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魔物に転生したので憧れのエルフになろうと思います  作者: Momamo
第1章

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第1節 5.人化の進化


私たちは順調に歩いていた。

目的地に何があるのかは教えてもらえず、疑問に思いながらも、アズの行きたい場所なら問題ないと割り切って行き先は聞かないことにした。



「———・・・それで、この部分がこうなっているんだ。」



今私はアズ先生の講義の真っ最中だ。

精密な魔力操作によって次々と形作られていく人間の体の構造。

話を聞くだけじゃなく視覚情報もあり、とてもわかりやすかった。



「じゃあそこにこれがあって・・・」


「そうそう、そういうこと!ノイは呑み込みが早いね。」


「いやいや、アズの教え方がうまいからだよ!」



お互いに謙遜しあっていると、少し不貞腐れた声が聞こえた。


[いいなぁ・・・おいらも早く魔法を教えてもらいたいよう・・・。]


「ルナには目的地に着いたら教えてあげるから、拗ねないで。今は道案内をしてもらわないとだろ?」


[そうだけど・・・ちゃんとおいらにも教えておくれよ?]


「もちろんだよ。」



アズは落ち着いた様子でルナをなだめていた。


なだめている間に周りの景色を見てみると、今までの景色にはなかった真っ赤な綺麗な実が辺り一面に生えていることに気が付いた。

赤い実は一口で食べれるサイズで、前世でいうブルーベリーに形が似ていた。



「わぁ、綺麗な赤い実だ!これ、なんの実だろ?アズ、わかる?」


「お、ついたみたいだね。ここが目的地だよ。これはチゴの実っていうんだ。ルナ、食べてごらん。」



アズに名指しで呼ばれたルナが一粒取り、恐る恐る口に入れた。

咀嚼してすぐ、ぱぁっと笑顔になったルナは嬉しそうに言う。



[なにこれ、甘酸っぱくておいしい!!おいら、こんな美味しいもの食べたの生まれて初めてだよ!!]


そう言うとルナは次々とチゴの実を食べ始めた。


「ノイも・・・って思ったけど、その体だとまだ食べられないよね。どうしようかな、チゴの実は劣化が早いんだ。保存をすることが難しいんだけど・・・」



私はそこで収納魔法の存在を思い出した。



「大丈夫!私、収納魔法っていう時間を止めて保存できる魔法を持ってるから、そこに入れるよ!」


「収納魔法?!回復魔法の時も思ったけど、ノイはすごい魔法を持っているんだね・・・。容量はどのくらいあるんだい?」


「うーん、正確にはわからないけれど、ここら一体のチゴの実を入れても余裕がありそうかな。」


「容量まですごいね・・・。それじゃあ、僕とルナの分のしばらくの食事もいれておいてくれる?そうすれば食事に困らないと思うんだ。」


「もちろん、大丈夫だよ!収穫してくるね。」



そう言って私はチゴの実がたくさん生えている場所に向かっていき、次々と収納魔法に実を入れていった。



「僕も食べるかな。」



そうしてしばらくの間それぞれでチゴの実に集中した・・・———




———・・・



[ふぃ~、こんなに満腹になったのも、生まれて初めて・・・]



そう言いながら地面に横たわっているのはルナだ。

お腹がぱんぱんに膨れ上がっている。

それとは別に、なんだか体が大きくなったような気がするけど・・・



「ルナ。収穫して隠しているチゴの実を出して?」


[ぎくっ、か、隠してなんかいないよ?ほんとだよ・・・?]



つまりはそういうことらしい。

あまりに美味しくておやつ代わりに持っていこうとしたんだろう。



「大丈夫、僕が取るわけじゃないから。ノイが時間を止めて持って行ってくれるらしいから、入れてもらった方がいいと思ったんだ。チゴの実は劣化が早いから、そのまま持って行っても腐ってしまうよ?」


[え?!そ、それは困るよ!わかった、ノイに全部渡すよ・・・]


「ふふっ、ルナ、安心して。食べたくなったらちゃんと出してあげるから。」


[それなら・・・]



そう言って納得した様子でチゴの実を出していくルナ。

取り出されたチゴの実はルナの体積より多く入っていて、その体の一体どこにこの量が・・・??ってアズと一緒に首をひねったのは面白かった。





「さて。腹ごしらえもできたし、魔法の授業をしようか?」


[ついにおいらも魔法が使えるようになるんだ!]


