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魔物に転生したので憧れのエルフになろうと思います  作者: Momamo
第1章

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第1節 6.後悔



「ルナ、どう?もう動けそう?」



現在私たちは川を目指して歩いているところだ。


ルナは私に抱えられたまま、居心地よさそうに揺られている。



[ん~~、まだ動けないかも~~。ノイに抱っこされたままがいいなぁ]


「もー。しょうがないなぁ。」



しょうがないと言いつつ、私もルナを離す気はなかった。

ふわふわとしたルナを抱えるのはとても気持ちがよく、抱えていることが苦ではなかったからだ。



「ノイ・・・君、中々甘やかし癖があるね。直したほうがいい気もするけど・・・まぁ、実害が出てからでも大丈夫かな。それよりルナ、方向はこっちかい?」


[違うよ、反対だよ。アズ、こんな方向音痴でよく今まで生きていられたね・・・]


「ははっ、ありがとう。」


[別に褒めたわけじゃないんだけど・・・]




三人で話しながら歩いてそろそろ一時間がたつ。

もうすぐ着くかな?と思った時、小さな川の音が聞こえてきた。



「川の音が聞こえる!もうすぐだ~!そうだ、アズ。シイノって美味しいの?」


「それはもう!シイノが狩れた時はごちそうだよ!シイノは珍しい動物で、滅多にほかの生き物の前に出てこないんだ。多分あの個体はチゴの実を食べに来てたんじゃないかな。」


「なるほどね。ちなみに、解体ってどうやるの?ナイフとかないけど・・・」


「大丈夫。水魔法があるからね。」



そう言ってアズは手の先からナイフのような形状の水魔法を作り出した。


「結構切れ味もいいんだ。シイノを解体するくらいならへっちゃらだよ。」


「そっか。楽しみだなぁ。」



そこから歩いて数分。

目の前には小さな川音からは想像もできなかったほどの大きな川が流れていた。

流れは緩やかで、入っても流される心配はなさそうだ。



「わぁ、水浴びしたら気持ちよさそう!」


[おいら、こんな大きな川を見るの初めて!今日は初めてが多くて嬉しいなっ!]


「ふふ。シイノを解体している間二人で水浴びでもしておいで。戻ってくるまでに解体を終わらせておくから。」


「いいの?アズ、ありがとう!!」


[アズありがと~!]



私は収納魔法の中からシイノを取り出すと、ルナと一緒にアズから見える範囲の川の上流のほうに向かった。




———・・・



「・・・行ったか。」



僕は小さく息をつくと昨夜のことを思い出す。


僕は一人だと思った瞬間に母様のことを想って泣いた。

どうしても我慢できなかったんだ。


母様は、それは素晴らしい森の主だった。

森の動物や魔物たちにも好かれて、穏やかで賢く、優しい皆の母だった。


それがどうして、あんなモンスターの群れに襲われなければならないのか。


近年のモンスター増加率はあまりに異常だ。



まあそれで泣いてしまったんだけど、途中でノイが起きてることに気づいちゃったんだよね。

でも泣き止むことができなくて、長い時間僕の泣き声を聞かせてしまった。

あの子は優しいから、きっと気にしているんだろう。

でも僕のことを想って黙っていてくれてる。


ダメだよね。

仲間なんだから、僕も、ノイも、ちゃんと本音で話さないと。


今日の夜ルナが寝たら、少しノイと話をしようかな。




なんて、そんなことを思いながら、解体を進めていった・・・———



———・・・



「ルナ~!こっちおいで!とっても気持ちいいよ!」


[わわっ、待ってよノイ~~!]



私とルナは現在川の上流のほうで遊んでいる。

私の体の一部でもある服は着たままで川の中に入っているから、何かあってもすぐに逃げられる。



「わっ、見てみて!ルナ、お魚さんが泳いでる!捕まえたらご飯になるかな?」


[おいら、魚って食べたことないけど、美味しいのかい?]


「うん、私は好きだったよ。ただ、食べれる魚と食べれない魚がいるから、捕まえても食べれるかどうかアズに聞かなきゃだけど・・・」


[それなら、ちょっとだけ捕まえてアズに見せよう!おいら頑張って捕まえるよ!]


