がっこう
「先生、聞いてください。信じてください。うちの子は生まれつき、『無言症』なんです。」
「…?『無言症』?」
「はい。一切話すことが出来ないんです。耳や目など、他のところには何の障害もないし、何かを食べることも、自分から行動する事も出来るんですが……もし、イジメなどがあったら、と心配で、心配で……」
「ええ。わかりました。あらかじめ生徒には言っておきます。」
「はい。よろしくお願いします。」
入学式当日。
……。
「意鈴!今日から一年生よ!早く起きて、ご飯食べなさい!」
「……。」
「ほら、制服っていうのよ。着てみようか!」
「……。」
せいふく。らんどせる。えんぴつ。けしごむ。そして、おかあさん。
その時は、ただの音だった。僕が字が読めない、わからないとき。
だから、感情もない。学校にだって連れて行ってもらっていた。
「さあ、学校に着いたわよ!楽しみね!お友達がたくさんできるといいわね!」
「……。」
「わぁ!ねぇねぇ、靴箱まで一緒にいこうよ!」
「……。」
はなのせ るのう
「ねぇ!ねぇってば!」
「まあ、一緒に行ってくれるの?」
「なによこの子。ぜんぜんしゃべんなーい!」
「……っ。」
お母さんが泣いている。るのうに物凄い勢いで揺すぶられた僕は、フラフラしただけだった。
式が終わる。みんな、お母さんやお父さんに手を引かれて、嬉しそうな顔で教室へ向かう。
「……花ノ瀬留脳ちゃん!」
「はぁーい!!」
「日大意鈴ちゃん!」
「……。」
「こら!意鈴ちゃん!お返事しないと、ダメだよ?」
「……。」
「ハハハハハ…」
その時、お母さんは泣いていた。僕は「涙」を知らない。




