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女神の憂鬱  作者: 灯星
86/86

84.けじめ

 軽くですがR15です。たぶん


 ハヤトと会話して、私はある決意を固めていた。


 レイヤとゼノンに対しての気持ちをきちんとオリセントに伝えよう。


 今までの私の常識とは大きくかけ離れたことだけに本当にいいのかと悩んでしまうが、二人があれほど誠実になってくれているのだ。いつまでもこのまま宙ぶらりんな状態はいけないだろう。

 時々、彼のほうから二人を受け入れないのかと聞かれたこともあるし、別に構わないと言ってくれていた。

 それが私に対しての優しさからの言葉であることも分かっている。だからこそ、この決意を一番に彼に聞いてもらいたいのだ。

 聞いてもう私から離れると言うのなら、それは受け入れるしかないと思う。オリセントよりレイヤやゼノンを選ぶとか言う気持ちはない。もし、オリセントが二人と私がそう言う関係になることを許さないと言うのであれば、この気持ちを硬く封印する覚悟はある。そして彼だけを見ると誓える。そして二人にきっぱりと話をしよう。どれほど辛くてもだ。

 それに、レイヤとゼノンへの気持ちを告げて恋人を解消するとオリセントが言うのであれば、それを受け入れようと思う。

 私は覚悟をきめてオリセントの居室へと転移することにした。






 部屋を移動すると、オリセントはベッドに足を伸ばし上半身を起こしている状態だった。おそらく、寝ていたところに私の移動を感知して上体を起こしたのだろう。


「フウカ?」


 いきなり、何も言わずに現れた私にオリセントは珍しく驚いた顔をしてこちらを見ていた。

 いつもはきちんと心声で伝えてから現れるようにしていたからだ。


「いきなりでごめんなさい。伝えたいことがあったもので」

「ん?なんだ?あまりうれしい内容ではなさそうだが・・・。とりあえず、ここに座ると良い」


 そう言って彼の身体の横のベッドに腰掛けるよう手招きしてくれる。だが、これから話す内容が内容なのであえてベッド横の椅子に腰かけさせてもらうことにした。

 通常と違う行動を取る私を、オリセントは訝しげに眉をひそめながら覗いてくる。


「なんだ?なにか嫌われることをしてしまったか?」

「ち、ちがうの。少し話が長くなるけど聞いて」


 私はまず、キャシーが精霊になった話を聞かせた。レイヤとゼノンにキスされたことも。それが原因で精霊が誕生したことも。


「ごめんなさい。今まで、レイヤやゼノンへの気持ちを誤魔化していました。でも、キャシーが精霊になってそこに気持ちがまったくなかったって言えなくなったの」


 ここまで一気に話をして、私は彼の言葉を待つ。

 オリセントは腕を組みながら黙って私の話を聞いていた。

 しばらく何とも言えない沈黙が漂う。

 そしておもむろにオリセントが低い声で問う。


「で?フウカは俺への気持ちが無くなったっていいたいのか?」

「ち!ちがう!」


 私はオリセントの見当違いの問いに考える間もなく否定するが、オリセントは淡々と問い続けた。


「レイヤとゼノンへの気持ちのほうが強いのではないのか?俺とは所詮使命だったわけだし」

「違うの!私はオリセントのことが好き。使命とか関係なく惹かれている。だからオリセントがまだ私の恋人としていてくれる上に、二人への気持ちを許さないって言うなら私は貴方だけの恋人になるわ。もうきちんとけじめを付けようと思うの」


