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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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託された未来

「はああああぁぁぁっ!!」

さくらは黄金の炎をまとった紅蓮を、巨大な魔核石へ突き立てた。


その瞬間――。

ゴォォォォォッ!!

眩い黄金の炎が魔核石全体を包み込む。

暴走していた禍々しい魔力は、少しずつ穏やかな光へと変わっていく。

「効いてる……!」

ネロが叫ぶ。


しかし次の瞬間、魔核石が激しく脈動した。

ドクンッ!!

逆流した魔力がさくらを襲う。

「きゃあっ!」

吹き飛ばされそうになるさくらの腕を、誰かがつかんだ。

「離しません!」

カインだった。

傷だらけの体で踏ん張り、さくらを支えている。

「カイン!」

「炎を止めないでください!」

「でも、あなたの傷が……!」

「私は大丈夫です。」


そう言いながらも、口元から血が流れていた。

その様子を見たネロは、自分の剣を静かに地面へ突き立てる。

「アベル。」

床に倒れたアベルへ歩み寄る。

アベルは力なく笑った。

「勝ったつもりか……?」

「違う。」

ネロは首を振る。

「私は、お前に勝ちたかったわけじゃない。」

「……。」

「昔のお前を、取り戻したかった。」

アベルは目を閉じる。


「もう……戻れない。」

「戻れる。」

ネロは静かに答えた。

「罪は消えない。だが、人はやり直せる。それを教えてくれたのは……さくらだ。」

アベルはゆっくりとさくらを見る。

黄金の炎に包まれながら、それでも諦めずに戦う姿。

その姿は、かつて理想を語り合っていた頃のネロと重なって見えた。


「……私は。間違えたのか。」

「間違えた。」

ネロは迷わず答える。

「だが、お前の『世界を変えたい』という願いまで間違いだったとは思わない。」

「……。」

「方法を誤っただけだ。」

アベルは小さく笑う。

それは、この物語で初めて見せた穏やかな笑顔だった。

「最後まで……甘い男だな。」

その時、魔核石のひびが一気に広がる。


「ネロ様!」

カインが叫ぶ。

「限界です!」

ネロはすぐに状況を理解した。

「さくら!」

「はい!」

「あと一撃だ!」

「これで終わらせる!」

さくらは紅蓮を両手で握り締める。

黄金の炎が天井へ届くほど大きく燃え上がった。

「始原の炎――」

「終焉ノしゅうえんのほむら!!」

黄金の一閃が魔核石を貫く。


一瞬の静寂。

そして――

パリン……。

小さな音とともに、巨大な魔核石は光の粒となって砕け散った。

ゼノスを満たしていた禍々しい魔力が消えていく。

「終わった……。」

さくらがその場に膝をつく。

しかし、安堵したのも束の間だった。

ネロの表情が曇る。

「……いや。」

「まだ終わっていない。」

「え?」

ネロは天井を見上げた。

ゼノスは動きを止めたものの、崩壊そのものは止まっていなかった。

巨大な亀裂が広がり、岩や結晶が次々と落下してくる。

「このままではゼノスごと崩れる!」

カインが周囲を見回す。

「脱出しなければ!」

しかし、アベルはその場から動こうとしなかった。

「私は行かない。」

「アベル!」

「ここが……私の終着点だ。」


ネロはアベルへ手を差し伸べる。

「来い。」

アベルはその手を見つめ、静かに目を閉じた。

「ネロ。」

「……。」

「最後に、お前へ一つだけ頼みがある。」

ネロは黙って頷いた。

アベルはゆっくりと口を開く。


「黒影を……終わらせてくれ。」

その言葉を残し、アベルは静かに笑った。

崩壊するゼノスの中、ネロは差し出した手を握りしめたまま動けなかった。

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