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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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初めての任務

黒影の襲撃から三日。

王都では警備が強化され、騎士団は黒影の行方を追っていた。しかし、有力な手がかりは何一つ見つかっていなかった。


-------------------------

その朝、さくらは騎士団長ガレスに呼び出される。

「神山さくら。お前に正式な任務を与える。」

机の上には一枚の地図が広げられていた。

「王都の北西にあるグラン森林で、冒険者の失踪事件が相次いでいる。」

「魔物の仕業ですか?」

「それが分からん。調査に向かった部隊も戻ってきていない。」

ガレスは真剣な表情で続けた。

「今回は討伐ではなく、原因究明が目的だ。リーファルと騎士三名が同行する。」

「……分かりました。」

さくらは迷わず頷いた。


異世界に来てから戦いは経験した。

だが、自ら任務として赴くのはこれが初めてだった。

翌日、一行はグラン森林へ足を踏み入れる。

昼間だというのに森の中は薄暗く、不気味な静けさが漂っていた。

「鳥の声もしない……。」

さくらが呟く。


リーファルは地面にしゃがみ込み、折れた枝や足跡を調べ始めた。

「戦闘の跡だ。」

少し進むと、木々がなぎ倒された広場に出た。

そこには折れた剣や砕けた盾が散乱している。

「冒険者たちの装備……。」

その時だった。

ガサッ……

茂みが大きく揺れる。

騎士たちが一斉に武器を構えた。

現れたのは、全身が黒い霧に包まれた巨大な熊だった。

「ブラックベア!」

通常より二回りは大きく、その両目は赤黒く濁っている。


「様子がおかしい……!」

ブラックベアは咆哮を上げると、一直線に突進してきた。

騎士が盾で受け止める。

しかし、その一撃だけで盾は粉々に砕け散った。

「なんて力だ!」

「下がって!」

さくらは前へ飛び出す。

炎をまとった拳でブラックベアの横腹を殴りつける。

ドンッ!!

巨体は吹き飛ぶが、すぐに立ち上がった。

「効いてる……でも倒れない!」

その時、リーファルが叫ぶ。

「胸を見ろ!」

さくらが目を凝らすと、ブラックベアの胸には黒い結晶――魔核石が埋め込まれていた。


「また魔核石……!」

普通の魔物ではない。

誰かが意図的に強化した魔物だった。

ブラックベアは再び突進してくる。

さくらは炎を両手に集め、小さく圧縮する。

「これで……終わり!」

放たれた炎は一本の槍となり、一直線にブラックベアの胸を貫いた。

パリンッ!

魔核石が砕ける。

同時にブラックベアの黒い霧は消え、その巨体は静かに倒れた。

辺りに静寂が戻る。

「魔核石を壊したら、魔物も止まった……。」

リーファルは砕けた結晶を拾い上げる。

「やはり間違いない。魔核石が魔物を異常な状態にしている。」

その直後、森の奥から一本の黒い矢が飛んできた。

ヒュンッ!

矢はリーファルの足元に突き刺さる。

矢には一枚の紙が結び付けられていた。

ガレスが紙を開くと、そこには血のように赤い文字でこう書かれていた。

『始原の炎は、いずれ我らが手に渡る。』

さくらはその言葉を見つめ、静かに拳を握った。

敵は、自分たちの行動を見ている。


そして、黒影との本当の戦いが、今まさに始まろうとしていた。

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