「ルナはまず、魔力というものを感じれるようにならないとだね。」


[魔力?]


「そう。体の、心の中心に集中するんだ。そこに、暖かいものがあるはずだ。それを感じるために、自分の中に集中して。」



そう言われると早速自分に集中し始めるルナ。



「そういえば、ノイは世間知らずだけど魔力は認識できてたね。誰かに教えてもらったのかい?」


「ううん、自己流だよ。」


「へぇ、それはすごい。」



神さんのことは話さない方がきっといいよね。

私はそう思って神さんのことは伏せることにした。



「魔力を感知するのにどれくらい時間がかかったか覚えてる?」


「うーん・・・確か、一日もかからなかったような気がするけど・・・細かくは覚えていないや、ごめんねアズ。」


「ううん、大丈夫。ノイで一日なら、ルナはどのくらいかかるかな・・・———」

[できた!!!これかい?暖かいもの!!]



そう言って自分の手に魔力を集めているルナ。


これにはさすがのアズも驚いていて、しばらく無言でルナの魔力を見つめていた。



「———・・・いや、驚いた。ルナ、君すごいね。天才なのか、はたまた魔法への純粋な思いからなのか・・・。しかも感じるだけじゃなく手に集めているのを見ると魔力操作もできるようになっているみたいだね。すごいよルナ。これなら魔法もすぐに使えるようになるよ。」


[ほんとかい?!やったぁ~!!]


嬉しそうに小躍りするルナを私とアズは微笑ましい顔で見つめた。



「さて。魔力操作まで行ったのなら話が早い。ルナ、その暖かいものが魔力だから覚えておいてね。魔力を動かすのは・・・で、魔力の形を作るのは・・・って感じで、それから・・・———」



アズは丁寧に教え、それを真剣に聞くルナ。


真剣な様子の二人の邪魔をしないように私は少し離れた位置に移動した。

そして、アズに教えてもらった人体の構造を思い出し、魔力で形作っていく。

もうほぼ完璧に近いってアズは言っていたから、エルフになれるのもすぐなのかもしれない。

いつも通り骨格から筋肉、血管などすべてを細かく作りエルフの形が完成したとき、何かの鍵が外れたような感覚がした。

何の鍵なのかわからず疑問に思ったけど、私はなぜか無性にエルフになれるか試したくなった。


自分の理想のエルフを思い描き、自分の体の中で骨から全てを魔力で作っていく。

全てのパーツを作り終えた瞬間、私の体は光に包まれた。

異変に気が付いたアズとルナがこっちに駆け寄りながら焦った声を出す。



「ノイッ!!何があったの?!大丈夫?!その光は・・・ッ!!」


[ノイ~!大丈夫か~?!!]



私は体が作り変えられる感覚はしたものの、特に異常はなかったため大丈夫だと伝えようとする。

だがその前に光が収まっていき私の体も完全に新しいものになった感覚がした。



「ごめんごめん、私は大丈夫だよ。心配かけてごめ・・・———」


「誰だ?気配はノイのものだけど・・・それに、エルフの子供・・・エルフ・・・ん?ノイ……ノイ、なのかい?」


[おいら、この人はノイだと思うよ!優しい雰囲気がノイだもん!]



