表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
PR
33/47

最後の仲間

黒い光が消えた時、そこに立っていたのは、もはや人間とは呼べない姿のアベルだった。


全身を黒い結晶が覆い、右腕は巨大な結晶の刃へと変わっている。

しかし、その瞳だけは昔と変わらないままだった。

「これが……私の理想だ。」

アベルの声がゼノスの心臓部に響く。

「世界を支配する王の姿。」

ネロは剣を構えながら、小さく首を振る。


「違う。」

「……。」

「その姿は王ではない。」

「力に飲み込まれた、一人の人間だ。」

アベルの表情が歪む。

「力に飲み込まれただと?」

「そうだ。」

ネロは一歩前へ出た。


「お前は昔、誰よりも人の命を大切にしていた。村で傷ついた子どもを助けるため、自分の食料まで分け与えたこともあった。貧しい獣人の集落へ薬を届けるため、何日も眠らずに走り続けたこともあった。そんなお前だったから、私は黒影を一緒に作った。」

さくらは驚いた。

「アベルが……。」

カインも静かに頷く。

「あの頃のアベルは、誰よりも優しい人でした。」


アベルは拳を震わせる。

「黙れ……。」

「忘れたのか?」

ネロは続ける。

「黒影を作った夜、お前は言った。」


『誰も泣かない世界を作ろう。』


「違う!」

アベルが怒鳴る。

「だから私は変わったんだ!優しさだけじゃ誰も救えなかった!国王は笑っていた!民は苦しみ続けた!俺たちは何も変えられなかった!」

怒りと悲しみが入り混じった叫びだった。

ネロはその言葉を静かに受け止める。

「……ああ。私は弱かった。お前を止められなかった。黒影の仲間としても、友としても。」

ネロは剣を下ろした。

「だから、今度こそ終わらせる。お前を殺すためじゃない。お前を止めるために。」


アベルは苦しそうに笑った。

「今さら遅い。私はもう戻れない。」

その瞬間、巨大な結晶の刃を振り下ろす。

「ネロ様!」

カインが飛び出し、黒い長剣で受け止める。

ガァァン!!

凄まじい衝撃が走る。

床が砕け、カインは数メートル吹き飛ばされた。

「カイン!」

さくらが駆け寄る。

「大丈夫?」

「……まだ戦えます。」

肩の傷は開き、血が流れている。

それでもカインは立ち上がった。

ネロはそんなカインを見て、静かに笑う。


「昔から無茶ばかりだ。」

「ネロ様が教えたんですよ。」

「仲間は命を懸けて守るものだと。」

その言葉に、ネロは苦笑した。

「そうだったな。」

そして、さくらの方を向く。

「さくら。」

「はい。」

「これから先は、お前が中心になれ。」

「え?」

「私はアベルを引きつける。カインがお前を心臓部まで導く。そこで始原の炎を魔核石へ流し込め。それしかゼノスを止める方法はない。」

さくらは頷いた。

「分かった。」

ネロは剣を構える。

その表情には迷いがなかった。

「アベル。最後にもう一度だけ言う。お前は今でも、私の仲間だ。」


アベルの瞳がわずかに揺れる。

しかし次の瞬間、その迷いを振り払うように咆哮を上げた。

「ならば、仲間だったお前の手で……私を超えてみせろ!」

心臓部を揺るがす衝撃とともに、ネロはアベルへ駆け出した。

かつて同じ夢を見た二人の、最後の戦いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