襲撃
王都では束の間の平和が訪れていた。
さくらは毎日、ガレスとの剣術稽古に励んでいる。
炎の力に頼るだけではなく、剣士としての技術を磨くためだった。
「もう一度!」
木剣を構え、ガレスへ踏み込む。
鋭い斬撃。
だが、ガレスは軽く受け流す。
「力みすぎだ。」
「はい!」
さくらは何度も立ち上がり、剣を振り続けた。
その様子をリーファルが見守っている。
「少しずつですが、動きが良くなっていますね。」
ガレスは小さく笑う。
「ああ。才能だけなら、もう一人いるんだがな……。」
「カインですか。」
ガレスは静かに頷いた。
「剣の才能だけなら、私が見てきた中でも群を抜いている。」
さくらは木剣を握り直した。
「いつか、絶対に勝ってみせます。」
その頃、黒影のアジト。
ネロは大きな地図を見つめていた。
「始める。」
その一言で幹部たちが動き出す。
「カイン。」
「はい。」
「王都を包囲しろ。」
「承知しました。」
「ただし、住民にはできる限り手を出すな。」
カインは一瞬だけネロを見る。
「……分かりました。」
ネロは続ける。
「狙うのは騎士団だけだ。」
それは、ネロなりの譲れない一線だった。
翌朝。
王都の鐘が激しく鳴り響く。
ゴォーン!
ゴォーン!
「敵襲!」
「黒影だ!」
東門、西門、南門。
三方向から黒影の部隊が一斉に攻め込んできた。
騎士団も迎え撃つ。
王都は一瞬で戦場へと変わった。
「さくら!」
ガレスが叫ぶ。
「東門を頼む!」
「はい!」
さくらとリーファルは東門へ向かって走る。
そこには数十人の黒影の団員が待ち構えていた。
「始原の炎だ!」
団員たちが一斉に襲いかかる。
「紅蓮!」
炎剣が赤く燃え上がる。
一人。
二人。
次々と敵を倒していく。
だが、その時だった。
戦場全体が静まり返る。
コツ……
コツ……
ゆっくりと近づく足音。
黒影の団員たちが一斉に道を開ける。
その先から姿を現したのは、銀色の仮面をつけた青年だった。
「カイン……。」
さくらは剣を構える。
カインも静かに黒い長剣を抜いた。
「また会ったな。」
初めて聞く、穏やかな声だった。
「今日は逃がさない。」
さくらは一歩踏み出す。
しかし、カインは首を横に振る。
「私は戦いに来たわけではない。」
「え?」
「ネロ様がお前に会いたいと言っている。」
「そんな誘いに乗ると思う?」
「思わない。」
カインは静かに答えた。
「だから力ずくで連れて行く。」
その瞬間、カインの姿が消えた。
「速っ——!」
気付いた時には、さくらの目の前まで迫っている。
剣と剣が激しくぶつかり合い、火花が夜空へ散った。
神山さくらとカイン。
二人の二度目の戦いが、ついに幕を開けた。




