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午前零時の人狼裁判 "第二話"

• 挨拶

初めましての方が殆どと予想しております。神ビスマルク級と申す者です。

小説は読み専だったのですが、少し書いてみたいと思いまして、個人として初の小説「午前零時の人狼裁判」を未熟者ながら書かせて頂こうと思います。


• 注意書き

上記の通り、あくまで未熟者の小説ですので、温かい目で読んで頂けると幸いです。


• 次回・更新情報の予告

基本的には不定期投稿ですが、興が乗ってきたら、一日二回投稿を行うかもしれません。

あくまで私個人の気まぐれであるということをお忘れなきようお願い致します。



•前回のあらすじ

八人の参加者が閉鎖された教室に集められ、人狼裁判が始まった。主人公は人狼のカードを引き、もう一人の人狼である金髪の男と協力して生き残ろうとする。しかし、占い師の青年に正体を暴かれかけた金髪の男は、主人公の誘導もむなしく処刑され、人狼であることが判明した。

――俺が選んだ名前は、占い師の青年だった。

『殺害対象、選択完了』

 無機質な音声が響く。

 俺は指を引っ込め、暗闇の中で息を吐いた。

 金髪の男が処刑された以上、俺は一人で残りの市民を全滅させなければならない。

 普通に考えれば、絶望的な状況だ。

残り六人。

 俺以外の五人は、全員が市民陣営である可能性がある。しかも、あの占い師が本物なら、明日には俺の正体まで暴かれるかもしれない。

 だが――。

 俺は、口元を歪めた。

「……だったら、占い師を殺すのが正解だと思うだろ?」

 違う。

 俺が本当に殺したいのは、占い師ではない。

 あの少女だ。

 俺の正体を疑いながらも、投票では金髪の男に票を入れた少女。

 あいつは、俺の行動を観察している。

 占い師を殺せば、確かに俺の正体が暴かれる危険は減る。しかし、占い師の死体が出れば、村人たちは

 残された情報を整理し、俺を疑い始めるだろう。

 ならば、占い師を生かしたまま、村人たちに疑心暗鬼を植え付ける。

 それが俺の真に最善の選択だった。

 だが俺は、あえて占い師の青年を殺害対象に選んだ。

『夜が明けます』

 照明が点灯した。

 俺は反射的に、占い師の青年が座っていた席を見た。

 そこには――。

 誰もいなかった。

「……え?」

 机の上には、黒いカードだけが残されている。

『第二夜の殺害対象は、存在しませんでした』

 教室がざわめいた。

「はあ? どういうことだよ!」

 短髪の男が声を荒らげる。

『第二夜、死亡者なし。議論を開始してください』

 俺は思わず息を呑んだ。

 殺害対象は、確かに選択したはずだ。

 なのに、死亡者がいない。

 考えられる可能性は三つ。

 一つ。占い師が何らかの能力で殺害を防いだ。

 二つ。特殊な役職が存在する。

 三つ――。

 このゲームのルールは、俺たちにすべて開示されていない。

 最後の可能性が、最も厄介だった。

 俺は何事もなかったかのように椅子に座った。

 すると、昨日から俺を疑っていた少女が、静かに口を開いた。

「昨日、占い師を名乗った人がいたよね?」

「ああ」

 俺は短く答えた。

「その人が死んでいない。ということは、少なくとも昨夜は誰も殺されなかったってこと」

「……そうだな」

「おかしいと思わない?」

 少女は俺ではなく、ほかの参加者たちを見渡した。

「人狼は一人になった。昨日の処刑で、もう一人の人狼が確定したから。なのに、誰も死んでいない」

「だから何だよ」

 短髪の男が苛立ったように言う。

「人狼が殺害を失敗しただけじゃないのか?」

「それなら、殺害を失敗させる能力を持つ人がいるってことになるよね」

 少女はそこで言葉を切った。

「つまり、このゲームには、私たちが知らない役職がある」

 俺は彼女の横顔を見た。

 こいつは、ただ勘が鋭いだけじゃない。

 状況から情報を組み立て、矛盾を探している。

 しかも、俺が昨日、占い師を疑ったことまで覚えている。

 厄介な相手だ。

 だが、同時に好都合でもあった。

「俺も、その可能性はあると思う」

 俺は手を挙げた。

「昨日の説明では、初期に開示されていない役職が複数ある可能性があると言っていた。だったら、殺害を防ぐ能力があってもおかしくない」

「……あなたは、どうしてそんなに落ち着いていられるの?」

 少女が俺を見た。

「金髪の彼が人狼だった。あなたは間接的に彼をかばっていたのに、処刑されても驚かなかった」

「驚いたさ」

「嘘」

 即答だった。

 教室の空気が凍る。

「あなた、昨日の投票結果が出る前から、彼が処刑されることを予想していたでしょう?」

「それは……」