「ふふっ、そうしよっか。よーし、私も一匹は捕まえたい!」



そうして私たちは魚取りに夢中になり、なかなか戻らない私たちを心配したアズが迎えに来てくれて、三人でシイノの場所まで戻った。


魚はちょうど三匹捕まえれて(私一匹ルナ二匹)、アズに聞いたら食べられる種類だったこともあって夜ご飯のメニューに付け加えることになった。






晩御飯を作る間ルナは自主練をすることになった。

私たちの目の届く場所で自分に集中しているルナは凛々しくてかわいかった。



「アズ、シイノはどうやって料理するの?」


「ただ焼くだけでも美味しいんだけど、せっかくだから薬草を使おうと思うんだ。」


「薬草?」



疑問を浮かべる私に、アズは懐から取り出した葉っぱを見せてくれた。



「これだよ。人間はこの葉っぱを使ってポーションを作るみたいだけど、僕みたいな魔物は肉と一緒に食べることが多いかな。臭みとかを消してくれるんだ。」


「そうなんだ!いつの間に取ってたの?」


「歩きながらちょこちょことね。これは乾燥させても使えるから僕が持ったままにしていたんだ。また見つけたらノイの収納にも入れといてもらおうかな。」


「うん、任せて!」



そういって笑いあったあと、アズは火を起こして焚火にした。

そして木の枝を持ってきて肉に刺そうとしているのを見て私は待ったをかけた。


「アズ。もしかしてだけど、フライパンとか・・・鉄板みたいなのって使わないの?」


「フライパン・・・??鉄板、はなんとなくわかるけど・・・なんだい?それ。どうやって使うんだい?」



アズは不思議そうな顔で尋ねてくる。



「そっか、人間しか使わないのか・・・。えっとね、ものを焼くときに便利なものがあるんだけど、それを使ってみない?私が作るから。」


「・・・?ノイが言うなら、うん、わかったよ。僕はどうしたらいい?」


「そうだね・・・このくらいの大きさの板を焚火の上に乗せれるように枠組みを作ってくれる?かまどって言って伝わるかな。」


「あぁ。かまどならわかるよ、大丈夫。作っておくね。」


「ありがとう!」



私はかまどを作ってもらってる間に、最初の洞窟で取った鉄のような鉱石を複数取り出す。


その鉱石に魔力を流して、変形させるイメージをもつ。

たぶん行けると思うんだけど・・・。


数秒したら、鉱石がぐにゃりと柔らかくなったのを感じた。


そこから私は複数の鉱石をくっつけて、伸ばして、平たい鉄板のようなものを作り上げた。

フライパンでもよかったんだけど、とりあえずの即席だからこれでもいいかなって思っての選択だ。

フライパンやなべなど、使い勝手のいいものは今後少しずつ作っていこうと思う。



「ノイ、これでいいかい?・・・わ、すっごく大きな鉄の板だね。これで焼くの?」


「わ、完璧!ありがとう、アズ!そうだよ、これをかまどに置いて・・・しばらく時間がたったら熱くなるから、そしたらその上に肉を置いてね。」


「わかった。これを使うとどんな効果があるんだい?」


「んー、確か、焦げにくかったりとか、直火よりも旨味が逃げにくい・・・って感じだったはずだよ。」


「焦げにくいのは素晴らしいよ!焦げるだけでだいぶ味変わるからね。」



そうして話をしていると鉄板の熱がいい具合になってきた。



「よし、お肉を乗せよう!」


「わかった。薬草で巻いた肉を置いて・・・と。おお、じゅうじゅう言っているね。これは途中で裏返したりすればいいのかい?」


「そうだよ!そうして両面焼けたら食べれるって感じ!」


「直火でやるより効率的に肉が焼けるね。これはいい。」


「でしょでしょ。」



お肉からはいい香りが漂ってきていて、お腹がすかない体のはずなのにお腹が鳴りそうだった。

いつの間にか、自主練をしていたはずのルナもそばにいて、じっとお肉を見つめている。



「ふふっ、早く食べたいね。」


[うん・・・おいら、こんないい香りも初めて嗅いだよ・・・]