 私はずるい。


 もう自分では抑えきれない気持ちを、オリセントにも抑えてもらおうとしているのだ。

 同時にそうでもしないといけないほど、レイヤやゼノンへの気持ちが膨らんできてしまっているのだと自覚もしてしまう。


「それは俺が俺だけを見ろと言えば、そうなるって言うのか?」


 オリセントは真紅と青の瞳をこちらに向けてゆっくりとそう聞いてくる。その瞳はいつもとちがって優しさもなく冷静で、誤魔化しは許さないとばかりに凝視している。


「今、レイヤとゼノンに惹かれていないなんて嘘は言えない。正直、二人とも大好き。でも、オリセントがそう言ってくれるならその気持ちを硬く封印します」


 真剣なオリセントの視線に耐えられずに反らしたい気持ちになるが、そんなことではだめだと心を奮い立たしてじっかりと彼の視線を受けとめた。

 しばらく見つめ合っていると、ふと彼の視線にいつもの優しさが戻ってくる。

 そしてゆっくりと私の身体に手をのばしてきて、気が付いたら分厚く大きな彼の身体に包み込まれていた。


「ほんとうに生真面目だな、フウカ。俺は何度も彼らを受け入れたらいいと言ったはずだが?」

「で・・・でも、恋人が三人もいるなんて・・・」

「俺よりあいつらの方がいいって捨てるつもりはないんだろ?なら俺は別に構わないぞ。正直、フウカを独り占めにはできないって分かっていたしな」

「そんな。捨てられるのは私の方だよ」


 私がそう言うと頭の上の方からくすりっと小さな笑いが聞こえてくる。そして、小さくため息をつき私の頭をなでてきた。優しい手つきに涙がにじんでくる。


「正直なところ言っていいか?」


 そう言われて私は無言で一回だけ頷いた。オリセントは頭から肩、背中へと流れる長い髪を私の身体ごと撫でながら、ゆっくりと話を続ける。


「もし、お前が元々人間でなければ俺は独り占めさせろと言っていたかもしれない。もしくは癒しの女神でなければな。あ~俺が戦なんぞを司ってなくても言うかもしれんな。俺ではお前を支えることはできても、希望や安らぎを与えることはできない。永遠に近い時をすごさなければいけないんだ。フウカのように人間としての魂を持っていたら辛い時も多いはずだ。特に癒しは戦争にどうしても赴かなければいけないからな。戦神の俺だけを心の支えにしていたらいつかは人間としての魂を封印してほしいと思ってしまうだろう。いくらハヤトがいたとしてもな。かといって、俺が望んでいるのはあんな冷めた目をしたフウカではなく、元々人間だったお前なんだよ。だから、すこし嫉妬心が起きたとしても、だれかと共有することになっても俺は許すことができる。ああ、でもできればレイヤとゼノンだけにしてもらいたいぞ。この二人なら俺は認めることができるからな」


 彼がそう言い終えたとき、私は涙があふれて彼の顔がぼやけて見えていた。

 言葉の端々に私への優しさがにじみ出ている。何度もお礼を口にしながら彼の肩に顔を鎮めていた。

 すこし落ち着いてから改めて彼の顔を見上げてしっかりと視線をあわす。強面な顔なのに、眼が優しく穏やかな光を放っていた。


「ありがとう。オリセントがまだ恋人でいてくれると言ってくれて本当にうれしい」

「ああ、そうだ。俺を捨てないと言ってくれるならその証拠を貰おうか」


 オリセントはすこしふざけた口調で、私の唇に触れるだけのキスを何度もしてくる。

 彼への愛情が自分の中で高ぶって自分からも彼の唇をうばっていた。

 お互いに求め合いいつしか深い口付けになる。


「で?返事はまだなんだが?レイヤとゼノン以外と恋人にならないと誓えるか?」


 口付けの後でオリセントが私の身体をしっかり抱きよせながら耳元でそう聞いてくる。


「あ・・当り前よ。あの二人ですら本当に恋人となっていいのかまだ迷っているんだから・・・」

「敵に塩を送るのは不本意だが、本当に蛇の生殺し状態だからもう覚悟を決めろ。俺の為にもな」

「え?なんでオリセントの為になるの?」

「思ったより長くフウカを独り占めできてうれしかったが、お前の気持ちがレイヤとゼノンに向いていることぐらい分かっていたからな。だから蛇の生殺しってのはあの二人に対してだけでなく俺にとってもそうなんだよ」


 そう言われて、思わず顔を覆いたくなる。必死に隠していたのにハヤトやオリセントには自分の気持ちなどお見通しだったわけだ。


「わかったわ。私、二人にきちんと気持ちを伝えることにするね」

「ああ。だが、その前に。さきほど言ったが俺を捨てないっていう証拠がキスだけってのは物足りないんでな。きちんと俺のモノでもあると実感させてくれ」


 オリセントはそう言うと私の身体を抱きしめたまま、ゆっくりとベッドに倒れこんできた。  

 私は彼からの愛情をいつも以上に受け止めることになり、私もできる限りの気持ちを彼に与えるようにした。

 読者の一人が『女神の憂鬱』の『奇跡妃』の話については意見や感想に加えて、話を書いてくださりました。

 本当にうれしく見事な話だったので、ぜひこの話を皆さんにも見てもらいたい!

 そんな気持ちでその方にお願いすると、私の活動報告に載せてもいいと言ってくれたのでのせています。

 とてもいい話です。私の話をこんなにもすばらしく膨らませて頂けるなんて・・・と感激しちゃいました。

 どうぞ一緒にそれを味わってください。

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