午前零時の人狼裁判 "第三話"
• 挨拶
初めましての方が殆どと予想しております。神ビスマルク級と申す者です。
小説は読み専だったのですが、少し書いてみたいと思いまして、個人として初の小説「午前零時の人狼裁判」を未熟者ながら書かせて頂こうと思います。
• 注意書き
上記の通り、あくまで未熟者の小説ですので、温かい目で読んで頂けると幸いです。
• 前回のあらすじ
第二夜、主人公は占い師の青年を殺害対象に選ぶが、翌朝になっても死亡者は現れなかった。参加者たちのカードには、当初説明されていなかった能力や表示が出現し始める。霊媒師の女性は役職構成の変化を明かし、少女は自分が「観測者」に選ばれたと告白する。そして、このゲームには人狼陣営と市民陣営以外に、第三の陣営が存在する可能性が浮上した。
投票では最多得票者が同数となり、処刑は回避された。第三夜、主人公のカードには新たな勝利条件が表示される。人狼でありながら、市民陣営か人狼陣営のどちらかが勝利するまで生存するという条件だ。さらに、少女は主人公に「一緒にこのゲームを壊して」と持ちかける。
直後、主人公の役職は【人狼(裁判官)】へと変化した。勝利条件を変更できるという、ゲームそのものを覆しかねない能力を得た主人公。第三夜は、誰も予想しなかった局面へと突入する。
00:04。
00:05。
00:06。
赤い数字が、ゆっくりと進んでいく。
暗闇の中、俺は手元のカードを見つめていた。
【人狼(裁判官)】
その文字は、何度見ても変わらない。
カードの裏側には、さらに小さな文字が浮かび上がっていた。
『裁判官の能力:一度だけ、参加者一名の勝利条件を変更できる』
『変更対象の選択権は、裁判官に帰属する』
『ただし、変更後の勝利条件は、システムによる承認を必要とする』
……勝利条件を変更する、か。
俺は頭の中で情報を整理した。
人狼の本来の勝利条件は、市民陣営を全滅させること。
しかし、俺には新たな条件が追加されている。
人狼陣営、または市民陣営のどちらかが勝利するまで生存すること。
そして、今度は他人の勝利条件まで変更できるようになった。
もし、この能力で市民の勝利条件を変えられるなら。
人狼を処刑すること以外の条件を与えれば、俺が人狼だと発覚しても、必ずしも処刑されるとは限らな
くなる。
いや、もっと単純な方法もある。
人狼の勝利条件そのものを変更すればいい。
例えば――人狼が一人でも生き残れば勝利する、とか。
だが、そんな都合のいい変更が認められるとは思えなかった。
『裁判官の能力は、第三夜以降に使用可能です』
カードの文字が消えた。
直後、教室のスピーカーが鳴った。
『特別議論を開始します』
照明が点灯する。
俺は顔を上げた。
残っている参加者は、俺を含めて六人。
短髪の男。
眼鏡の女性。
少女。
占い師の青年。
そして、一人。
全員が暫く沈黙を貫いていた。
「……まず、状況を整理しよう」
短髪の男が口を開いた。
「昨日は誰も死ななかった。そして、今度は特別議論だと?」
「そうみたいだね」
少女が答える。
「普通の議論とは違うの?」
「分からない。でも、さっき私のカードに新しい表示が出た」
少女は一呼吸置いた。
「『観測者は、裁判官の存在を認識できます』って」
俺の心臓が跳ねた。
裁判官。
俺の役職を、こいつは知っているのか?
