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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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新たな夜明け

轟音とともに、ゼノスは完全に崩れ落ちた。


巨大な黒い結晶は光の粒となって空へ舞い上がり、やがて朝日に溶けるように消えていく。

静寂が訪れた。

誰もが崩れ落ちたゼノスを見つめたまま、言葉を失っていた。


「……終わった。」

さくらが小さく呟く。

その声を合図にしたように、騎士たちから歓声が上がった。

「勝ったぞ!」

「ゼノスが消えた!」

「助かったんだ……!」


王都からも人々が姿を見せ始める。

涙を流しながら抱き合う親子。

空を見上げて祈る老人。

誰もが、生き残れた喜びを噛みしめていた。


その輪から少し離れた場所で、アベルは膝をついていた。

両手には、もはや黒い結晶は残っていない。

融合が解け、本来の姿へ戻っていた。

そこへガレスが歩み寄る。

騎士たちは一斉に剣を構えた。

「アベル。」

ガレスの声は静かだった。

「お前を、ファンドルト王国反逆罪および大量殺人の容疑で拘束する。」

アベルは抵抗しなかった。

「……ああ。」

自ら両手を差し出す。

騎士が手枷を掛ける。


その様子を見ていたさくらは、ゆっくりと近づいた。

「アベル。」

アベルは顔を上げる。

「ありがとう。」

「……?」

「最後に、逃げなかったから。」

アベルは苦笑した。

「礼を言われる資格はない。」

「それでも。」

さくらは微笑んだ。

「生きるって決めてくれてよかった。」


アベルは何も答えなかった。

だが、その表情からは憎しみが消えていた。

ネロは静かにその様子を見守っていた。


そこへガレスが近づく。

「ネロ・ヴァイス。」

周囲の騎士たちにも緊張が走る。

ネロもまた、王国に追われてきた人物だった。

ガレスはゆっくりと言葉を続ける。

「お前にも多くの罪がある。」

「……ああ。」

ネロは逃げることなく頷く。

「裁きは受ける。」


その時だった。

「待ってください!」

さくらが二人の間へ立った。

「ネロは確かに罪を犯しました。でも、今日この国を救ったのもネロです。」

騎士たちがざわつく。

ガレスは静かにさくらを見る。

「だからといって、罪が消えるわけではない。」

「分かってます。」

さくらは頷く。

「だからこそ、逃げずに裁きを受けるんです。」

ネロは少し驚いたようにさくらを見た。

やがて、小さく笑う。

「まったく。最後まで、お前らしい。」

ガレスはしばらく黙っていた。

そして剣を鞘へ納める。

「ネロ・ヴァイス。アベル。二人とも王都へ同行してもらう。逃亡の意思がないなら、拘束は最低限に留める。」

ネロは静かに頷いた。

「異論はない。」

アベルも抵抗しなかった。


その光景を見つめながら、カインは静かに空を見上げていた。

黒影は終わった。

長い間、自分の居場所だった組織はもう存在しない。

「これから……どうするんですか。」

ネロへ問いかける。

ネロは少し考え、穏やかに笑った。

「まずは、自分の罪と向き合う。その先は……その時に考えよう。」

カインも小さく笑う。

「そうですね。」


さくらは昇り始めた朝日を見つめる。

この世界へ来た日には想像もしなかった未来。

失われたものは多い。

それでも、新しい一歩を踏み出せる未来がある。

朝日が、ファンドルト王国を優しく照らしていた。

――戦いは終わった。


だが、それぞれの未来は、ここから始まる。

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