痛い?
親は帰ってしまった。休み時間中。
「変なヤツ!しゃべれよ!」
「……。」
「いりんって、変な名前!」
「……。」
「変女!変女!」
「……。」
この時は何を言われているのかわからなかった。でも、これはこれで、良かったのかもしれない。
「その子、気持ち悪いよ。それより、一緒に遊ぼ!」
「あ、留脳ちゃん!いいよー遊ぼー!」
何もすることがない……というか、何も知らない僕には、何かをする、ということがわからない。
何かいろいろともらったが、机に出したまま、座ったまま、黒板を見つめていた。
休み時間が終わった。
チャイムがなる。1時間目になったことを、僕は知らない。
「これは『あ』!少し難しいよ〜!」
「えーん!上手く書けないよう……。」
「じゃあ、たくさん練習しないとね!あ、意鈴ちゃん?!これで平仮名は全部終わりだよ?!真っ白じゃん!早く書いて!」
「……。」
「ハハハハハハハハ……」
教室に笑い声が響きわたる。
僕は休み時間からずっと黒板を見つめた状態をキープしていた。
「つかれる」がわからない。何か「きこえる」だけ。「きこえる」すらわからない。
時間が経って、帰りの時間。留脳は僕に言った。
「一緒に帰ろー!」
後ろでクスクス笑う皆。記憶はあるから、今でも思い出す。何も出来ない僕はされるがまま。手を引っ張られて、花壇の上に立たされた。
「気持ち悪いよ。」
「私たちに近づかないで。」
「死ねばいいのに。」
そのまま僕は下に突き落とされた。
今まで感じたことがない感覚。これは何?これは何?僕の思考は言葉に出来ない。
僕は今まで危険な目にあったことが無かったから。
気がつくと、家ではないどこかにいた。
「意鈴!!大丈夫?」
その時、少しお母さんの気持ちがわかった気がした。
起き上がると、またあの感じが戻ってくる。泣く。小さな子供みたいに。大声を上げて。
「意鈴!」
呼ばれた。それがはっきりと分かった。
この人は、お母さん。
僕は、意鈴。日大意鈴。
じゃあ、この感じは……?出てくるこれは?
「それは『痛い』よ!出てくるのは『涙』!」
痛い。涙。僕は言ってみようと口を開けたが、何も出てこない。
「たくさん、お勉強しましょう!」
その日に、たくさんのことを覚え、1日で全ての文字を書けるようになった。
それから何年か経ち……
「おはよう意鈴!今日は10歳の誕生日だな!」
僕はこの日を迎えるまでに、漢字を勉強し、筆談でどうにかやっていた。
『おはよう、お父さん。今年は何をくれるの?』
それを見て、お母さんとお父さんは、僕の目の前に袋を差し出した。
前回が短かったので長めにしました。でも小説全文に比べればまだまだほんの1部ですので、完結するまで見守ってやってください。