二人の言葉に苦笑いしながら私は答える。



「私はノイだよ。これまで二人と一緒に旅をしてきたノイ。ねぇ、私の体、そんなに変わってる?自分じゃよくわからなくて・・・」



そういって自分の顔を引っ張ったりくるくる回っていた私を見て、アズが水魔法で鏡を作ってくれた。



「これが・・・私・・・?」


鏡に写っていたのはとんでもなくかわいいエルフの女の子だった。

年齢は14~16くらいに見える。

耳は当然長く、真横に水平に伸びていた。

髪の毛は深い青色で、アズとおそろいな感じがして少しうれしくなる。

そして瞳。

鏡から見て右目が青なのに対して、なぜか左目が赤いのだ。

真っ赤な瞳を見て私は不安になる。

モンスターの目も赤いということを思い出したからだ。


「あ、アズ・・・その、この瞳・・・大丈夫、かな・・・??」


「ん?なにが?まるで宝石みたいで綺麗だと思うよ。」



アズは全く問題ないというかのように普通に褒めてきた。

その言葉に私は少し照れ・・・———

「って違うでしょ!モンスターと一緒だから大丈夫なのか心配になったのに・・・」


「ははっ、ごめんごめん。でも、大丈夫だよ。モンスターの瞳は赤いけど、それよりも濁っているかが一番重要なんだ。普通に赤い瞳の生き物はいるよ。」


「そっかぁ・・・よかったぁ・・・!」



私は安心してその場に座り込む。



「ただ、オッドアイなのが気になるかな。珍しいわけじゃないけど、オッドアイを持つものは何かしらの固有魔法を持っていることが多いんだ。ノイ、心当たりはあるかい?」



私はきっと創造魔法のことだろうと思った。

でも、アズが言うにはこの魔法は”おとぎ話”レベルの魔法だ。

簡単には話せない。

だから正直に話せないことを伝えようと思った。



「アズ、ごめんね。心当たりはあるんだけど、今はまだ話せないんだ。話せるようになったら話すから、それまで待っててくれる?」


「もちろん、大丈夫だよ。無理に聞き出すことはしないから、安心して。」


「うん、ありがとう。」



私はほっと息をついて、ルナを見る。


「ルナ、私が私だと思うって言ってくれてありがとうね。どうかな?この姿・・・」



ルナはじっくりと私の新しい体を観察すると、飛び切りの笑顔で答えた。


[うん!!とっても素敵!!おいら、今のノイも好きだな~!]


「ほんとっ??ありがとう!!」



私はルナと二人で笑いあった。



「それにしても・・・ノイ、君は子供の姿のエルフを想像して作ったのかい?」


「ううん、それが・・・私はちゃんと大人の姿を思い浮かべてたんだけど、なぜか子供の姿になっちゃって・・・。もしかしたら、ゴーレムだった時に人間になれなかったのと一緒の現象かもしれない。」


「そうか・・・じゃあ、これからもたくさん練習していつか大人の姿にならないとだね。」


「うんっ、そうだね!大人のエルフを目指して、頑張るぞ~!」



私がえいえいおー!と拳を空に突き出しているのを見てルナも同じことをしていた。

それがかわいくて、ふふっと笑いながら、私はついに子供の姿だけれど念願のエルフになれたという喜びを噛みしめた。





ちなみに、服は自分の体の一部を変化させてちゃんと着ているので安心してね。




———・・・



「ルナのほうはどんな感じなの?」


私は体の動かし方を復習するようにストレッチをしながら疑問を投げかける。



「ルナはすごいよ。呑み込みが異常に速いんだ。それに、1説明したら10は理解する。ノイもうかうかしてられないよ?」



そう言ってフフッと不敵な笑みで笑った。


ルナは今は一人で自主練をしており、自由自在に魔力を操っているのがここから見ていてもわかる。


本当に私もうかうかしていられないなと思いながら、でもルナが魔法を使えるようになるのはうれしいことだなって思った。



「あ、そうだ!ノイがエルフになった衝撃で忘れてた。ノイ、君、今ならチゴの実を食べれるんじゃないかい?」


「あっ、ほんとだ!食べてみるね!」



私は収納魔法の中からチゴの実を一つ取り出し口の中に放り込む。

噛んだ瞬間、甘い果汁と甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がり、飲み込んでもしばらくは余韻が残った。

ついもう一個食べたくなったのを我慢して、アズに感想を言う。


「アズ・・・これ、すっっっごく美味しい!!!生まれて初めて食べた味だよ!こんなにおいしい実・・・果物?を食べたのは、人間だったころを含めて初めて!!これはもっとたくさん取っていく必要があるかもしれないよ!」


「ふふっ、ノイならそう言ってくれると思ってた。ルナの自主練がひと段落したらもう一度収穫に行こうか?」


「うん!!」



そうしてしばらくの間他愛のない話をアズとしながら、ルナの自主練が終わるのを待った。




———・・・




[よーっし、おいらもいっぱい取るぞー!]


