第82話 巨大クレーター 01
「ものすごく大きなクレーター? いや、何かの攻撃を受けた痕か?」
「あそこ! 今何かが光ったわよ」
ティアの言う方向へ向かって巨大クレーターの中に入っていくフルーゲ。
近くで見るとかなり大きい。ダンジョンでS級層まで降りていく以上に深い。しかも断面が妙に真新しく見えるのが気になるノア。
「あそこよ! また光ったわ!」
クレーターの中心部、つまり最下層部分まで降りてきた。そこでフルーゲを着陸させることに。そしてクレーターの中に降り立ったノアたちはガイアの大地との違いに驚く。
「なんて硬いんだ……これって中級魔土ではないな」
ノアが表面を触って確認する。探掘刀レアラグローバで掘ってみると一応掘削できたが……
(ものすごい力が必要だ。ダンジョンの中でも感じたけど、どうしてこの辺りのガイアは異常に硬いんだ? それともグランサンクチュアに近づくにつれてどんどん固くなっていくのか……)
「おーい! ノア! ティアが光ってた箇所を見つけたよ!」
ノアがティアのもとへ急ぐ。
「お兄ちゃん、これ。地面に埋め込まれているのかな。カチカチに固まっていて取れないわ」
ノアが状況を確認する。位置としてはまさにクレーターの中心部で魔土が結晶化したのか、キラキラと輝きを放っている。大地に埋まっていて素手では取れない。
「なんだこれ………………よし! マリアに連絡だ!」
「はあ? ここで? 大丈夫? 魔物に奇襲されたらどうするの?」
「ヘンリーとティアがいるし、いざとなったら二人のゴーレムもあるしね!」
そういって三十分後に王宮と繋がって、まさかのガイアのクレーター内部でライブ中継が始まる。
「皆さん、ちょっとここの状況をお伝えしたくて連絡しました。新しい発見に繋がるかもしれません」
国王と王妃、そしてロイたちもいる。
「ノアよ。そこはガイアなのか?」
「国王陛下、ここはガイアの大地にできた謎の巨大なクレーターです。私たちは今、そのクレーターの中心部に下りてきて、リモートスクリーンを繋いでいます」
巨大なクレーターの謎もさることながら、中心部に埋まっているひかる魔土の結晶に関して意見を聞きたいノア。
映像を観ていち早く反応したのはやはりロイだった。
「おいおい……これってもしかして……周囲の魔素を吸収している魔土ってことなんじゃないのか?」
「僕もそう思うんだよ、父さん。まさにその過程なんじゃないかなって。今この魔土は多分高級魔土になろうとしているってことだよね? これだけの中級魔土から魔素を吸い取ってやっと一つ上のランクの魔土になるのかな?」
「超級魔土か高級魔土かはわからないが多分そうだな。これはものすごい発見だぞ。あのダンジョンで見かけたのとは規模が違う。もしかしたらレアラになるかもな……」
隣でボイドが興味津々で話を聞いている。
「ノアよ。その結晶は硬いのか?」
「はい。レアラで作った探掘刀でやっと掘れる程度ですから相当硬いと思います」
「クレーターの直径は大体どれくらいじゃ?」
「目測ですが、直径50mはありそうです。フルーゲで上から観てみますか?」
急遽フルーゲに乗るノア。ミラ王女がサポートでリモートスクリーンユニットを持つ。
「国王、このガイアの風景が観えますか?」
「おお、ミラよ。言葉では表現できないものがあるな。お前たちはこんなところで旅をしているのだな……」
壮大なガイアの風景を前に国王と王妃が思わず言葉を失って見入ってしまう。
「ミラ王女、あのクレーターを映し出してもらえますか?」
「わかったわ。こうかしら」
ミラ王女がユニットの向きを変えてクレーターを映し出す。ロイとボイドが感嘆の声を上げてスクリーンを注視する。
「こんな状態はわしも今まで見た事がないぞ。ロイは何か知っておるか?」
「いや、初めてですね……これを人為的ではなく一つの魔土が起こしたと? それにしてはあまりにも巨大過ぎますね」
「ふむ。これは強引に我々の仮説に結びつけるのは間違っているのかもしれん」
ロイたちの話が聞き取れず、ノアが割って入る。
「一旦またクレーターの中に戻りますね!」
そして再び輝く結晶の前に戻ってきたノア。
「国王陛下、もしよろしければ、このままリモートスクリーンを繋げたままでもよろしいですか? もう少しこのガイアの謎に踏み込んでおきたくて。父とボイドさんの意見を聞きたく……」
「国王陛下、私からもお願いします。これは王国の技術発展に役立つ知識が得られるかもしれません」
「勿論構わぬぞ。ミラとリリアナの顔も見れて余も嬉しいからな」
こうして輝く結晶をじっくりと見せながらロイたちに意見を求めるノア。その後ろで食事の用意をするリリアナ王女とミラ王女とティアに護衛として周囲を警戒しているヘンリー。この奇妙な状況が2時間ほど続いた。
「そういえば! 父さん、クレーターのことと直接関係はないと思うんだけど、一つ確認したい事があって。ガイアのダンジョンの魔土の硬さが王国周辺と比べてかなり硬いんだ。それって父さんの時も同じだった?」
「魔土の硬さか……意識した事がなかったが確かに硬かったな。俺はうまく掘れなくてジェイドに頼んで掘ってもらっていたくらいだしな」
「これは僕の仮説なんだけど、グランサンクチュアに近づくにつれて魔土の密度が上がって硬化しているのかなって」
「……ありえるな。魔物のレベルもどんどん上がっていくことの理由にもなる」
「ノア、それなら一定距離を進むごとに計測してみたらどうじゃ? 何か具体的にわかるかもしれんぞ」
ボイドの一言に頷くノア。そしてボイドが話を続ける。
「このクレーターの表面は明らかにガイアの表面の魔土とは違うように思える。つまりダンジョンのような魔物を生み出しやすい魔土の状態かもしれん」
「確かにそう観えますね。ノア。魔物はそこから一切出現していないんだよな?」
「はい。ここに3時間以上滞在していますが、今だに魔物は現れていません」
「気をつけるのじゃぞ。ガイアの大地では何が起こるかわからんからな」
ボイドの忠告にしっかりと返事するノア。まだ旅を始めて二ヶ月、ガイアのことは何一つわかっていない。
「ノア、昼食の準備が整いました」
リリアナ王女の呼びかけで昼食の時間となり、王宮でも急遽謁見の間で一緒に昼食を摂ることに。
食事のメニューも場所も全く異なるが、久々に家族で食事をしている気分を楽しむ希望の剣パーティーだった。




