交わした約束
王城の禁書庫。
カインは誰もいない廊下を静かに歩いていた。
「ネロ様のために……。」
そう呟いた瞬間、幼い日の記憶が脳裏によみがえる。
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十数年前――。
まだ幼かったカインは、貧しい集落で暮らしていた。
そんな中ある日、魔物の群れが村を襲う。
逃げ惑う人々。
泣き叫ぶ子どもたち。
幼いカインも魔物に追い詰められ、震えることしかできなかった。
「誰か……助けて……!」
その時、一人の少年が炎とともに駆け込んできた。
「下がれ!」
少年は魔法で魔物を吹き飛ばし、カインをかばうように立つ。
それが、ネロ・ヴァイスだった。
「立てるか?」
ネロは手を差し伸べる。
カインは震える手で、その手を握った。
「ありがとう……。」
「礼はいらない。」
ネロは少し照れくさそうに笑った。
「困ってる人を助けるのは当たり前だから。」
それから二人は同じ村で育ち、兄弟のように過ごした。
剣の才能があったカイン。
魔法の才能に恵まれたネロ。
毎日のように修行を重ね、互いを高め合っていた。
しかし、その幸せは長く続かなかった。
王国による大規模な魔物討伐。
その混乱の中で、ネロの弟・ルークは命を落とした。
弟の亡骸を抱え、涙を流すネロを見たカインは何も言えなかった。
やがてネロは王国を去る決意をする。
「カイン。」
「……。」
「ここから先は復讐の道だ。」
「分かってる。」
「ついて来れば、お前も罪人になる。」
カインは迷わず答えた。
「それでも行く。」
ネロは驚いたように目を見開く。
「俺の命は、お前にもらった。」
カインは静かに笑う。
「あの日、お前が助けてくれなかったら、俺は生きていなかった。」
「だから今度は、俺がお前を支える。」
ネロは少しだけ目を伏せ、小さく笑った。
「……ありがとう。」
二人は固く拳を合わせる。
「最後まで一緒だ。」
「ああ。」
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カインは禁書庫の扉を見つめ、静かに剣を握り直した。
「ネロ様。」
その声に迷いはない。
たとえ世界中を敵に回しても、ネロだけは裏切らない。
それが、幼い日に交わした、カイン自身の誓いだった。