よだれを垂らしているルナの口を拭ってあげて、アズをちらりと見る。


「あとどれくらいで焼けそう・・・?ルナが・・・あと、私も、そろそろ我慢の限界かも。」


「はははっ、大丈夫、ちょうどできたよ。この葉っぱをお皿にして食べようか。」


「待って!お皿くらいならすぐ作れるよ、ちょっとだけ待って!」



せっかくのいいお肉をしっかり食べたくて、ちゃんとしたお皿を鉱石を変形させて作る。

ついでにフォークのようなものも作って二人にそれぞれ渡す。


アズがお皿に肉を取り分けてくれて、焚火を囲んで三人で座った。



「それじゃあ・・・いただきまーす!」


「いただき・・・ます・・・?なんだいそれ?」


「あっ、そっか。えっとね、ご飯が出来上がるまでに関わったすべてのものに対する感謝の言葉・・・だったかな。私の故郷?みたいなとこではご飯を食べるときにそう言うんだ。」


「そうなんだ。じゃあ・・・いただきます。」


[いただきまーす!]



二人もいただきますを言ってくれて少しうれしくなる。


二人にフォークの使い方を教えながら私もフォークを使ってお肉を一口かじる。



「おっ……………美味しい~~~~!!!なにこれ!!じゅわっとして、とろっとして、ふわっとして・・・こんなのもうお肉じゃない!幸せの塊だよ~~!!」


「ふふっ、喜んでもらえてよかった。それにしても、鉄板はすごいね。今までは少なからず焦げの味が混じってたんだけど、それが全くない。ここまで美味しいシイノは僕も初めてだよ。」



ルナは一口大に切ってある肉を一生懸命口に頬張っていて喋れなさそうだが、美味しいという感情が顔から体から伝わってくる。


私たちは夢中でシイノを食べ、満腹になったところで魚のことを忘れていることに気が付いた。

幸いなことに川の中に仕切りを作って生きたまま保存していたので、明日の朝食べようということになった。


余ったシイノの肉は私の収納魔法の中に入れて保存した。





・・・———



夜。

もうすっかり日も暮れて星が輝き始めた。



「じゃあ、明日も行動するために早めに寝ようか。見張りは僕がするから二人は先に休んで・・・あぁ、ノイだけちょっと起きててもらえるかな。」


「うん、わかった。私もちょっと話したいことがあったんだ。」


[なんだいなんだい、おいらに隠し事・・・?おいらも起きていたい・・・けど、もう限界だぁ・・・]



その言葉を最後にルナは寝息を立て始めた。

私は微笑ましく思いながら座ったままだったルナを横にした。



「それじゃ・・・ノイ。君、昨日起きてただろう?」


「うっ、やっぱアズだから気づくよね・・・うん。ごめん、盗み聞くような真似しちゃって。」


「ううん、大丈夫。ノイが起きてることに気が付いても涙を止めなかったのは僕だから。……止められなかった、が正しいかな。」



そう言ってアズは少し俯く。


「僕の母様は、ほんとに完璧だったんだ。あんな・・・あんなことで死んでいい生き物じゃなかった。老衰するまで生きるべきだった。あの時、僕が変わりに死ねば・・・———」

「そんなこと言っちゃダメ!!それを聞いたアズのお母さんがどんな反応をするのか、一番わかってるのはアズでしょう?」



アズはハッとした顔をして、涙を浮かべる。



「でも・・・でも、どうしても、後悔が浮かぶんだ。あの時こうすれば、ああしていれば、逃げなければ・・・今も母様と一緒にいられたかもしれないって。」


「アズ…………」


「そしたら、母様も死なずにすん・・・———」

「ねぇっ、アズ。一つ疑問なんだけど。アズのお母さんってほんとに死んじゃったのかな?」


「え・・・?」



アズが変な顔になったけど私は気にせずに続ける。


「だって、アズ、咆哮しか聞いてないんでしょう?私だったら、生きてるかもしれないって希望をもって探しに行くけどな。」


「でも……でも、はぐれたら、いつも迎えに来てくれてたのは母様で・・・」


「何か事情があって迎えに来れないのかもしれないよ?今すぐに会えない事情があるのかもしれない。たったそれだけのことで諦められるほど、アズとお母さんの絆は浅いものなの?」

