↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無言症  作者: 色蠟
PR
4/4

八方塞がりで

僕は小さめにうなずいた。こんなことってあるのかな。でも、変な考え方をして、変に期待すると恥ずかしい。僕は友達として……と考える事にした。

帰り道。受験後よりもドキドキした。

話が見つからず、ペンと紙を持ったまま固まった僕の手を突然つかむと、

「好きです。その、付き合って下さい!!」

びっくりした。手を放してもらってすぐ、返事をした。

『僕も好き。僕からも、付き合って下さい。』

メモを渡すと、貴桜はとても嬉しそうな顔で僕の顔を見つめた。そして、2人で顔を見合わせてにっこりと笑った。彼は、なぜ僕が好きなのか、教えてはくれなかった。僕もそれどころではなかったけれど。

次の日。

僕はあいさつができないから、毎日人に会うたび、笑顔でおじぎをしていた。

「留脳さん、おはよう。」

貴桜が言ったのと同時に、僕はおじぎをした。

「あ、貴桜君……?!い、意鈴?!」

留脳は僕を初めて呼び捨てにした。僕は怖くなって貴桜の後ろで縮こまった。

「俺の恋人の意鈴ちゃんだけど、どうかしたの?」

少し怒った声で言う貴桜。

それを聞いて留脳は口を開けたまま動かなくなってしまった。もちろん、廊下での出来事だし、貴桜が好きだった子も僕だけじゃなかったから、女子は大騒ぎ。泣いたり、悔しがったりしている。

それを見ていると、小学校の1年の時を思い出した。花壇から落とされたあの日。痛みを知った日。嫌だ。もういじめられたくない。そんな思いが頭の中でぐるぐる回る。

「あ、意鈴ちゃん!」

僕は教室へ走って逃げた。けどもう遅い。

「意鈴ちゃん……貴桜君と、って、本当?」

僕はもう追い詰められてしまった。そう思って泣いた。怖い。今まで仲良しだった女の子たちが、すごく怖い。

「意鈴ちゃん!」

貴桜が教室へ飛び込んできた。そうだ。貴桜のせいだ。僕は都合の悪いことを押し付けるようにして紙を渡した。

『大嫌い』

貴桜は紙に書かれたその言葉を見ると、黙ってその場で、目で意鈴を追いかけていた。

告白されてから1日たたずにこんなことになるなんて、思ってもみなかった。きっと貴桜も同じことを思ってる。

また次の日。仮病して休んだ。貴桜にあんなことを言ってしまった。嫌われた。そんな風に思ってしまう。もう嫌だ。学校に行ったら、いじめられる。その日のニュースで、いじめられた子がいじめた子に殺される、というのをやっていた。行ったら僕もあんな風に……僕も殺されてしまう?そう思うと、家にいた方が安全だと思ってしまう。もう会いたくない。でも、貴桜がいる。どうしよう。

ずっと悩んでいた。

ある日のことだった。

「意鈴、お見舞いに来てくれたわよ!えっーと……留脳ちゃん!!」

うそ。何されるかわからない。お見舞い?よりによって留脳?!暑いからか、会うのが怖いからか、汗がこぼれ落ちる。

こういう時に限って紙が近くにない。大声なんか出せない。急いで取りに行く。その日は頭痛がひどかった。悩みすぎたのだろうか。動くと激しい痛みが生じる。1年生の頃を思い出して、もっと怖くなった。

来ないで。

ガチャッ。ドアが開いてしまった。

話せないことは不便だが、これほど不便だと思ったことはなかった。

留脳が入ってくる。やめて。殺さないで!

「……意鈴。」

何?と言いたいけれど、ペンさえ無い。

「紙とシャーペン。動けないんでしょ。」

?思っていたより親切だ。だから、余計に怖くなった。

「ニュース……見た?あの……いじめで……そう、殺されるヤツ。」

まさか、同じめにあわせる、とか言うんじゃないだろうか。

「皆で、話し合ったの。意鈴が、それを恐がってるんじゃないかって。」

痛みが引いてきたので、ペンを走らせる。

『皆が怖い。帰って。』

「だからさ、皆何もしないよ。貴桜もあんたのこともう許してるし。」

本当だろうか。まだ怖くて信用できない。

留脳は僕に背を向けると、言った。

「もうすぐテスト。競える相手なんて、あんたぐらいしかいないのよ。」

メモが見せられないので、紙飛行機にして頭に当てた。

『最下位のクセに。』

「う、うるさいわね!早く来ないと貴桜とるわよ。」

留脳は走って部屋を出てしまった。

また学校へ行ったら、皆と仲良くできるかな。また学校へ行きたい。留脳のおかげで僕は立ち直れたし、お礼、言いたいな。

次の日。その日はテストだった。自分で勉強していたことは、皆には秘密。

自信を持って、教室へ入る。皆が僕をいっせいに見る。

「意鈴ちゃん……」

静まり返る教室。心臓の音が聞こえた。

「ごめんね!怖がらせちゃた?」

「また仲良くしよう!」

たくさんの女の子がそう言ってくれた。

『ありがとう。また仲良くしてね。』

話は丸く収まったけど、その次に皆が心配な事は……

「ねぇ、今日テストの日だけど……大丈夫?」

『うん、大丈夫。』

その言葉に、皆半信半疑だった。僕もあまり自信がなかった。というか、薄れていた。

チャイムが鳴り、皆にテストが配られる。

僕が勉強していた範囲よりもはるかに先にいっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。