迫りくる黒影
翌朝、王城では緊急の作戦会議が開かれていた。
ネロ・ヴァイスが再び動き出した今、王国も対策を講じなければならない。
ガレスは王国全土の地図を広げる。
「昨夜、各地で魔物の異常行動が確認された。」
リーファルが地図を指差す。
「しかも場所が不自然です。どれも王都へ続く街道や村の周辺ばかり……。」
「王都を孤立させるつもりか。」
ガレスの言葉に、部屋の空気が張り詰める。
その時、一人の伝令が駆け込んできた。
「報告します!」
「話せ。」
「北部のアルト村が魔物の群れに襲われています! 現在、村の自警団だけでは持ちこたえられません!」
ガレスは迷わず命令を下す。
「騎士団第三部隊はアルト村へ向かえ!」
そして、さくらの方を向く。
「さくら、お前も同行してくれ。」
「はい!」
アルト村へ向かう中、リーファルは静かに口を開いた。
「さくらさん、昨日ネロの話を聞いてどう思いましたか?」
さくらは少し考えてから答える。
「弟さんを失ったことは、本当に辛かったと思います。」
「……。」
「でも、それで関係ない人たちまで傷つけていい理由にはならない。」
リーファルは小さく笑った。
「私も同じ考えです。」
数時間後。
アルト村へ到着した一行は、その光景に言葉を失った。
家々は燃え、あちこちで悲鳴が響いている。
「遅かったか……!」
騎士たちはすぐに住民の救助へ向かう。
その時――
「グルルル……。」
村の広場に、五体の魔物が姿を現した。
その胸には、すべて黒い魔核石が埋め込まれている。
「また魔核石か!」
さくらは炎をまとい、魔物へ駆け出した。
「みんなは住民を!」
「了解!」
炎剣・紅蓮を振るい、一体目を斬り伏せる。
続けて炎槍を放ち、二体目の魔核石を貫いた。
だが、残る三体は倒れない。
「再生してる……!?」
砕けたはずの魔核石が、黒い霧をまとって少しずつ修復されていく。
リーファルが叫ぶ。
「さくらさん! 以前より強化されている!」
その瞬間、村中に聞き覚えのある声が響いた。
「やはり来たか。」
全員が振り返る。
燃え上がる建物の屋根の上。
そこには、黒いローブをまとったネロ・ヴァイスが立っていた。
「ネロ!」
ネロは静かにさくらを見つめる。
「神山さくら。お前の力は、この程度ではないはずだ。」
「あなたがこの村を襲わせたの!?」
「違う。」
ネロは首を横に振る。
「私は試しているだけだ。」
「試す……?」
「始原の炎の継承者が、本当に世界を変える資格を持つのかを。」
そう言い終えると、ネロは右手を掲げた。
次の瞬間、大地が大きく揺れる。
ゴゴゴゴゴ……!
村の外れの地面が裂け、その中から巨大な黒い腕が姿を現した。
「なっ……!」
「まだ魔物が……!」
ゆっくりと姿を現したのは、高さ十メートルを超える漆黒の巨人。
胸には、これまで見たこともないほど巨大な魔核石が埋め込まれていた。
ネロは静かに言い放つ。
「見せてみろ、始原の炎。」
その言葉を残し、黒い煙とともに姿を消した。
残されたのは、絶望的な強さを持つ巨大な魔物。
さくらは炎剣を握り直し、巨人をまっすぐ見据えた。
「みんなは避難を! この魔物は……私が止める!」




