共闘
「グオオオオォォッ!!」
巨大な魔物の咆哮が白霧の丘を震わせる。
一歩踏み出すだけで大地が揺れ、黒い結晶が体から飛び散った。
「全員、散開しろ!」
ガレスが叫ぶ。
騎士たちは一斉に距離を取る。
だが、魔物は右腕を振り下ろした。
ドォォン!!
地面が砕け、数人の騎士が吹き飛ばされる。
「くっ……!」
「負傷者を下がらせろ!」
リーファルは矢を放つ。
矢は魔物の体に命中するが、黒い結晶に弾かれてしまう。
「効かない……!」
さくらも炎剣・紅蓮を構えた。
「紅蓮・炎牙!」
炎の斬撃が魔物を襲う。
しかし、表面の結晶が砕けただけで、大きなダメージにはならない。
「硬すぎる……!」
その時だった。
「胸だ!」
ネロが叫ぶ。
「胸の魔核石を狙え!」
ガレスはネロを見た。
「お前、あれを知っているのか!」
「あれは私の魔法じゃない!」
ネロは険しい表情で続ける。
「誰かが私の研究を利用し、さらに危険な魔核石を作り出した!」
その言葉に、さくらは息をのむ。
「そんな……。」
つまり、この魔物を生み出した黒幕はネロではない。
もっと別の誰かがいる。
「話は後だ!」
ガレスは剣を構える。
「まずはあの魔物を倒す!」
ネロも静かに頷いた。
「ああ。」
一瞬だけ、さくらと目が合う。
敵同士のはずの二人だったが、その考えは一致していた。
「今だけは協力しよう。」
ネロが右手を掲げる。
紫色の魔法陣が展開され、無数の魔法鎖が魔物へ伸びる。
「動きを止める!」
鎖が魔物の腕へ巻き付き、一瞬だけ動きが止まった。
「今だ!」
ガレスが飛び出す。
「はああぁっ!」
鋭い一撃。
黒い結晶が大きく砕ける。
続いてリーファルの矢が胸へ突き刺さる。
「まだ足りない!」
魔物は鎖を引きちぎり、怒り狂ったように暴れ始めた。
「ネロ様!」
カインが前へ出る。
肩に矢が刺さったままだというのに、黒い長剣を構える。
「無茶だ!」
ネロが止める。
しかしカインは笑った。
「あなた一人に戦わせるわけにはいきません。」
その姿を見たさくらも前へ踏み出す。
「私も行く!」
「さくら!」
「みんなで倒そう!」
さくらとカイン。
これまで何度も剣を交えた二人が、初めて同じ敵へ向かって駆け出した。
紅蓮と黒剣が交差する。
炎が結晶を焼き、カインの剣が砕けた隙を切り裂く。
「右だ!」
「分かってる!」
言葉を交わすたび、二人の連携は不思議なほど噛み合っていく。
その様子を見たガレスは驚きを隠せなかった。
「敵同士とは思えん……。」
ネロは静かに呟く。
「だから選ばれたのか、さくら。」
そして巨大な魔物の胸に、大きな亀裂が走る。
紫色の魔核石が、ついに姿を現した。
「今なら届く!」
さくらは紅蓮を強く握る。
カインも剣先を魔核石へ向けた。
二人は互いに頷く。
「いくよ!」
「ああ。」
敵だった二人の剣が、同じ標的へ向かって振り下ろされた。




