単独捜査だ!
えーと……まずは……?」
シーカは再度カードを確認する。
「"語らぬ番人は時と共に饒舌になる"……
喋らぬ番人……無口な警備のことか?
あっ、"ブリッシュミュージアム"の警備員!
とりあえず行ってみよう!」
シーカは"ブリッシュミュージアム"に向かった。
到着すると入り口の警備室で聞き込みをする。
「すみませーん!名探偵シーカです!
お話を聞きに来ました!」
シーカはなんとか手を伸ばし警備室のガラス窓をノックする。
すると中から、警備員が身を乗り出した。
「おぉ、どうしたんだ?
確か、ロルドさんの助手さんだよな!」
「そうです!シーカです!
ここに無口な警備員っていますか?」
「無口な……?
いや、みんな割とうるさい野郎だしな……」
「やあ、やあ!シーカちゃん!」
突如、後方から声をかけられる。
「あ、トスティさん!!」
そこには、中肉中背で頭はブロッコリーのように爆発している男性の姿。
声の正体はこの男、トスティであった。
「どうしたんだい?こんなところで……」
「ちょうど捜査をしていて、"無口な番人"を探していて……」
「"無口な番人"……?
ウチの警備員はみんなうるさい野郎でね、無口な人は見たことがないな……」
「そ、そうなのか……」
「それはそうと今日は兄貴と一緒じゃないのかい?」
「ロルドは今、別の事件で手が離せないんだ……」
「あぁ、最近話題の"女性連続殺人事件"だよね。
兄貴でもまだ犯人が分からないのか……
シーカちゃんも気をつけて捜査するんだよ!」
「うん!気をつけるのだ!
捜査協力ありがとうございます!」
シーカは敬礼をして"ブリッシュミュージアム"を後にする。
そんなシーカをトスティは微笑み、
敬礼を返し見送った。
トスティは地面に落ちているカードを拾げる。
「なんだこれ"ノルディ・ウィリアム"……
挑戦状か!?」
———
シーカは何も手掛かりが見つからずに川沿いのベンチで座り込む。
ただ、川を眺めアイデアが降ってくるのを願っていた。
「"語らぬ番人は、時と共に饒舌になる。
一度、また一度と声を重ね、
頂に至る頃には最も賑やかだ。
——その頂に、我が宝は眠る。
ノルディ・ウィリアム"……
難しいよ!ノルディ!!何にも分かんない……」
——ゴォン……ゴォン……
"アルビオン"を象徴する時計台から鐘の音が響き渡る。
「鐘の音……もうこんな時間か……
早く、お宝を見つけなければ……
いや、待てよ……」
シーカは鐘の音になにか閃いた。
脳内を整理するようにパイプを取り出す。
パイプを咥えシャボン玉をふかす。
「"語らぬ番人"は人ではなくモノ……
"時と共に饒舌になる。"は時間が経てば音が鳴る……
……!?……時計台!!」
シーカはベンチを飛び降り"アルビオン"の中心地にある時計台へ向かった。
「"語らぬ番人は、時と共に饒舌になる"……
1時間に一度、鐘がなる時計台。
時計台の鐘は1時なら1回、2時なら2回と時間ごとに鐘の音が増える。
"頂に至る頃には最も賑やかだ"……
つまり、12時になると最大数の鐘の音が鳴る。
"その頂に、我が宝は眠る。"……
ズバリ!時計台の頂上にお宝がある!」
時計台に到着すると中に入り螺旋状の階段を駆け上がる。
時計台の頂上に到着するとそこには金で作られた宝箱があった。
「あった!!」
シーカは宝箱を開け中身を確認する。
そこには、思わず意識が引き込まれそうな漆黒の宝石が入っていた。
「これがお宝……なんて綺麗な……
あれ、眠くなってきた……なんで……意識が……」
突然、シーカは意識を失ったように地面に倒れ込んだ。
———
「おい!ロルド!
しっかりしろよ!ロルド・ウィンソン!!」
耳をつんざく男の声。
「あれ……私……眠って……」
シーカは意識朦朧とし、光を頼りに身体を起こす。
頭の中が徐々に情報で満たされていく。
「ロルド!ロルド!!」
シーカの視界は見慣れた赤黒い液体と力なく揺らされる大きな物体がぼんやりと見ていた。
どことなく見慣れた物体に脳が思考を始める。
視界は徐々にクリアになり、地面いっぱいに流れている赤黒い液体が血であることを脳が理解した。
その瞬間、全身に鳥肌が走り身体が硬直する。
筋肉が石のように硬くなり動かない。
心臓の鼓動が速くなる。
「ロルド……」
シーカの脳は優秀である。
それ故に、脳は情報過多に耐えられてしまう。
「ロルドが死んだ……」
気絶もできずにただ、その真実を受け止めざるを得なかった。
「ロルド!起きろって!なぁ……!こんなんで死ぬ男じゃねぇーだろ……」
声の正体は"ノルディ・ウィリアム"
黒いフードで表情は見えないが声色から
絶望していることは分かった。
「"ノルディ・ウィリアム"……
これはどう言う……」
「あ……シーカ!!
ロ、ロルドのやつ、事件の真相を……」
「はぁ……はぁ、おい、これって……」
シーカは声の方向を振り返る。
そこにはトスティの姿があった。
その手には"ノルディの挑戦状"。
「おい……、"ノルディ・ウィリアム"……
おまえこれが狙いで……」
「違う!俺はロルドと一緒に……」
「だから、この挑戦状を渡したんだろ!
兄貴をここに誘い出すために!!」
トスティは怒りで挑戦状をクシャクシャに握り潰す。
ノルディはゆっくりと立ち上がる。
「ち、違う!俺は、俺じゃなくて……!!」
「お前以外に誰がいるんだ!!」
「くそっ……!」
ノルディは時計台の塀を登り時計台から飛び降りる。
「おい!逃すか!
くそっ!ノルディィィィー!!」
トスティは塀に駆け寄り、ノルディを探す。
しかしそこにはノルディの姿はなかった。
———
「なるほど……辛い思いをしたね……
でも、なんでシーカは眠ってしまったの?」
マオはシーカの過去話を聞き疑問点を質問する。
「それが分からないのだ……
しかし、何者かによって眠らされたことは間違いないだろう」
「眠らされた……?」
「不自然なほどの眠気……あれは、スキルか魔法以外あり得ない。
私は獣人族の中でも生まれつき鼻が効く種族で魔力の匂いを感じ取ることができる。
その時に魔力の匂いは感じられなかった……」
「つまり、スキルで眠らされた……?」
「あぁ、おそらくな……」
マオはシーカの表情を心配に思い、
元気づけるように肩に手を置く。
「もし、"怪盗シャドウ"が
その"ノルディ・ウィリアム"だったら犯人がわかるかもしれない!」
「あぁ、そうだな……!」
「シーカのためにも俺頑張るよ!!」
「マオ……
ありがとう!!明日はよろしく頼む!」
「うん!任せて!」
マオは笑顔を作りシーカに元気を与える。
それに釣られたようにシーカは笑顔になった。