「それに、あなたは一度も、自分の役職について話していない」

 少女は机に手を置いた。

「あなたは何者なの?」

 ――まずい。

 こいつを説得するのは難しい。

 ならば、疑いの矛先を別の方向へ向けるしかない。

「それを言うなら、君だって何者なんだ?」

「私?」

「昨日から俺を疑っている。しかも、金髪の男が人狼だと判明したあとも、まるで最初から分かっていたかのような口ぶりだ」

 少女の表情が、わずかに変わった。

「君は、何か特別な情報を持っているんじゃないか?」

「……」

「占い師でもないのに、どうしてそこまで俺を疑える?」

 今度は、彼女が沈黙する番だった。

 俺は畳み掛ける。

「それに、昨夜の死亡者なしという結果。君はそれを、あまりにも自然に受け入れている」

「それは……」

「君こそ、何か隠しているんじゃないのか?」

 数秒間、誰も口を開かなかった。

 やがて、眼鏡の女性が恐る恐る手を挙げた。

「……私、昨日から気になっていたことがあるの」

 全員の視線が集まる。

「最初に占い師を名乗った彼。金髪の男性を人狼だと言ったけれど、彼はその後、自分の役職について何も説明していない」

「占い師なんだから、当然だろ?」

 短髪の男が反論した。

「いいえ。そうじゃなくて……」

 眼鏡の女性は、机の上のカードを見つめた。

「このゲーム、役職カードが配られたとき、私には一つだけ変な表示があったの」

「変な表示?」

「私のカードには、こう書かれていた」

 彼女はゆっくりと顔を上げた。

「【霊媒師】。その下に、小さな文字で――『初期役職構成に変更が発生しています』って」

 教室が静まり返った。

 俺は思わず彼女を見つめた。

 そんな表示は、俺のカードにはなかった。

「……どういうことだ?」

 短髪の男が尋ねる。

「分からない。でも、昨日処刑された人の役職が公開されたとき、私のカードに新しい文字が表示された

 の」

 彼女の声が震える。

「『次回処刑者の役職を一度だけ確認できます』って」

「何だと?」

 俺の背筋に冷たいものが走った。

 そんな能力が存在するのか。

 もし彼女が本当に霊媒師なら、金髪の男が人狼だったことを確認できたはずだ。

 だが、それだけではない。

 彼女のカードに表示された内容が本当なら、このゲームの役職構成は、俺たちが聞かされたものから変化している。

 それは、単なる人狼ゲームではないということだ。

 そのとき、少女がゆっくりと立ち上がった。

「私も、話しておくことがある」

 全員が彼女を見た。

「私は、役職カードに【市民】と書かれていた。でも、昨夜、カードに新しい表示が出た」

「新しい表示?」

「ええ」

 少女は一度、目を閉じた。

「『あなたは観測者に選ばれました』って」

 俺の心臓が跳ねた。

 観測者。

 そんな役職は、最初の説明にはなかった。

「観測者って、何ができるんだ?」

 短髪の男が尋ねる。

「分からない。ただ……」

 少女は俺を見た。

「一つだけ、分かったことがある」

「何だ?」

「このゲームには、人狼と市民以外に、勝利条件を持つ第三の陣営が存在する」

 沈黙。

 誰もが、その言葉を理解しようとしていた。

 俺は拳を握り締めた。

 第三の陣営。

 そんなものが本当に存在するのなら、俺たちが知っているルールは、最初から不完全だったことにな 

 る。

 そして、彼女は続けた。

「その陣営の勝利条件は――」

 突然、スピーカーが彼女の言葉を遮った。

『議論時間、残り三十秒』

 赤い時計が点滅する。

『投票を開始します』

 机の上に、全員の名前が表示された。

 俺の名前。

 少女の名前。

 短髪の男の名前。

 そして、眼鏡の女性の名前。

 残りの参加者たちは、互いの顔を見合わせていた。

 誰に投票すべきか、決めかねているのだ。

 俺は思考を巡らせた。

 この状況で、俺が処刑される可能性は低い。

 だが、少女が生き残れば、明日には俺の正体が暴かれるかもしれない。

 ならば――。

「俺は、少女に投票する」

 全員がこちらを向いた。

「理由は?」

 短髪の男が尋ねる。

「彼女は、存在するかどうかも分からない第三陣営について話した。しかも、その勝利条件を知っていると言いながら、最後まで説明しなかった」

「それは、スピーカーに遮られたからでしょ?」

 少女が冷静に答える。

「そうだな。だが、彼女の言葉が本当だという証拠はない」

 俺は彼女を見つめた。

「彼女が第三陣営なら、俺たちを争わせることが目的なのかもしれない」

 短髪の男が唸った。

「……確かに、怪しいな」

 少女は反論しなかった。

 ただ、俺を見つめている。

 その目には、恐怖も怒りもなかった。

 あるのは、確信だけだった。

 ――こいつ、何を考えている?

