王都ファンドルト
翌朝。
さくらたちは、ファンドルト王国の王都へと到着した。
高くそびえる白い城壁の内側には、大勢の人々が行き交っている。
人間だけではない。
武器を背負った獣人、魔法書を抱えるエルフ、翼を持つ亜人まで、さまざまな種族が共に暮らしていた。
「すごい……。」
思わず見渡すさくらに、リーファルが微笑む。
「ここがファンドルト王国の中心だ。平和な国だったんだが……最近は魔物の出現が急増していてな。」
そのまま一行は王城へ向かった。
大広間では、王国騎士団長のガレスが待っていた。
筋骨隆々の男は、さくらを鋭い目で見つめる。
「君が、魔炎狼を一撃で倒したという転生者か。」
「……転生者?」
聞き慣れない言葉に、さくらは首をかしげる。
「この世界には、ごく稀に異世界から来る者がいる。だが、そのほとんどは特別な力を持たない。」
ガレスは腕を組んだ。
「だからこそ、その力が本物か確かめさせてもらう。」
騎士たちが訓練場へ案内する。
そこには魔力で作られた巨大な岩人形が並んでいた。
「これを一体倒してみろ。」
さくらは深呼吸する。
(力任せじゃ駄目……。)
炎を右手に集め、ゆっくりと圧縮していく。
拳ほどの大きさになった炎は、まるで太陽のように輝いていた。
「いけっ!」
炎は一直線に飛び、岩人形へ命中する。
次の瞬間――
ドォォォン!!
轟音とともに岩人形は粉々に砕け散った。
訓練場は静まり返る。
「一撃……。」
「魔力測定器が反応しきれていないぞ……。」
騎士たちは息を呑んだ。
ガレスも驚きを隠せず、ゆっくりと口を開く。
「間違いない。その力は王国でも確認されていない未知の炎だ。」
その時だった。
王城に警鐘が鳴り響く。
カーン! カーン! カーン!
兵士が血相を変えて駆け込んでくる。
「報告します! 西門付近に大量の魔物が出現しました!」
「数は!」
「五十以上! 住民が避難中です!」
ガレスは剣を抜いた。
「総員、西門へ向かえ!」
リーファルも弓を握る。
さくらは窓の外を見る。
王都の空には、不気味な黒煙が立ち上っていた。
転生してから初めて迎える、本格的な戦いが始まろうとしていた。




