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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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黒影の終焉

ゴゴゴゴゴ……!!

ゼノスの崩壊はさらに激しさを増していた。

天井から巨大な結晶が次々と落下し、心臓部は今にも崩れ落ちようとしている。


「ネロ様!」

カインが叫ぶ。

「もう時間がありません!」

しかし、ネロはアベルの前から動かなかった。

「一緒に帰るぞ。」

静かに、しかし強い口調で言う。

アベルは小さく首を振った。

「無理だ。」

「まだそんなことを言うのか。」

「私は多くの命を奪った。」


アベルは自分の両手を見つめる。

黒い結晶に覆われたその手は、人間のものとは思えなかった。

「こんな私に、生きる資格はない。」

「資格を決めるのは、お前じゃない。」

ネロは迷わず答える。

「罪を裁くのは法だ。償うかどうかを決めるのは、お前自身だ。死ぬことは償いじゃない。」


アベルは言葉を失った。

その様子を見ていたさくらも、ネロの隣へ歩み寄る。

「アベル。」

「……。」

「私はあなたを許せるなんて言わない。たくさんの人を苦しめた。だから罪は償わなきゃいけない。」

アベルは静かに頷く。

「そうだ。」

「でも。」

さくらはまっすぐアベルを見つめた。

「償うためには、生きていなきゃ駄目。」

「……!」

その言葉は、アベルの胸に深く突き刺さった。


ネロも昔、同じようなことを言っていた。


『どんな罪を背負っても、生きて償え。』


忘れたはずの言葉が蘇る。

アベルは苦しそうに笑った。

「本当に……。お前たちは変わらないな。」


突然、心臓部が大きく揺れる。

ドォォォン!!

巨大な柱が倒れ、出口への通路が崩れ始めた。

「まずい!」

カインが剣で岩を払いのける。

「急いでください!」

ネロは再び手を差し伸べた。

「アベル。帰るぞ。」

長い沈黙。

やがてアベルは震える手をゆっくりと伸ばした。

その手を、ネロが強く握る。


「……すまない。」

アベルが初めて謝罪の言葉を口にした。

ネロは小さく笑う。

「その言葉は、生きてから聞こう。」

四人は崩れゆく通路を全力で駆け抜ける。

さくらが先頭を走り、炎で落石を焼き払う。

カインが最後尾で仲間を守る。

ネロは肩を貸しながらアベルを支える。

出口まであと少し。

しかし、その瞬間だった。

ゴゴゴゴッ!!

通路全体に巨大な亀裂が走る。

「しまっ――」

カインの足元が崩れ落ちた。

「カイン!」

ネロが叫ぶ。

カインはとっさに近くの岩へ手を伸ばすが、指先は届かない。

奈落へ落ちていく、その一瞬。


さくらは迷わず飛び出した。

「カイン!!」

炎を足にまとい、大きく跳躍する。

そして――

ガシッ!

さくらはカインの腕をしっかりとつかんだ。

「離さない!」

カインは驚いたように目を見開く。

「さくら……。」

その腕を今度はネロがつかむ。


さらにガレスたちが外から展開していた救助用の転移魔法陣が輝き始める。

眩い光が四人を包み込んだ。

次の瞬間。

ゼノスの外へ転移した四人の背後で、巨大な兵器は轟音とともに崩れ落ちた。


長きにわたる戦いは、ついに終わりを迎えたのだった。

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