「裁判官って何だ?」
眼鏡の女性が尋ねた。
「勝利条件を変更できる役職らしいよ」
「……は?」
短髪の男が目を見開いた。
「そんなの、ありなのか?」
「このゲームでは、ありなんじゃない?」
少女は淡々と言った。
「そもそも、私たちの役職は最初の説明どおりとは限らない。なら、ルールを変える能力が存在しても不思議じゃない」
彼女はそこで言葉を切った。
そして、俺を見た。
「ただし、裁判官が誰なのかは、まだ分からない」
……なるほど。
俺が裁判官だと確信しているわけではない。
ならば、ここで余計な反応を見せるべきではない。
「裁判官がいるなら、そいつを見つける必要があるんじゃないか?」
俺は平静を装って言った。
「勝利条件を自由に変えられるなら、そいつがゲームの主導権を握ることになる」
「そうだね」
少女は頷いた。
「だから、私は提案する」
彼女は全員を見渡した。
「裁判官がいるなら、今すぐ名乗り出てほしい」
沈黙。
当然だ。
そんな能力を持つ人間が、自分から正体を明かすはずがない。
俺も黙っていた。
すると、占い師の青年がゆっくりと手を挙げた。
「……僕から、一つ報告がある」
全員が彼を見る。
「昨夜、僕は殺害されるはずだった」
俺は息を止めた。
「でも、僕は生きている。つまり、誰かが僕の殺害を防いだか、そもそも人狼が殺害を実行できなかったかのどちらかだ」
青年は眼鏡を押し上げた。
「そこで、僕は考えた。このゲームには、まだ公開されていない役職がある。そして、その能力が発動した可能性が高い」
「それは、もう分かってることじゃないか?」
短髪の男が言った。
「いや、違う」
青年は首を横に振った。
「僕は昨夜、占いを行った」
教室の空気が変わった。
「……誰を占ったの?」
眼鏡の女性が尋ねる。
青年は俺を見た。
「彼だ」
――来た。
「結果は、まだ公開されていない。でも、僕のカードには、通常とは違う表示が出ていた」
「どんな表示だ?」
俺は思わず尋ねた。
青年は、俺の反応を確かめるように間を置いた。
「『対象者の役職に、複合情報が存在します』」
……複合情報?
「つまり、どういうこと?」
短髪の男が尋ねる。
「人狼であること以外にも、別の役職情報が重なっている可能性があるということだ」
青年は俺を見つめた。
「たとえば、人狼でありながら、別の特殊役職を持っているとか」
まずい。
こいつは、俺の役職が変化したことに気づいている。
しかし、まだ確証はない。
「それだけで、俺が人狼だと決まったわけじゃないだろ?」
「そうだね。だから、僕は提案する」
青年は机に手を置いた。
「今日の投票では、彼を処刑対象にするべきだ」
教室がざわめいた。
「おいおい、いきなりかよ!」
短髪の男が声を上げる。
「昨日は金髪の男が人狼だった。君はその男をかばっていた。そして今度は、君自身に複合役職の疑いがある」
青年は冷静に続けた。
「これ以上、君を放置するのは危険だ」
俺は唇を噛んだ。
状況は最悪だ。
占い師の青年は、俺を疑っている。
少女も、俺の正体に気づきかけている。
このままでは、今日の投票で処刑される可能性が高い。
だが――。
俺には、裁判官の能力がある。
勝利条件を変更する力。
使い方さえ間違えなければ、この状況をひっくり返せる。
問題は、何をどう変更するかだ。
「……一つ、聞きたい」
俺は青年を見た。
「仮に俺が人狼だったとして、俺を処刑すれば本当にゲームは終わるのか?」
「何?」
「人狼が一人になった時点で、勝利条件はどうなる? 俺が死ねば市民陣営の勝利なのか?」
青年は答えなかった。
それは、俺たちが最初に聞かされたルールの穴だった。
人狼を全員処刑すれば市民陣営の勝利。
確かに、そう説明された。
だが、今はどうだ?
第三陣営が存在する可能性があり、役職構成も変化している。
さらに、裁判官という勝利条件を変更できる役職まで現れた。
この状況で、最初の説明がそのまま有効だと誰が保証できる?