『投票終了』

 壁のスクリーンに結果が表示される。

『処刑対象、該当者なし。最多得票者が複数存在するため、処刑は実行されません』

「……は?」

 俺は目を見開いた。

『同数票の場合、処刑は行われません』

 そんなルールは、最初に説明されていなかった。

 いや、正確には――。

 説明されていないルールが、次々と明らかになっている。

『第三夜を開始します』

 照明が消えた。

 俺の目の前に、残り五人の名前が浮かび上がる。

 少女。

 短髪の男。

 眼鏡の女性。

 そして、ほかの二人。

 俺は、もう一度考えた。

 占い師を殺せば、情報を失わせることができる。

 少女を殺せば、俺を疑う人間が一人減る。

 霊媒師を殺せば、処刑結果を確認する能力を奪える。

 だが、今の俺には、どれが最善なのか分からない。

 そのとき、カードが震えた。

 俺は手元を見下ろす。

 黒いカードの表面に、見覚えのない文字が浮かび上がっていた。

【人狼】

 その下に、赤い文字が追加されている。

【特殊条件:解放】

 そして、その下には――。

『あなたは、第三陣営の存在を認識しました』

『追加勝利条件が開示されます』

 俺は息を呑んだ。

『勝利条件:人狼陣営、または市民陣営のいずれかが勝利するまで生存すること』

 ……何だ、それは。

 第三陣営の勝利条件を知っただけで、俺の勝利条件が変わったのか?

 いや、違う。

 俺は、ある可能性に気づいた。

 このゲームは、単に人狼を探すためのものではない。

 参加者の行動によって、"役職や勝利条件そのものが変化する"仕組みなのだ。

 ならば、俺がすべきことは一つ。

 人狼として市民を全滅させることではない。

 人狼でありながら、市民陣営が勝利する状況を作り出すことだ。

 そうすれば、追加勝利条件を満たせるかもしれない。

 もちろん、そんなことが本当に可能なのかは分からない。

 だが、少なくとも試す価値はある。

『殺害対象を選択してください』

 俺は、少女の名前に指を伸ばした。

 そして――。

 指を止めた。

 もし少女が本当に第三陣営なら、彼女を殺すことは、俺自身の勝利条件を潰すことになるかもしれな

 い。

 俺は別の名前を選んだ。

 眼鏡の女性。

 霊媒師を名乗った彼女なら、役職構成の変化について何か知っているはずだ。

 だが、彼女を殺せば、役職変更の情報が失われる。

 俺は最後の瞬間、選択を変更した。

 短髪の男。

 昨日から感情的に議論へ参加し、情報を整理する能力も低い。

 彼がいなくなれば、議論の主導権を握りやすくなる。

『殺害対象、選択完了』

 俺は目を閉じた。

 これでいい。

 そう思った瞬間、カードに新しい文字が浮かび上がった。

【警告】

『あなたの選択は、第三陣営の勝利条件に影響します』

 ……何だと?

 直後、暗闇の向こうから声が聞こえた。

「ねえ」

 少女の声だった。

「あなた、本当に人狼なの?」

 俺は答えなかった。

「もしそうなら、お願いがあるの」

 少女は、暗闇の中で静かに言った。

「――私と一緒に、このゲームを壊して」

 その瞬間、時計が止まった。

 赤い数字が、00:00を示している。

『異常を検知しました』

『第三陣営による、勝利条件への干渉を確認』

『緊急ルールを適用します』

 俺のカードが、音を立ててひび割れた。

『第三夜、特別議論を開始します』

 そして、スピーカーから最後の言葉が響いた。

『参加者の皆様に、新たな役職を追加します』

 俺は、目の前に浮かび上がったカードの文字を見て、息を呑んだ。

【人狼(裁判官)】

 その下には、こう書かれていた。

『この役職は、勝利条件を変更できます』

 ――ゲームのルールを逆に利用する。

 俺が考えていたことを、誰かが先回りして実現した。

 いったい、誰が?

 俺は暗闇の中で、少女の声を聞いた。

「ようやく始まったね」

 その声は、今までとは違っていた。

 まるで、この瞬間が来ることを最初から知っていたかのように。

 俺は、初めて本当の恐怖を感じた。

 この教室には、人狼がいる。

 市民がいる。

 そして、第三陣営がいる。

 だが――。

 このゲームを支配しているのは、いったい誰なのだろうか。

 赤い時計が再び動き始めた。

 00:01。

 00:02。

 00:03。

 第三夜が、始まった。

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