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グランサンクチュア〜地底天空都市の伝説〜  作者: 大森六
第三章 ガイアの大地

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第81話 ガイアの落雷 02

「雷をリリーに落とすですって?」


 聞き間違いかとティアが確かめるが頷いているノア。


「ノア……落雷の前に私の拳であなたを……」


「いやいや! 違うって! 雷を避けることに集中するのではなくて、付近に落ちそうな落雷を全てリリーの真上に集中させてそこから左右へ逃す作戦!」


 迫り来るエミラのゲンコツを前に焦って説明を加える。



「マナクラウドの雷だから、マナの濃度が高い方へと流れるはずだ。リリーが上部に強大なマナエネルギーを生み出し、そのまま維持してもらう。そこへ落ちて来る雷を僕が左右へ逃す。この作戦は僕もリリーもマナエネルギーに集中するから真っ直ぐにしか走れない。だからティアとヘンリーには前方の障害になり得るものは全て排除してもらう必要がある。エミラは前衛2人のサポートとリリーのフォローだ」



「「「なるほど〜」」」


 全員が納得した。


「あの……どれくらいの大きさのエネルギーを作るべきですか?」


「リリーは直径2メートルくらいを意識してほしい。それを上方5メートルくらいの位置に維持するイメージかな。雷が来たらそこからは僕がマナを流して雷を逃すからリリーは雷を無視してエネルギーの塊を消さずに維持してほしい」



 リリーが頷く。エミラはリリーにとって危険なこの作戦に渋ってはいるが他に方法がないこともわかっている。


「ティア、ヘンリー。適度な休憩場所が見つかったら指示してくれ。連携が大事なこの作戦はこまめに休憩した方がいいから」


「オッケー!」


「うん。わかった!」


「よし、じゃあ、目印は天空の塔だ。アレに向かって真っ直ぐ進むぞ!」


 5人が一斉にダッシュする。そして素早く陣形を整えて、各自作戦通り動き出す。目の前の岩を剣で切り刻んだり、風で吹っ飛ばしたり。突然現れる魔物を素早く倒す。ティアとヘンリーのコンビは息がピッタリだ。


 そしてリリーはノアの注文通りにマナエネルギーを作り出す。


 ピシャピシャーン!


 落雷がリリーの頭上に降り注ぐ! 怯えるリリーだがなんとかマナエネルギーを消さずに耐えている。



「いいぞリリー! 任せろ!」


 ノアのマナコントロールで落雷を瞬時に左右へ振り分けて放出していく。思った以上の数の落雷がリリーの頭上に降り注ぐがエミラのフォローもあり、なんとか耐え抜くリリー。


《頑張って! リリー! 私も耐えるから!》


 前衛のティアもリリーを鼓舞する。実はこの時ティアもかなりギリギリだった。後ろから適度なタイミングで回復してくれるエミラのサポートのおかげでなんとか耐えているが、障害物が多すぎる。


 再び1時間が経過し、やっと休憩場所が見つかって逃げ込む5人。



「ブハ〜! 皆お疲れ! すごいね。上手くいってたね!」


「いやこれしんどいわ! お兄ちゃんの作戦まじで無理だわ〜!」


 ティアがやり場のない怒りを兄にぶつける。特にノアが悪いわけではないとわかっている。ある意味、これが妹としての甘えなのかもしれない。それを笑って流すノア。


 一方でリリーはエミラに抱きついて落雷の恐怖をぬぐい去ろうとしている。これこそ一般的な妹としての甘えのカタチだ。


 それを客観的に見ているヘンリーが笑っている。比較的に皆まだ余裕があるみたいだ。

 


「どう? リリーまだやれそう? 最初の避けまくる作戦とどっちがいい?」


 珍しくノアが優しくリリーに確認している。びっくりするエミラ。何かウラがあるとすら思えてしまう。



「……このままで行きましょう。大分慣れて来ました」



 ティアもヘンリーも頷いている。手応えがあったみたいだ。



「……そうね。状況からして、これが最善の作戦だわ」


 エミラも同意した。



 この後、ノアたちは無事に雷雲巣を抜け出した。なんと所要時間は8時間だった。



「皆……本当にお疲れ様……今日はもう、ここでマリーボイド組み立てて休もうと思うんだけど、どうかな?」



「……賛成に決まってるでしょ」



 こうして一つガイアの大地の雷地獄から脱出した希望の剣だった。




 * * *




 次の朝、欠かさずに行っている朝の訓練を終えてノアがマリーボイドに戻るとティアが起きてリビングでくつろいでいた。


「あれ? ティアどうしたの? こんな朝早くに」


「お兄ちゃん、こんな旅をしてるときもずっと欠かさずに訓練していたの?」


「うん。日課だからね。それにコイツもやれってうるさいから」


 ノアが、胸ポケットに入れている黄金の卵を指差す。


「それ……全然孵化する気配がないわね。早くマリリンみたいに飛べる幻獣が生まれてくれないかなぁ……そしたら旅も少し楽になるかもね」


「あはは。確かにね。しかしこんなに小さくなってしまったからなぁ。何が生まれてくるのか全くわからないな」



 久々に二人で楽しく会話している。王宮の家にいてもノアは図書の間にいたり工房にいたりとほとんど帰ってこないし、ティアも自身のレベルアップに忙しくゆっくりと会話を楽しむ時間などここ2年で全くなかった。



「昨日の落雷のこともそうだけど、お兄ちゃんがやっていること、やっぱり今のティアには真似できないわ……悔しいけどね」



「いやいや、来年真似してよ。今できちゃったら僕が困るよ」


「確かにね! そう考えるとちょっと気が楽になるわ!」



 笑いながら話す二人にエミラたちも加わる。


「おはよう! みんな! 今日はとてもいい天気だよ! フルーゲで移動できる!」


「いや〜それ本当に助かるわ。睡眠とってかなり回復できたけど、暫くは走るの避けたいから」


「私も! アハハ」


 皆、昨日の出来事を笑って話せている。長旅はこれが大切だとノアは思っている。このパーティーはとてもいい雰囲気だと実感する。そんな希望の剣のガイアでの日常が始まり、色々な発見をしながら一歩一歩前へ進んでいく。


 ヒューマニア王国を出て、2ヶ月が過ぎ去ろうとしていた頃、ノアたちはフルーゲに乗った上空からとんでもないものを目の当たりにする。



「な、なんだこの巨大すぎるクレーターは!」


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