「張り切りすぎて全部とっちゃだめだよ?全部取ってしまうと、次の年に生えてこなくなるんだ。だから、ある程度は残してね?」


[わかったよ!!]



そう言うとルナはまたチゴの実に向かって走っていった。



「私も取ってくるね。」


「うん、行ってらっしゃい。僕は、周辺を見てくるよ。」


「迷子にならないようにね?」


「ははっ、気を付けるよ。」



そうして私たちはまたそれぞれで行動をし始めた。




一人になった私が考えていたのは、昨夜のこと。

アズは今も苦しいんじゃないかということだ。

しょせん数日一緒に行動しただけの私がどうにかできることじゃない。それは私もわかっている。

でも私は、アズのことが好きになってしまった。

男女のあれこれではない。生き物として、アズ個人のことが好きなのだ。

力になれるならなりたいし、頼ってほしいとも思う。


今日一日様子を見ていたけど、昨夜の涙が嘘のように何もなかったように過ごしているアズのことが、私は心配だ。


今日の夜、アズと少し話をしよう。

そう思った時だ。




ぎゃおおおおおおおおん!!!




突然の大きな声に慌てて周囲を見る。

アズが見ててくれているからって油断しすぎてた!


ここ数日、最初の狼しかモンスターと出会わなかったのも注意散漫の理由だ。



急いでチゴの実の群生から出てアズを探す。

アズはすぐに見つかった。


アズは大きなイノシシのようなものと戦っていた。

イノシシは黒い目で魔力をまとっていないことから普通の動物だと判断する。



「アズ!加勢必要?!」


「いらないよ!そこで待ってて~!」



アズは余裕の表情で次々と魔法をイノシシに当て、ついにイノシシは倒れ伏した。



「ふぅ。ノイ、ルナ!今夜はごちそうだよ!こんなに立派なシイノは久々に見た!」



アズは興奮しているのか、目をきらきらとさせながらまくしたてる。


「まず、血抜きでしょ。そのあと部位ごとに切り分けて、内臓は焼いて埋めて・・・ああそうだ、川を探さなきゃ!探すのに時間がかかることも想定して・・・ノイ!」


「はっ、はい!!」


急に名前を呼ばれてつい背筋が伸びてしまった。



「ノイ、このシイノを収納魔法に入れて保存しておいてくれないかい?解体は川辺でやりたいんだけど、今から探すから劣化したら嫌なんだ。」


「なんだ、そんなこと?全然入れておくよ!」


「ありがとう、助かるよ!」



私はシイノに近づいて観察する。

見れば見るほどイノシシに似ている。

アズがあそこまで興奮するってことはよっぽど美味しいのかな?


そこまで考えたところで、アズからの視線がすごいことになっているのに気づき、苦笑いしながらシイノを収納魔法に入れた。



「チゴの実の周辺には川があることが多いんだ。ちょっと見てくるから待っててね。」



そう言って朝と同じように翼を出し、空に飛びあがる。


しばらく周りを観察して、アズはすぐに降りてきた。


「あっちの方角にあったよ。思ったより近かったから、1時間もかからず到着するんじゃないかな。ルナ、また君の力を借りた・・・・・・ルナ?あれ、そういえばルナはどこだい?」


「えっ・・・あれ?そういえば、シイノが出てから姿を見てない気が・・・」



[お・・・おいらは、ここ、だよぅ・・・]


声がした方に目を向けると、チゴの実に埋もれながら腰を抜かして動けなくなっているルナがいた。



「ぷっ・・・ご、ごめん、つい・・・ふふっ、あはは、ルナ、かわいいね。」


「ご、ごめんよルナ。僕ももっと配慮したほうがよかったね・・・」


[わ、笑わないでよぉ!おいらを早く助け起こしてくれよぉ・・・]



そうしてルナの周りにあったチゴの実とルナが隠し持っていたチゴの実を全部収納魔法に入れ、腰が抜けているルナを抱え持って、私たちは川を目指して歩き始めたのだった。



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