午前零時の人狼裁判 "第一話"
• 挨拶
初めましての方が殆どと予想しております。神ビスマルク級と申す者です。
小説は読み専だったのですが、少し書いてみたいと思いまして、個人として初の小説「午前零時の人狼裁判」を未熟者ながら書かせて頂こうと思います。
• 注意書き
上記の通り、あくまで未熟者の小説ですので、温かい目で読んで頂けると幸いです。
• 次回・更新情報の予告
基本的には不定期投稿ですが、興が乗ってきたら、一日二回投稿を行うかもしれません。
あくまで私個人の気まぐれであるということをお忘れなきようお願い致します。
目を覚ますと、俺は見知らぬ教室にいた。
窓は黒い鉄板で塞がれ、壁には赤い数字で「00:00」と表示された時計が掛かっている。机は八つ。 座っている人間も、俺を含めて八人だった。
「……ここ、どこよ?」
隣に座っていた少女が震える声で呟いた。
「私、確か家で寝てたはずなのに……」
そのとき、教室のスピーカーから機械音声が響いた。
『皆様、お目覚めでしょうか。これより、人狼裁判を開始します』
机の上に、黒いカードが一枚ずつ現れる。
俺はカードを裏返した。
【人狼】
「……は?」
思わず声が漏れた。
『参加者八名。人狼二名、市民四名、占い師一名、霊媒師一名。人狼は市民を全滅させれば勝利。市民陣営は人狼を全員処刑すれば勝利です。尚、初期に開示されていない役職が複数ある可能性があります。』
「ふざけるな! こんなの現実じゃない!」
金髪の男が机を叩いた。
『なお、投票によって処刑された者は、その場で死亡します』
教室が静まり返った。
冗談だと言う人間はもういなかった。
壁の時計が動き始める。
『第一夜を開始します』
照明が消えた。
俺は息を殺す。
人狼である俺には、誰か一人を殺す権利が与えられていた。
そして、もう一人の人狼が誰なのかも、カードを通じて知らされていた。
金髪の男。
こいつを相方にすれば、勝てるかもしれない。
だが、問題があった。
俺は、人を殺したことがない。
『夜が明けました』
照明が点灯する。
隣の席に座っていた少女が、机に突っ伏していた。
首筋には、赤い傷。
『第一犠牲者、死亡。議論を開始してください』
「誰がやったんだよ……!」
金髪の男が叫んだ。
俺は黙っていた。
そのとき、眼鏡を掛けた青年が手を挙げた。
「僕は占い師です。昨夜、金髪の彼を占いました」
全員の視線が金髪の男に集中する。
「結果は……人狼でした」
「はあ!? 適当なこと言ってんじゃねえ!」
「なら、君は何の役職なんだ?」
青年の問いに、金髪の男は口を閉ざした。
まずい。
相方が処刑されれば、俺一人で残り六人を相手にしなければならない。
しかも、あの青年が本物の占い師なら、次に俺を占う可能性が高い。
俺は机の下で拳を握った。
――考えろ。
市民が求めているのは真実じゃない。
真実だと信じられる説明だ。
「待ってくれ」
俺はゆっくりと立ち上がった。
「本当に占い師なのか?」
「何が言いたい?」
「占い師なら、なぜ昨夜、金髪の男を占った? 彼を疑う理由はどこにあった?」
青年の眉が動いた。
「それは……直感だよ」
「直感で人を殺すつもりか?」
「そんなつもりはない」
「そもそも、皆混乱していて精査できるような会話があった訳ではないじゃないか」
教室の空気が変わった。
金髪の男が、ここぞとばかりに声を上げる。
「そうだ! こいつは偽物の占い師だ! 俺を犯人に仕立て上げようとしてるんだ!」
俺は内心安堵した。
議論の焦点が、少しずつ青年へ移っている。
しかし、少女の一人が口を開いた。
「……おかしくない?」
全員が振り向く。
「占い師が偽物なら、本物はなぜカミングアウトしてこないの?」
沈黙。
「それに、あなたはどうして、そんなに必死に占い師を疑うの?」
少女の視線が、俺を射抜いた。
心臓が跳ねた。
こいつ、鋭い。
『投票を開始します』
机の上に、全員の名前が表示された。
金髪の男。
占い師の青年。
そして、俺。
三人の名前に票が集まっていく。
結果は――。
『処刑対象、金髪の男。投票数、四票』
「おい、待て! 俺は人狼じゃない!」
金髪の男が俺を睨んだ。
その目が、何かを訴えていた。
裏切ったな。
そう言っているように見えた。
俺は目を逸らさなかった。
次の瞬間、教室の床が開いた。
悲鳴。
落下音。
そして、静寂。
『処刑対象の役職を公開します』
壁のスクリーンに文字が浮かぶ。
【人狼】
市民たちが安堵の息を漏らした。
だが、俺だけは笑えなかった。
『第二夜を開始します』
照明が消える直前、あの少女がこちらを見た。
そして、暗闇の消える間際に小さく呟いた。
「……あなた、最初から彼が人狼だって知ってたんじゃないの?」
俺の背筋に、冷たい汗が流れた。
――この女。
一体、何者なんだ?
暗闇の中、時計が再び動き始める。
残り六人。
人狼は、あと一人。
俺だけになってしまった。
『第二夜。人狼は、殺害対象を選択してください』
俺の目の前に、六人の名前が浮かび上がった。
その中に、あの少女の名前があった。
俺は指を伸ばす。
だが、止めた。
彼女を殺せば、俺は勝てるのか。
それとも――。
『残り十秒』
9。
8。
7。
俺は、ある人物の名前を選択した。
6。
5。
4。
――ゲームのルールを、逆に利用するために。




