王都への道
森を抜ける細い街道を進み、さくらはエルフの偵察隊と共にファンドルト王国に到着した。
「ここがファンドルト……。」
目に映る景色は、日本とはまるで違う。
巨大な木々が空を覆い、獣人が荷車を引き、人間とエルフが当たり前のように言葉を交わしている。
「珍しいか?」
隣を歩くリーファルが笑う。
「ええ……私のいた国とは全然違います。」
「君は記憶を失っているようだが、不安なら我々が王都まで案内しよう。」
その言葉に、さくらは静かに頷いた。
しかし、その時だった。
「止まれ!」
隊員の一人が叫ぶ。
街道の先には、壊れた馬車が横倒しになっていた。
周囲には深い爪痕。
そして血痕。
「魔物の襲撃だ。」
リーファルが弓を構えた。
突然、茂みから四体の魔物が飛び出す。
鋭い牙を持つ黒い獣――シャドウウルフ。
「数が多い!」
隊員たちが迎え撃つが、一体がすり抜けて子どもを抱えた女性へ向かっていく。
「危ない!」
さくらは考えるより先に駆け出した。
右手を突き出す。
「燃えろ!」
轟ッ!!
炎の柱が一直線に走り、シャドウウルフを包み込む。
一瞬で灰となった魔物を見て、その場は静まり返った。
「……一撃。」
「魔力の収束が見えなかったぞ。」
隊員たちが驚きを隠せない。
だが、残る三体は怯むことなく襲いかかる。
さくらは深く息を吸う。
炎をただ放つだけでは倒せない。
そう思った瞬間、炎が彼女の足元を渦巻いた。
「これなら……!」
炎は一本の槍となって宙に浮かんだ。
「行け!」
三本の炎槍が放たれ、三体の魔物を正確に貫いた。
爆炎が上がり、戦いは終わる。
リーファルは目を見開いた。
「炎を形に変えた……?」
さくら自身も驚いていた。
(こんなことまでできるんだ……。)
女性は涙を流しながら頭を下げる。
「助けてくださって、本当にありがとうございました。」
さくらは少し照れながら笑う。
「無事でよかったです。」
その様子を見つめるリーファルは、小さくつぶやいた。
「やはり君の力は、普通の炎魔法ではない……。」
夕日が街道を赤く染める。
その先には、ファンドルト王国の巨大な城壁が姿を現していた。
だが、さくらたちはまだ知らない。
王都ではすでに、新たな脅威が彼女の到着を待ち受けていることを――。