「そんなわけないっ!!僕は、僕は…母様を、信じてる。あんなモンスターにやられたりしないって、信じてた・・・はずなのに、どうして、僕は……」


「それにね、アズ。アズは気づいてないかもしれないけど、アズのお母さんと一緒にいた時にはなくて、今はあるものがあるでしょ?」


「なに・・・?」


「私とルナ。仲間がいる。それと、言語理解の力。これがあれば、周辺の動物や魔物に話を聞くことができる。それに、今私はエルフの姿になれるようになった。つまり、一緒に人間の国に行って聞き取り調査をすることもできるってこと。」


「そ、んな・・・考えもしなかった。人間の国に行くなんて・・・方向音痴の僕だけじゃ、とても・・・」


「だから!私たちがいるでしょ?」



アズのほっぺたを両手で挟み、持ち上げる。

目を合わせて、私はアズにそれを言う。



「探しに行こう。私と、ルナと、アズ。三人で。ルナもいいって言ってくれるよ。だってルナだよ?逆になんで教えてくれなかったのかって怒られちゃうよ。まだ出会ったばかりの三人だけど、既に絆はあるって、私は信じてる。」


「ノイ…………」



アズは両目からボロボロと涙をこぼしながら呟いた。


「いいのかな……諦めずに、探して、いいのかな………」


「うん、いいんだよ。探して、探して、世界中を探しつくしてもいなかったら、その時にこそ本当に泣こう。まだあきらめなくて、いいんだよ。」


「う……うぁぁ………………」



泣き崩れるアズを抱きしめながら、もっと早く伝えていればよかったと思う。

そうすれば、こんなに悩ませずに済んだのに。


見つかりますように。

私はそう願いながら、アズを抱きしめ続けた。




———・・・




「アズ、落ち着いた?」


「うん・・・ごめん、ノイ。その・・・ありがとう。」



少し照れたアズがそう言葉をこぼす。



「いいんだよ。仲間なんだから、もっと頼ってくれないと、逆に困っちゃう。」


「はは、気を付けるよ。それで・・・ルナにもやっぱり言った方がいいよね?」


「うん、そうだね。朝起きたらすぐに言った方がいいよ。」


「そうか・・・そうだよね。わかった。話してみる。話を聞いてくれてありがとう、ノイ。寝なくて大丈夫かい?昨日も寝てなかっただろう?」



アズが少し心配そうな顔で私をのぞき込む。



「あっ、そうだ。それも言わないと。あのね、私、睡眠を必要としない体なの。だから、逆にアズに休んでほしいんだ。」


「そうなのかい?それなら、お言葉に甘えようと思うけど・・・本当に大丈夫?」


「うん!私は大丈夫!魔法の練習でもしてるよ。」


「なにかあったら絶対に声をかけてね?まぁ、大きい音がしたらさすがの僕も起きるだろうけど・・・」


「うん、大丈夫だから、ちゃんと休んで。アズも昨日寝てないんだから。」


「ははっ、そうだったね。」



そう言うと、アズはルナとは少し離れた場所に横になり、目をつむった。


「おやすみ、アズ。いい夢見てね。」


「ありがとう。おやすみ、ノイ。」



しばらく経つと、規則正しい寝息が聞こえ始め、アズが眠りについたことがわかる。



「ふぅ………」


怒涛の数日間だったなと、私は一人考える。

この世界に生れ落ちて、魔法を覚え、アズと出会い、ルナと出会い、子供のエルフになり、美味しいものを食べ、今後の目標が決まった。


言葉にすると、ほんとに濃い数日だと感じる。


私のこの世界での運命は、最初の分かれ道から始まったのだろう。


あの時右に行かなければ、アズと出会うことも、ルナと出会うことも、洞窟からすぐに脱出することも、エルフになることも叶わなかった。


あの時右を選んでよかった。

心の底から私はそう思った。




こうして夜は更けていき、私の思考も魔力トレーニングも深く濃密になっていく。


これからの旅を想って。

これからの出会いを想って。



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