第百五十七日目
翌朝。
リツカは少し眠かった。
昨夜は星を見ていた。
線香花火もした。
気付けば遅い時間になっていた。
それでも。
朝は来る。
日本は容赦なかった。
居間へ行く。
すると。
奈緒が腕まくりをしていた。
嫌な予感がした。
とても。
「おはよう」
「おはようございます」
「今日は予定変更」
確定だった。
何かある。
奈緒は押し入れを指差した。
「大掃除します」
リツカは押し入れを見る。
扇風機を出した時に開けた場所だった。
確かに。
色々入っていた。
かなり。
「掃除は定期的にしています」
「うん」
「床も綺麗です」
「うん」
「窓も綺麗です」
「うん」
「ではなぜ」
奈緒は押し入れを開けた。
沈黙。
箱。
箱。
さらに箱。
よく分からない袋。
謎の段ボール。
存在を忘れられた物たち。
リツカは理解した。
掃除ではなかった。
発掘だった。
「やろうか」
「はい」
諦めた。
午前中。
二人で押し入れの中身を出していく。
古い雑誌。
アルバム。
使わなくなった座布団。
冬用の毛布。
色々出てくる。
その時。
「あ」
奈緒が小さな箱を見つけた。
動きが止まる。
リツカは気付いた。
思い出の品らしい。
箱を開ける。
中には写真。
幼い頃の奈緒だった。
「これは」
「小学校」
今とは少し違う。
髪も短い。
日に焼けている。
元気そうだった。
「奈緒さんですか」
「そう」
リツカは写真を見る。
そして。
もう一枚見る。
さらにもう一枚。
奈緒がいる。
運動会。
遠足。
夏祭り。
どれも笑っていた。
その時。
「懐かしいねぇ」
フミが現れた。
いつの間にかいた。
いつも通りだった。
「奈緒ちゃん泣き虫だったもんねぇ」
「言わなくていい」
即答だった。
珍しく少し慌てている。
面白かった。
リツカは少し笑う。
奈緒が気付く。
「今笑った?」
「少し」
「少しなんだ」
少しだった。
でも。
確かに笑った。
それからしばらくして。
押し入れの整理は終わる。
かなり片付いた。
風が通る。
空間が広くなった。
気持ち良かった。
リツカは思う。
不思議だった。
異世界では、
物を捨てることは少なかった。
道具は使い潰す。
本は保存する。
何でも残す。
けれど。
ここでは違う。
必要な物を残し、
必要ない物を手放す。
だから暮らしが軽くなる。
少しだけ理解できた気がした。
その時。
奈緒が段ボールを持ち上げる。
「これ処分かな」
中を見る。
色鉛筆。
画用紙。
折り紙。
工作用品。
由美が目を輝かせた。
「待って」
嫌な予感がした。
とても。
「自由研究しよう」
沈黙。
リツカは首を傾げる。
「自由研究とは何ですか」
奈緒が笑い始める。
由美はすでにやる気だった。
そして。
その夏最大の難題が、
リツカを待っていた。
なぜ夏休みの子どもたちは、
自分で課題を増やすのだろうか。
本当に理解できなかった。