「……確かに、そこは確認する必要があるね」
少女が口を開いた。
俺は彼女を見た。
「裁判官が存在するなら、勝利条件そのものが変化する可能性がある。なら、今までのルールだけを前提に投票するのは危険かもしれない」
「おい、待てよ!」
短髪の男が机を叩いた。
「そんなこと言ってたら、誰も処刑できないじゃないか!」
「だからこそ、裁判官を探す必要があるんだよ」
少女は静かに答えた。
「裁判官が名乗り出れば、勝利条件がどう変化するのか確認できる」
俺は内心、舌打ちした。
こいつは、俺に能力を使わせようとしている。
名乗り出れば、正体が露見する。
黙っていれば、処刑される危険がある。
どちらにしても、俺は追い詰められていた。
ならば――。
能力を使うしかない。
俺は机の下でカードに触れた。
すると、指先に熱が走った。
【裁判官の能力を使用しますか?】
俺は心の中で答えた。
――使用する。
【変更対象を選択してください】
目の前に、参加者の名前が浮かび上がった。
俺。
少女。
占い師の青年。
霊媒師の女性。
短髪の男。
残りの一人。
俺は迷った。
自分の勝利条件を変えることはできないのか?
カードには「参加者一名」としか書かれていない。
自分を対象にできる可能性もある。
だが、失敗すれば終わりだ。
俺は少女の名前を選んだ。
【変更対象:観測者】
【現在の勝利条件:不明】
【新たな勝利条件を入力してください】
……入力?
俺は目を見開いた。
文字を選択するのではなく、自分で条件を設定するらしい。
俺は慎重に考えた。
少女の勝利条件を、人狼陣営か市民陣営のどちらかが勝利するまで生存することに変更できれば、彼女は俺を処刑する必要がなくなるかもしれない。
しかし、そんな条件を設定したところで、彼女が本当に従う保証はない。
それどころか、彼女が第三陣営なら、俺にとって不利になる可能性もある。
俺は、別の条件を入力した。
『観測者は、裁判官の正体を特定するまで処刑されない』
これなら、少なくとも今日の処刑を回避できる。
だが、すぐに警告が表示された。
【条件が不完全です】
【対象者の陣営に対する影響が大きすぎます】
【変更を承認できません】
……失敗か。
俺は歯を食いしばった。
やはり、何でも自由に変更できるわけではない。
ならば、もっと限定的な条件にする。
『観測者は、次回投票において処刑対象に選ばれない』
数秒後。
【条件を審査中……】
俺は息を止めた。
【承認】
その文字が浮かび上がった瞬間、教室の時計が止まった。
00:00。
スピーカーから機械音声が響いた。
『緊急ルールを更新します』
『参加者一名の勝利条件が変更されました』
『観測者は、次回投票において処刑対象に選ばれません』
全員が驚愕した。
「な、何だよ、今の!」
短髪の男が叫ぶ。
「誰かが能力を使ったのか!?」
眼鏡の女性は、自分のカードを見つめていた。
占い師の青年が、ゆっくりと俺を振り返った。
「……君か?」
俺は答えなかった。
しかし、少女は違った。
彼女は自分のカードを確認し、それから俺を見た。
「やっぱり……」
小さな声だった。
「あなたが、裁判官なんだね」
教室が静まり返る。
俺は、もう否定できなかった。
裁判官の能力を使ったことは、システムによって全員に知られてしまった。
ただし、俺が人狼であることまでは、まだ明かされていない。
ここでどう動くかが、勝負の分かれ目だった。
「そうだ」
俺は立ち上がった。
「俺が裁判官だ」
全員の表情が変わった。
「ただし、俺が人狼かどうかは別の話だ」
「ふざけるな!」
短髪の男が叫ぶ。
「そんな都合のいい言い訳が通るかよ!」
「なら、証拠を出してくれ」
俺は冷静に言った。
「俺が裁判官であることは、システムが証明した。だが、俺が人狼であることは、まだ誰も証明していな
い」
「占い師の結果がある!」
青年が反論する。
「複合情報があると言っただけだろう。人狼だと断定したわけじゃない」
「……っ」
青年が言葉を詰まらせた。
俺は続けた。
「それに、裁判官の能力が本当に勝利条件を変更できるなら、俺を処刑すること自体が危険かもしれな
い。俺が死ねば、変更された勝利条件がどうなるか分からないからな」
もちろん、これは半分が嘘だ。
俺が死んでも、変更された条件が残るのかどうかは分からない。
だが、誰にも分からない以上、疑念を植え付けることはできる。
少女は黙っていた。
そして、俺を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。
「……あなた、能力を使ったのは私を守るため?」
「何を言っている?」
「私が次の投票で処刑されないように、勝利条件を変更した」
「それは、俺が裁判官だからだ。誰かが能力の影響を受ける必要があった」
「でも、ほかの人を選ぶこともできたよね?」
俺は答えられなかった。
そのとおりだ。
なぜ俺は、少女を選んだのか。
彼女が第三陣営である可能性を考慮したから?
