始まり
「国語辞典よ!これはあらゆる言葉を調べられるの!」
『凄い!そんなものがあるんだね。知らなかった!ありがとう。大切にする!!』
皆で笑った。幸せだ。あの日々が嘘みたいで……
学校での生活も変わった。
「うわあ!意鈴ちゃん、100点しかない!!」
「お勉強教えて!」
『いいよ。家に来て!』
楽しい。もういじめられなくなった。成績は向上し、皆にちやほやされて。
「おでかけいこー!」
「意鈴ちゃんセンスいいもんねー!!」
『いいよ!』
可愛いって、たくさん言われて。
いつも、1人だなんてことが無い。
毎日遊んで、大好きな勉強もして、テストの成績も好調で……
本当に楽しい。
「意鈴、あの中学校は凄いのよ!」
『その中学校、行ってみたい。』
「え?!うーん……結構勉強しないと……。あとお金もかかるわ……。」
「……。」
その年のクリスマスにはパソコンを買ってもらい、その学校のことを調べた。
勉強を頑張ったら……入れるかなぁ?
制服も可愛いし、凄い人たちがこの学校に入っている。
でも。
今まで信じてもらえなくて。中学に行って、この状態が続かなかったら……もしかしたら、成績も落ちてしまうかもしれない。
いろいろな考えが巡って、考えがまとまった。
『僕、絶対あの学校行く。』
「……意鈴が頑張るって言うなら……ねぇ。お父さん?」
「いいよ。そのかわり、絶対に受かれよ!!」
『はい!』
嬉しいのと一緒に、勉強しよう、って気も出てくる。国語辞典でたくさんの事を知った。皆も僕を応援してくれてる。
これなら、あの中学校も夢じゃない。
それを合言葉のようにして、毎日勉強に励んだ。嫌だなぁ……とか思ったら、すぐ思い出すようにしていた。
2年経った。勉強は充分やった。だから、結果も充分なはず。緊張はその自信を削っていく。
結果はトップで合格。その時はもう、涙が止まらなかった。
『お母さん!僕合格した!!嬉しい!』
「本当ね!おめでとう!あなたは最高の娘だわ!」
『僕ね、今まで、皆がいるから頑張れてるって思って、それでここまで来れたんだって。』
「そうね!あなたは本当にいい子よ!意鈴!!」
『ありがとう!皆、ありがとう!!皆に言いたい!』
「パーティーしましょう!」
そんな話をしていた帰り道。僕を祝福するみたいな太陽。僕はただ嬉しいばかりだった。
「あ、意鈴ちゃんだー!」
留脳。この人はあまり成績がよくないって聞くけど、僕はそんなことないと思う……。
「まぁ、留脳ちゃん……!」
お母さんは、少し怯えた声を出した。僕はあのことは忘れて、皆で仲良くしようって言ってるんだけど。
「制服が可愛くて、受けたの。受かって良かったー!また一緒に居られるね!」
『凄いね留脳ちゃん!また仲良くしよう!』
「うん!」
けれど、すれ違った時……
「あんたなんかに負けないから。」
冷たい声。僕に刺すような言い方だった。
留脳は何を考えているかわからない。本当に制服目当てなのか?この言葉は本気なのか?負けないって何で?あれだけではわからない。
でも、頑張ろうって思えた。中学になったら、どんなことが起こる?ワクワクする。
1年生になった、僕。6年前を思い出す。テスト前までが苦痛なだけで、後は人気者。
でも、また感じたことの無い、新たな痛みが僕に降りかかった。
高島貴桜。この人が原因だった。
「おはよう、意鈴さん。」
いつもこんなかんじ。常にニコニコしていて、成績もよく、性格もいい、まさに皆の理想の人だった。
もちろん、皆その人が好きなのだけれど、積極的なのは……
「ねぇ、貴桜くーん!一緒に帰ろー!!」
「あ、留脳さん!」
そう。留脳と貴桜はもう恋人かっていう、噂が立つほど。皆結構ライバル視している。
ある日、いつもの調子で留脳は貴桜と話しをしていた。
「今日も一緒に帰ろー!!」
その時だった。
「俺は意鈴ちゃんと帰るよ。」
びっくりした。何で?留脳も同じ事を思ったのだろう。
「ねぇ、何で?!私たちって恋人でしょ?!」
「俺は君とそんな風になった覚えは無いよ?!」
「っ……!」
うそ……。僕は思った。この2人はとても仲が良かったから。
「俺と帰ろ、意鈴ちゃん。」




