禁書庫攻防戦
王城の警鐘が鳴り響く。
「黒影が禁書庫へ侵入した!」
兵士の叫びに、ガレスはすぐさま剣を抜いた。
「さくら、リーファル! 私に続け!」
三人は王城の廊下を駆け抜ける。
一方その頃――。
禁書庫の中では、カインが静かに本棚を見渡していた。
無数の古文書が並ぶ中、一冊だけ黒い鎖で封じられた書物がある。
カインは迷うことなくその本へ近づいた。
「これか……。」
ネロから聞かされていた特徴と一致する。
王国が隠し続けてきた真実を記した禁書。
その時だった。
「そこまでだ!」
勢いよく扉が開き、ガレスたちが飛び込んできた。
カインは振り返る。
「……。」
「その本を渡せ!」
ガレスが剣を構える。
カインは答えず、静かに禁書を手に取った。
「止まれ!」
ガレスが斬りかかる。
鋭い一撃。
しかしカインは半歩だけ身を引き、その攻撃をかわす。
続けて剣の腹でガレスの剣を払い、距離を取った。
「くっ……!」
「さくらさん!」
リーファルが叫ぶ。
「本を!」
「分かった!」
さくらは炎を足にまとい、一気にカインとの距離を詰める。
「返して!」
炎剣・紅蓮を振り下ろす。
だがカインは禁書を片手に抱えたまま、その一撃を受け止めた。
ギィィン!!
激しい火花が散る。
「片手で……!?」
さくらは驚きを隠せない。
そのまま連続で斬り込む。
だが、カインは冷静だった。
最小限の動きで攻撃をいなし、一度も反撃しない。
(まただ……。)
さくらは違和感を覚える。
(この人、本気ならもっと攻撃できるはずなのに……。)
「どうして戦わないの!」
その問いに、カインは初めて静かに口を開いた。
「任務だからだ。」
「え?」
「私の目的は、お前たちを倒すことではない。」
その言葉と同時に、カインは窓へ向かって跳躍した。
「逃がさない!」
さくらも追いかけようとする。
しかし、その前に無数の黒い煙玉が投げ込まれた。
ボンッ!
部屋中が煙に包まれる。
「前が見えない!」
ガレスが叫ぶ。
煙が晴れた頃には、窓は開け放たれ、カインの姿は消えていた。
禁書も一緒に。
「逃げられたか……。」
ガレスは悔しそうに拳を握る。
さくらは窓の外を見つめ、小さくつぶやいた。
「やっぱり……。」
「どうした?」
「カインは、本気で私たちを殺そうとはしていない。」
リーファルも頷く。
「私もそう感じました。」
その頃、王都の外れ。
屋根の上へ降り立ったカインは、禁書を抱えたまま待っていたネロの前へ跪いた。
「ネロ様。任務は完了しました。」
ネロは禁書を受け取り、静かに微笑む。
「ご苦労だった、カイン。」
「……。」
「傷はないか?」
「問題ありません。」
ネロは禁書に手を添え、ゆっくりと表紙を開く。
そこに記されていた文字を見た瞬間、ネロの表情が変わる。
「やはり、そうだったか……。」
「何が書かれていたのですか?」
ネロは本を閉じ、遠く王城を見つめる。
「王国は、始原の炎を守っていたのではない。」
その瞳には怒りと悲しみが入り混じっていた。
「利用していたのだ。」
その言葉は、これから訪れる戦いが、復讐だけでは終わらないことを示していた。




