黒影を追え
グラン森林から王都へ戻ったさくらたちは、すぐに騎士団本部へ報告を行った。
机の上には、森で回収した魔核石の破片と黒い矢が並べられている。
ガレスは腕を組み、低い声で言った。
「敵は俺たちを試している。」
リーファルも頷く。
「しかも、さくらさんの動きを把握している可能性があります。」
「私を……?」
「森での襲撃も、この手紙も、おそらく君への警告だ。」
部屋には重い沈黙が流れた。
その時、一人の伝令が飛び込んでくる。
「ガレス団長!」
「どうした。」
「王都東部で黒いローブを着た人物の目撃情報がありました!」
ガレスは立ち上がる。
「全員、出動だ!」
夕暮れの王都。
さくらたちは目撃された路地へ急いだ。
しかし、人影はない。
「逃げられたか……。」
リーファルが周囲を警戒していると、屋根の上から声が響いた。
「少しは楽しませてくれるかと思ったが……。」
全員が見上げる。
そこには黒いローブをまとい、白い仮面をつけた男が立っていた。
市場でさくらを襲った男だ。
「またあなた……!」
男は笑みを浮かべる。
「覚えていてくれたか。」
ガレスが剣を抜く。
「黒影の者だな。ここで捕らえる。」
男は肩をすくめた。
「捕らえる? できるものなら。」
言葉と同時に、男は屋根から飛び降りる。
着地と同時に、黒い煙が辺りへ広がった。
「気を付けろ!」
煙の中から無数の短剣が飛んでくる。
キン! キン!
騎士たちは何とか防ぐが、視界が悪く敵の位置が分からない。
「どこ……!」
その瞬間。
男はさくらの背後に現れた。
「遅い。」
「っ!」
さくらは振り返りながら炎を放つ。
だが男は紙一重でかわし、距離を取る。
「以前より成長しているな。」
「あなたの目的は何!」
男は答えず、右手を掲げた。
すると路地の影から、三体の黒い魔物が姿を現す。
狼のような姿だが、その全身は黒い霧に包まれ、胸には魔核石が埋め込まれていた。
「魔核獣……。」
リーファルが息をのむ。
「こんなものまで作れるのか。」
「これは挨拶代わりだ。」
男は静かに言う。
「生き残れたら、また会おう。」
そう言い残し、黒い煙とともに姿を消した。
残された三体の魔核獣が一斉に襲いかかる。
「みんな下がって!」
さくらは炎をまとい、剣のような形へ変化させる。
「炎剣――紅蓮!」
燃え盛る炎の剣を握りしめ、最初の一体へ斬りかかった。
炎の軌跡が夜の路地を照らす。
さくらは、初めて"炎を武器として扱う戦い"に挑むのだった。




