新たな旅立ち
ゼノスとの戦いから一年。
ファンドルト王国には、穏やかな日々が戻っていた。
王国では歴史の見直しが進み、人間だけでなくエルフや獣人も平等に暮らせる新たな制度が整えられ始めていた。
その変化を見届けたさくらは、王都の城門の前に立っていた。
大きなリュックを背負い、腰には愛剣・紅蓮。
「本当に行くのか?」
見送りに来たガレスが腕を組んで尋ねる。
「はい。」
さくらは笑顔で頷く。
「この世界には、まだ行ったことのない場所がたくさんあります。もっといろんな人と出会って、もっとこの世界を知りたいんです。」
リーファルも優しく微笑む。
「あなたらしいですね。困ったことがあれば、いつでも王都へ戻ってきてください。」
「もちろん!」
城門を出ようとしたその時、一人の兵士が慌てて駆け寄ってきた。
「さくらさん!」
「どうしたの?」
兵士は一通の封筒を差し出した。
「今朝、ギルド経由であなた宛に届きました。」
「私に?」
封筒には差出人の名前はない。
ただ一つだけ、見覚えのある紋章が描かれていた。
――黒い翼を模した紋章。
「黒影……?」
思わず息をのむ。
黒影はすでに解散したはずだった。
封を開けると、中には短い手紙が入っていた。
『始原の炎に選ばれし者へ。
北方の地「アルディア山脈」にて、古代遺跡が目覚めた。
そこには、王国が知らない"世界の真実"が眠る。
信じるかどうかは、お前次第だ。』
差出人の名前は、最後まで書かれていなかった。
「誰が送ったんだろう……。」
ガレスが手紙を覗き込む。
「いたずら、という内容には思えんな。」
リーファルも険しい表情になる。
「アルディア山脈……。」
「古い伝承では、神々が最初に降り立った土地と言われています。」
「神々?」
さくらは目を丸くした。
「そんな場所があるの?」
「ええ。」
「ですが、誰一人として奥地から戻った者はいません。」
さくらはしばらく手紙を見つめていた。
そして、小さく笑う。
「決めた。目的地はアルディア山脈!」
ガレスは苦笑する。
「やはりそうなるか。」
「危険だぞ。」
「危険だから行くんです。」
さくらは紅蓮を握り直した。
「この世界には、まだ知らないことがたくさんある。だったら、自分の目で確かめたい。」
その瞳には、異世界へ来た日のような期待が輝いていた。
新たな旅が、今始まる。
だが、さくらはまだ知らない。
アルディア山脈で待ち受ける真実が、この世界の成り立ち、そして自分が異世界へ転生した本当の理由へと繋がっていることを。
こうして、神山さくらの新たな冒険の幕が上がった。