それとも、彼女の言葉に何かを感じたから?
自分でも分からなかった。
少女は一歩、俺に近づいた。
「あなたは、ゲームを壊したいんじゃない」
「……」
「自分が生き残るために、ルールを利用しているだけ」
その言葉は、妙に胸に刺さった。
俺は反論しようとした。
だが、何も言えなかった。
なぜなら、それは事実だったからだ。
俺は人狼だ。
生き残るためなら、誰かを犠牲にすることも考えていた。
少女を守ったのも、彼女が必要だと思ったからかもしれない。
それでも――。
「……だったら、君はどうなんだ?」
俺は彼女を見返した。
「俺と一緒にゲームを壊したいと言ったな。どうしてだ?」
少女の表情が変わった。
ほんの一瞬だけ、悲しそうな顔をした。
「私には、理由がある」
「その理由は?」
「今は言えない」
「信用しろと?」
「ううん」
少女は首を横に振った。
「信用しなくていい。ただ、私が本気だということだけは覚えておいて」
そのとき、スピーカーが鳴った。
『特別議論、終了』
『投票を開始します』
机の上に名前が表示される。
ただし、少女の名前だけは灰色に変わっていた。
『観測者は、今回の投票における処刑対象に選択できません』
短髪の男が舌打ちした。
「くそっ……! これじゃあ、誰に投票すればいいんだよ!」
占い師の青年は、俺を見つめていた。
「僕は、彼に投票する」
迷いのない声だった。
「裁判官であることは認めた。だが、彼が人狼である可能性は高い。ここで処刑しなければ、取り返しがつかなくなる」
眼鏡の女性も、静かに頷いた。
「私も……彼に投票する」
短髪の男が続く。
「俺もだ!」
そして、俺の名前を選択した。
俺は息を呑んだ。
五票。
俺に投票できる全員が、俺を選んだ。
少女だけが、投票しなかった。
いや、正確には――。
彼女には、投票する必要がなかった。
『投票終了』
赤い数字が点滅する。
『処刑対象、主人公』
……終わった。
俺は椅子から立ち上がった。
「待ってくれ!」
短髪の男が叫ぶ。
「何だよ、今さら命乞いか?」
「違う」
俺は、カードを握り締めた。
「裁判官の能力を、もう一度確認させてくれ」
『裁判官の能力は、一度限りです』
機械音声が即答する。
やはり、二度目はない。
俺は目を閉じた。
そして、最後の可能性に賭けた。
「……なら、俺自身の勝利条件を確認する」
『確認します』
カードが熱を帯びた。
俺は、自分の役職欄を見つめる。
【人狼(裁判官)】
【追加勝利条件:人狼陣営、または市民陣営のいずれかが勝利するまで生存すること】
その下に、新しい文字が浮かび上がった。
【処刑確定時の特殊処理】
『裁判官は、処刑される直前に一度だけ、判決を宣告できます』
――何だと?
