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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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交錯する刃

「待って!!」

さくらの叫びが白霧の丘に響く。


しかし、その声も届かず、一人の騎士がネロへ斬りかかった。

「罪人め!」

ガキィン!!

騎士の剣は、カインの黒い長剣に受け止められる。

「それ以上、ネロ様には近づかせない。」

カインは騎士を押し返した。

「さくら! そこを離れろ!」

ガレスが叫ぶ。

「団長、違うんです!」

「何が違う!」

「ネロは今日、戦うために来たんじゃありません!」

ガレスは一瞬だけ動きを止めた。

その隙を狙うように、先ほど矢を放った若い騎士が再び弓を引く。

「油断するな! 相手は大量殺人犯だ!」

「やめて!」


さくらが叫んだ、その瞬間。

ヒュンッ!

放たれた矢は、真っすぐネロの胸を狙って飛ぶ。

ネロは避けようとしなかった。

「ネロ様!」

カインが迷わず前へ飛び出す。

ドスッ――。

矢はカインの左肩に深く突き刺さった。

「カイン!」

ネロが思わず駆け寄る。

カインは顔をしかめながらも、剣を握る手を離さない。

「問題ありません……。」

「馬鹿者!」

ネロの声が震える。

「なぜ、かばった!」

カインは苦しそうに笑った。

「昔……言ったでしょう。」

「……。」

「あなたの命は……私が守ると。」


幼い日に交わした約束が、ネロの脳裏によみがえる。


『俺の命は、お前にもらった。だから今度は俺がお前を支える。』


ネロは拳を握り締めた。

「もう……そんな約束はいい!」

「嫌です。」

カインは静かに首を振る。

「私は、最後まであなたの剣です。」


その言葉を聞いたさくらは胸が締め付けられた。

敵同士であるはずなのに、二人の絆は本物だった。

「みんな、武器を下ろして!」

さくらはガレスたちへ向き直る。

「お願い! もう戦わないで!」

ガレスは険しい表情のまま剣を握る。

「さくら。」

「ネロは話をしに来ただけなんです!」

「……。」

「ここで戦ったら、本当のことは何も分からない!」


その言葉に、ガレスは静かに目を閉じる。

しばらくの沈黙の後、ゆっくりと剣を下ろした。

「全員、武器を収めろ。」

騎士たちは驚いた表情を浮かべる。

「ですが団長!」

「命令だ。」

やがて騎士たちも武器を下ろした。

白霧の丘に、静寂が戻る。

ネロはさくらを見つめ、小さく笑った。

「やはり、お前を選んだのは間違いではなかった。」

「え?」

「お前は敵も味方も関係なく、人の命を守ろうとする。」

ネロはそう言うと、懐から一枚の古びた地図を取り出した。

「これは……?」

「王国が封印した、もう一つの遺跡の場所だ。」

ガレスの表情が変わる。

「そんなものがまだあるのか。」

「そこには、王国が消し去った歴史の証拠が眠っている。」

ネロは地図をさくらへ差し出した。


「次に会う時、私はもう引き返せない。」

「ネロ……。」

「その前に、お前自身の目で真実を見てくれ。」

さくらはゆっくりと地図を受け取る。


その時だった。

丘の奥から、不気味な地鳴りが響く。

ゴゴゴゴゴ……。

全員が振り返る。

森の中から現れたのは、これまで見たこともない巨大な魔物だった。

全身は黒い結晶に覆われ、胸には禍々しい紫色の魔核石が埋め込まれている。

ネロは目を見開いた。

「まさか……。」

「ネロ様?」

「あれは私が作った魔核獣ではない……!」


誰も予想していなかった、新たな脅威。

敵味方の区別なく、その巨大な魔物は咆哮を上げながら、白霧の丘へ襲いかかってきた。

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