表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/3

2話「ワイバーン」

夜空の下。

四人は焚き火を囲んでいる。


戦士が肉を焼いている。


「これで、またパワーが出るぜ!」


「また食い意地張って…でもあとで分けてね」


魔法使いは勉強している。

『禁断極限呪文の理論』という黒い本だ。


僧侶が明日の予定をノートにまとめている。

道具のストックも帳簿につけている。


勇者が皆を見て微笑んでいる。


魔法学校の食堂での思い出が蘇る。


勇者と僧侶はチェスを指している。


いつもギャラリーが出来る。


二人の試合に食堂のおかずを賭ける生徒までいた。


「今日は勇者が勝つよ!」


魔法使いはいつも勇者の応援側だ。


「いつも、僧侶の方が勝率が良いぜ」


自然と僧侶を応援する戦士。

「チェックメイトです!」


誇らしげに宣言する僧侶。


悔しそうに頭を抱える勇者。


「これで50勝、43敗で僧侶が勝ち越しだ!」


戦士がギャラリーを煽る。


「そんな見世物じゃないんだからさ…」


不満げに勇者の肩に手を置く魔法使い。


「そういえば。課題終わったの戦士?」


にやりと笑う魔法使い。


「うっ、嫌な事思い出させやがって…」


辺りの生徒が数人凍り付いた。


そんな楽しい思い出が昨日の事のようだった。


満天の星空が眩しい。


朝、森に差し掛かる。


木漏れ日が顔に差し込む。


緑の湿気を帯びた空気が少し清涼感を出している。


敵だ。


ネバネバした液体の塊。


スライムが三体、こちらを見ていた。


雑魚だが倒すのは平和のため。


戦士が斧で斬りかかる。


躱すスライム。


勇者が後ろに回り込み剣で斬り捨てた。


魔法使いが火球を放つ。


蒸発するスライム。


1匹逃げる。


追う戦士。


森の中で追跡。


「待ってください、そっちは!」


僧侶が珍しく大きな声で呼びかける。


戦士の絶叫。


崖から落ちた。


3人で崖下を見る。


青ざめた。


戦士は無事だが状況は絶望的。


落ちた先は、岩だらけ。


そこには、ワイバーンの群れ。


巣。


「今助けるぞ」


勇者が顔を引きつらせながら、飛び降りる。


「無理だよ!いっちゃダメ!待って!」


青い顔のまま魔法使いも続く。


僧侶も覚悟を決めて降りた。


戦士はワイバーンに斬りかかるがびくともしない。


ワイバーンが戦士に尻尾を叩きつける。


戦士は吹き飛ぶ。


魔法使いの火球も、翼の一振りでかき消される。


僧侶が白い光を放ち、戦士の傷を治している。


「このままではまずい、極大呪文を使うしか無い!」


全員の顔がひきつる。


「ダメだよ!あれがMPの消費が凄いから滅多な事では使うなって魔法の先生が…」


魔法使いが泣きそうになりながら言う。


「このまま全滅するよりマシだ!」


渋い顔で全員が目線を合わせ頷いた。


全員の身体から光の粒子が舞い上がる。


勇者の周りに光が集まる。


光が大きくなっていく。


剣を構えた勇者が空を思い切り斬ると。


光の奔流が放たれた。


さらに光は拡大していき、ワイバーンたちを飲み込んでいく。


数体が光の粒子になり消滅し、生き残りは飛んで逃げた。


勝利の高揚感。


しかし、その後来た感覚。


(気持ち悪い…)


口元を抑える。


全員が同じだった。


魔法使いに至っては地面に手をつき、今にも戻しそうだ。


「あれだけの魔法だもの、デメリットぐらいあるだろう…」


ふらふらしながらも戦士は、倒したワイバーンを踏みつけ始めた。

思い切り何度も。


「魔物にだって尊厳はあるんだぞ?」


口元を押さえて勇者が言う。


「うるせえなぁ、説教か?」


青筋をたてて戦士が言い返す。


「あなたが前に出すぎたから危険だったんですよ?」


青ざめた顔で警告する僧侶。


「そうよ、勇者まで危なかったじゃない!」


ふらふらと立ちはだかり魔法使いも責める。


「俺がもっと早く敵を倒せば弟も死ななかった。

 俺はもう違う。すばやく勝ち続ける。」


戦士は時々思い出す。


血まみれの弟。


助けを呼ぶ声。


自分は間に合わなかった。


目を閉じるたびに思い出す。


あの日だけは、何度夢に見ても変わらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