黒影の剣
崩れゆく神殿の中。
天井から無数の岩が降り注ぎ、激しい地響きが響く。
それでも、一人の青年だけは微動だにしなかった。
黒い外套を羽織り、銀色の仮面で素顔を隠した剣士。
その手には、細身の黒い長剣が握られている。
その姿を見た瞬間、さくらの脳裏に、神殿へ向かう途中の出来事がよみがえった。
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封印の神殿へ向かう山道。
一行が小休止を取っていると、一人の騎士が慌ただしく駆け寄ってきた。
「団長!」
「どうした。」
「王都から緊急伝令です!」
騎士は一通の書状をガレスへ手渡す。
ガレスは目を通すと、険しい表情になった。
「……黒影の幹部が確認された。」
「幹部?」
さくらが首をかしげると、リーファルが静かに口を開いた。
「黒影には、ネロ直属の幹部が四人いると言われています。その中でも最も危険なのが一人。」
ガレスは書状をさくらへ差し出した。
そこには、一人の仮面の剣士の似顔絵と名前が記されていた。
《黒影第一席 カイン》
「ネロの右腕だ。」
ガレスは低い声で続ける。
「剣術だけで王国騎士団を何度も退けた男。現役騎士の中で、一対一なら私でも勝てる保証はない。」
その言葉に、さくらは息をのんだ。
リーファルも真剣な表情で話を続ける。
「三年前、国境警備隊が壊滅した事件がありました。」
「……。」
「生き残った兵士は皆、『銀色の仮面をつけた剣士が一人で部隊を壊滅させた』と証言しています。」
「そんなに強い人が……。」
ガレスは静かにうなずく。
「だが、不思議な男でもある。」
「不思議?」
「任務では容赦なく剣を振るう。しかし、必要以上に命は奪わないという証言も多い。」
「敵なのに……。」
「だからこそ、何を考えているのか誰にも分からない。」
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目の前には、銀色の仮面をつけた青年。
書状に描かれていた姿と寸分違わない。
(間違いない……。)
さくらは炎剣を握り締める。
「あなたが……カイン。」
青年は何も答えない。
ただ静かに剣を構え、その切っ先をさくらへ向けた。




