炎の転生者
神山さくら、25歳。
ごく普通の会社員だった私の人生は、一瞬で終わった。
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仕事帰りの夜道。 強烈な光が視界を埋め尽くし、次に目を開けた時には見知らぬ森の中に倒れていた。
「……ここ、どこ?」
木々は見上げるほど高く、葉は青白く光っている。 聞いたこともない鳥の鳴き声が響き、空には地球には存在しない二つの月が浮かんでいた。
「夢……じゃないよね」
立ち上がろうとした、その時だった。
ガサッ――。
茂みから現れたのは、全身が黒い毛で覆われた狼だった。
いや、狼ではない。
体長は三メートル近くあり、赤い瞳からは明確な殺意が感じられる。
「え……ちょっと待って!」
魔物。
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、黒狼は飛びかかってきた。
反射的に右手を前へ突き出す。
「来ないで!」
ドゴォォォン!!
真紅の炎が爆発した。
一直線に放たれた業火は黒狼を飲み込み、周囲の木々を焦がしながら吹き飛ばす。
数秒後。
そこには黒い灰しか残っていなかった。
「……え?」
自分の手を見る。
火傷一つない。
「今……私が?」
炎はまだ掌の上で揺れていた。
意識すると小さくなり、また大きくなる。
まるで自分の体の一部のように操れる。
「炎……」
その時、森の奥から複数の足音が近づいてきた。
「いたぞ!」
姿を現したのは耳の長い青年だった。
銀色の髪に緑の瞳。
その後ろには獣耳を持つ戦士や鎧を着た人間たちが続いている。
「君、大丈夫か?」
「……あなたたちは?」
青年は警戒しながらも名乗った。
「私はエルフの偵察隊隊長、リーファル。ここはファンドルト王国の北方森林だ。」
ファンドルト王国。
聞いたことのない国名。
やはりここは日本ではない。
「君がさっき魔炎狼を倒したのか?」
さくらは黙って頷く。
隊員たちはざわついた。
「あの魔炎狼を一撃だと……」
「魔法陣も詠唱もなかったぞ。」
リーファルだけは真剣な表情を崩さない。
「君……何者なんだ?」
さくらは小さく息を吐いた。
「それが……私にも分からないんです。」
その言葉を聞いたリーファルは少し考え込み、やがて静かに言った。
「なら、まずは王都へ来てほしい。ファンドルトでは今、原因不明の魔物の大量発生が起きている。君の力が、その戦いの鍵になるかもしれない。」
さくらは炎を握りしめる。
自分がなぜこの世界へ来たのか。
なぜ炎を操れるのか。
その答えはまだ分からない。
だが一つだけ確かなことがあった。
この世界では、生き残るためには戦わなければならない。
そして――。
彼女の炎は、やがて世界を揺るがす戦いへと繋がっていく。