俺は顔を上げた。
そんな能力は、さっきまで表示されていなかった。
『判決の内容を選択してください』
机の上に、三つの選択肢が表示される。
【一】処刑を受け入れる。
【二】処刑を一日延期する。
【三】処刑対象を変更する。
俺は、息を呑んだ。
まだ、終わっていない。
このゲームは、最後まで俺に選択を迫ってくる。
処刑を受け入れれば、俺は死ぬ。
一日延期すれば、時間を稼げる。
そして、処刑対象を変更すれば――。
誰かが代わりに死ぬ。
俺は、少女を見た。
彼女は何も言わなかった。
ただ、まっすぐに俺を見つめていた。
その目には、恐怖も怒りもない。
あるのは、俺の選択を待つ静かな覚悟だった。
俺は指を伸ばした。
【三】処刑対象を変更する。
選択した瞬間、スピーカーが鳴り響いた。
『裁判官の判決を受理しました』
『処刑対象の変更先を選択してください』
参加者全員の名前が表示される。
俺は迷った。
誰を選べばいい?
占い師を選べば、俺を追い詰める情報を消せる。
短髪の男を選べば、議論を混乱させられる。
眼鏡の女性を選べば、霊媒師の能力を奪える。
だが、そのどれもが、俺の勝利を確実にするとは限らない。
俺は、少女の名前を見た。
灰色の表示。
処刑対象に選べないはずの名前。
しかし、裁判官の判決なら――。
俺は指を伸ばした。
その瞬間、警告音が鳴った。
『選択不可』
『観測者は、裁判官の判決による処刑対象の変更から保護されています』
……そうか。
彼女だけは、選べない。
俺は歯を食いしばった。
そして、残された名前の中から一人を選んだ。
占い師の青年。
『処刑対象を変更しました』
青年の顔から、血の気が引いた。
「な……何をした?」
俺は答えなかった。
『最終判決を確定します』
床が開く音がした。
青年が立ち上がる。
「待て! 僕は占い師だ! 僕を処刑したら、誰が人狼を見つけるんだ!」
その声が、教室中に響いた。
だが、システムは止まらない。
青年の足元が消えた。
彼は、最後に俺を見た。
「……君は、本当に人狼なのか?」
俺は答えられなかった。
次の瞬間、彼の姿は床の下へと消えた。
『処刑対象の役職を公開します』
スクリーンに文字が浮かぶ。
【占い師】
市民たちの顔が青ざめた。
俺は、静かに息を吐いた。
これで占い師はいなくなった。
だが、同時に、俺は自分が生き残るために一人の人間を犠牲にした。
人狼として。
裁判官として。
そして、何よりも――。
このゲームの参加者として。
『第三夜を終了します』
照明が消えた。
暗闇の中で、カードが再び震えた。
『裁判官の判決により、ゲーム進行に重大な変化が発生しました』
『新たな役職を開示します』
俺はカードを見下ろした。
そこには、見覚えのない文字が浮かび上がっていた。
【執行人】
『執行人は、裁判官の判決を無効化できる』
『ただし、無効化には一つの条件が必要です』
俺は息を止めた。
『執行人は、裁判官の正体を知っていなければならない』
暗闇の向こうから、少女の声が聞こえた。
「……やっぱり、あなたが裁判官だったんだね」
俺は振り向いた。
彼女の手元には、白いカードが浮かび上がっていた。
【観測者/執行人】
俺は、言葉を失った。
少女は、静かに笑った。
「これで、ようやく対等だね」
赤い時計が動き始めた。
00:01。
00:02。
00:03。
そして、スピーカーが告げた。
『第四夜を開始します』
『人狼は、殺害対象を選択してください』
俺は、少女を見つめた。
彼女もまた、俺を見つめていた。
もう、単なる人狼と市民ではない。
俺たちは、互いの正体を知りながら、相手を倒す方法を探している。
このゲームを支配するシステムに逆らうために。
そして――。
誰が最後に、この裁判の判決を下すのかを決めるために。
俺は、暗闇の中でカードを握り締めた。
第四夜。
ここからが、本当の人狼裁判だった。




