3話(夏祭り終盤1)魔法で纏う、偽りの夏色
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夕暮れ。私はいつものお洋服を着て、家のドアに触れる。
今日は夏祭り開催日だ。私は数日前にみんなで選んだ
浴衣を1度着てから、保存…?
多分保存って言い方で合ってるのかな。
魔法で保存しておいて、
好きなタイミングで指をパチンッ!と、
鳴らせば保存していたお洋服に着替えることができる。
ほら、あれ…。スマホの着せ替えゲームでコーデを
保存できるような感じ。…魔法って、都合がいいね。
「姉さん、どこに行くの。」
ドアの音がならないように、
そっとドアノブに手をつけたのだけど、
さすが弟、私が外出しようとしたことがバレてしまった。
どうしよう、上手いこと言い訳をしなきゃ…。
「え、えっとね!今日夏祭りがあるの!」
「夏祭り?」
ヤバい!なぜ夏祭りってワードを言ってしまったんだ!
青葉の視線が痛いよ…。
こんな時、えまなら上手いこと言えるんだろうなぁ…。
な、何とかいい感じに誤魔化さないと…えっと…。
「な、夏祭りの、お手伝い頼まれてて!焼きそば焼いたり、
太鼓の配置とか、花火発射する担当とか!」
「姉さんだけに負担いきすぎじゃない?」
「いや!あの!まだ何をするかは分からなくて…。」
「じゃあ、ぼく夏祭りで姉さんのとこに行ってもいい?」
そうきたかー…。やはり青葉は頭がいい…。
どうしよう、あの3人、しかもアルフさんと一緒に
行動することがバレてしまったら青葉は怒っちゃう…。
「人多いから気分悪くなっちゃうから来ない方がいいよ!
それじゃまたね!夜は遅くならないから
帰ったらご飯作るから何が食べたいか決めておいてね!」
バタンッ!とドアを勢いよく閉めて、
私は逃げるかのように
早足で自分の住んでいる部屋から遠ざかっていく。
ごめんね、私、エスケープに来てから
色んな人と関わることが楽しいと感じてしまって、
その…青葉の優しさが
少ししんどく感じるようになってしまったの。
「遅いじゃないの!!」
私はびっくりした。もちろんその声は私に届けられたもの。
考える必要もない、声主はメリアさんだ。
夏祭りは始まってからしばらく時間が経っており、
商店街の入口は私たちのように待ち合わせや、
出入りする住民で賑わっている。
もちろん静かなわけがないのだが、メリアさんは
それを塗り替えるかのような声量だった。
ちなみにメリアさんはすでに浴衣姿だった。
「メリアさん、遅れちゃってごめんね。…でも、
まだ集合時間までに15分弱はあるよ…?」
「うるさいわね、周りがトロいのよ。
早く美味しいものが食べたくてウズウズしているの。
ワタシ、色々聞いたのよ。夏祭りには
たくさんの食べ物があるって。
だから今日は朝から何も口にしていないわ。」
今日のメリアさんはイライラしている様子はなく、
どことなく楽しそうで目を輝かせているようにも見えた。
残り2人が来るまで、メリアさんは私に
あれっておいしいの?って何度も聞いてきた。
何だか楽しそうで私までも嬉しくなってしまい…。
アルフさんは集合時間までにやってきて
その会話にアルフさんも混じったのだが……。
「…約束の時間だが、現れる気配がないな。」
白くんが集合時間になってもその場にはいなかった。
迷ってるのかな、と思い商店街の入口から
視線を動かし、白くんを探したがいない。
「もう!何をしているのかしら」
今日のメリアさんは余裕があるみたい。
あと1時間は待てそう。…冗談はさておき、
白くんの安否が心配だなぁ。ここはエスケープ。
命の保証はない。えっ、そんなことないよね…?
その時だった。
「おまたせ〜!!」
白くんが現れた。良かった、無事だった。…のだが…。
白くんは手を振りながら、無邪気にこちらに
やってきたのだが…。
白くんの真っ白なお洋服と鋭いおぞましい黒い手は
鮮血で染まっていた。
私は白くんの姿に硬直していた。
「みんなどうしちゃったの?体調悪いのかな?
…もしかしてボク、時間に遅れちゃったかな、
これでも急いだんだけどね…」
私は、白くんが人間を殺めたことより、
白くんが怪我をしてないか心配だった。
エスケープってそういう場所だから…。
「人間を殺すのにそこまで時間ってかかるものかしら?」
「いや、トロメリアの方が
よっぽど時間がかかるじゃないか。」
「ワタシはね、あえて時間をかけて人間を
苦しめて死に至らしめるのよ、同じにしないでほしいわね。」
…うん。やっぱり生粋の人外の方の考えは分からないね。
特にメリアさん。何があったらそこまで
人間を嫌いになっちゃうのか…。
人間に親でも殺されたのかな…?
「白、痛むところはないか?」
「う、うん…。なんか、いつの間に死んじゃったから…。」
白くんは目をぴょこぴょこと動かしながら、
まるで目の前で他の事故によって
人間が死んだかのようなそぶりで話す。
「とにかく、無事でよかった。」
「そんなことより!早く浴衣に着替えちゃいなさいよ。」
人外でも、考え方はやっぱり
それぞれ人間と同じで違うんだろうなぁ…。
「そ、そうだね…。血がついたままじゃ、
いい気分ではないよね。」
とりあえず私はメリアさんの言葉に乗った。
ここで心配の言葉をかけても何も変わらないと思ったから。
「それもそうだね!」
そう言うと白くんは指をパチンッ!と鳴らして、
浴衣…甚平に着替えた。
鮮血の面影はあっという間に消えてしまった。
「やっと揃ったわね、お腹が空き過ぎて
お腹と背中がくっついてしまうわ、さっさといきましょ!
まずはあれから食べたいわ、ずっと気になっていたの!!」
メリアさんは上機嫌に私の手を引き、
夏祭り会場を進んでいく。
メリアさんが楽しそうならばいっか…と
私はメリアさんに引っ張られるがままに進んでいった。
アルフさんと白くんはメリアさんと私についてくる。
エスケープの夏祭りはまだ始まったばかり…。
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