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炎の奇跡(タイトル仮)  作者: 瑠夏
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黒影最強の剣士

ギィン!!

目にも留まらぬ速さで剣が振るわれる。


「っ!」

さくらは紅蓮で受け止めるが、衝撃で数歩後ろへ押し込まれた。

(速い……!)

一撃受けただけで分かった。

今まで戦ってきた敵とは、明らかに格が違う。

「さくらから離れろ!」

ガレスが横から斬りかかる。

しかしカインは振り返ることもなく剣を払った。


ガキィン!!

「ぐっ!」

ガレスはそのまま数メートル吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられる。

「団長!」

リーファルはすぐに三本の矢を放った。

狙いは正確だった。

だが――

カン! カン! カン!

カインは最小限の動きだけで、すべての矢を弾き落とす。

「馬鹿な……。」

リーファルの表情が曇る。

さくらは深く息を吸い、炎をさらに強く燃え上がらせた。

「紅蓮……!」

炎が剣を包み込み、その熱で周囲の空気が揺らぐ。

「いくよ!」

連続で斬りかかる。

一撃。

二撃。

三撃。

炎の斬撃が神殿の壁を焦がしていく。

それでも、カインはすべてを紙一重でかわし、時には剣一本で受け流した。

(どうして……当たらない!)


その瞬間だった。

「……甘い。」

カインが初めて口を開く。

低く、感情のない声。

気付いた時には、彼はさくらの懐へ入り込んでいた。

「しまっ――」

ドンッ!

剣ではなく、柄で腹部を打たれる。

「がはっ!」

さくらは吹き飛ばされ、床を何度も転がった。

「さくらさん!」

リーファルが駆け寄る。

幸い致命傷ではない。

だが、誰の目にも実力差は明らかだった。


その様子を少し離れた場所から見ていたネロは、小さく目を閉じる。

「ネロ様。」

部下が声を掛ける。

「加勢しなくてよろしいのですか。」

「必要ない。」

ネロは静かに答えた。

「カインに命じたのは討伐ではない。」

「では……。」

「試しているだけだ。」

ネロはさくらを見つめる。

「始原の炎を継ぐ者として、どこまで戦えるのか。」


神殿の揺れはさらに激しくなる。

天井から巨大な岩が落下した。

カインは視線すら向けず、一太刀で岩を真っ二つにする。

その剣技に、騎士たちは言葉を失った。

さくらはゆっくり立ち上がる。

口元の血を拭い、再び紅蓮を構えた。

(まだ終わってない……。)


その姿を見たカインは、ほんのわずかに目を細める。

そして、ゆっくりと剣を鞘へ収めた。

「時間だ。」

「……え?」

その瞬間、ネロが背を向ける。

「撤収する。」

黒影の団員たちは黒い煙に包まれ、次々と姿を消していく。


最後にカインだけが振り返り、さくらを真っ直ぐ見つめた。

「……次は、全力で来い。」

それだけを告げると、彼もまた闇の中へ消えていった。

静まり返った神殿。


さくらは紅蓮を握る手に力を込める。

ネロの言葉。

カインの言葉。

そして神殿で出会ったアリアの言葉。

すべてが一つの「真実」へと繋がっている気がしてならなかった。

「王国が隠してきたこと……。」

その答えを知る日は、もう遠くないのかもしれない。

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